動画サイト,掲示板やスマートフォンのアプリを運営しています。
ユーザーが著作権違反の投稿などをした場合に,「運営者として」責任を負うことがありますか。

1 サイト,アプリ運営者×著作権侵害;削除要求無視
2 サイト,アプリ運営者×著作権侵害;誘引
3 サイト,アプリ運営×法的リスク回避
4 アプリの作成,運営者も著作権のケアをしないと責任を負うことがある
5 クラウドサービス利用者の著作権侵害の責任
6 クラウドサービス事業者の責任
7 『マジコン』=プロテクト解除プログラム提供を対象とする刑罰がある
8 間接的な著作権侵害による刑事責任をまとめてみた

※関連コンテンツ
クラウドサービス等利用者による著作権侵害→運用業者の刑事責任

1 サイト,アプリ運営者×著作権侵害;削除要求無視

ユーザーが投稿した動画が,著作権侵害を含むものであった場合,著作権侵害の主体は,原則的に投稿者です。
配信サイトの運営者は,あくまでも場を提供しているだけです。
しかし,状況によっては,運営者の責任が認められることもあります。
運営者も関与の程度が大きい→著作権侵害主体に含まれる→責任を負う,という考え方です(後掲判例1;2ちゃんねる小学館事件)。

判例は動画サイトの運営者の負う義務を示しました。
逆に,それらの義務を怠った場合,放置自体が著作権の侵害行為となり,損害賠償責任を負う,という理論構成です。

<動画サイト運営者の義務>

・閲覧者の制限がないサイト(運営者)
・事前の対策を講じる
 著作権侵害の書き込み(投稿)がないように適切な注意事項を適宜な方法で案内するなど
・事後的是正措置
 著作権侵害行為に対しては,適切な是正措置を速やかに取る態勢で望むべき(義務がある・・・)
↓具体化
・少なくとも著作権者等から著作権侵害の事実の指摘を受けた場合
 ↓
 ・可能ならば発言者に対して照会する
 ・著作権侵害が極めて明白ならば,直ちに削除する(など)

2 サイト,アプリ運営者×著作権侵害;誘引

削除要求を受けていないのに『サイト運営者が』法的責任を負うこともあります。

(1)楽曲の動画の違法アップロードを誘引放置違法

<事例>

楽曲の作詞・作曲者の承諾なく,それを演奏した動画が投稿されています。
このサイト運営者は削除要求をそれほど受けていませんでした。
ただ,違法動画が多いことを知っていました。
その上で,収益が上がっているので,敢えて放置していました。

自由に動画を投稿できるサイト運営者は,著作権侵害の動画が投稿された場合,原則的に責任を負いません。
あくまでも投稿者が著作権侵害を行ったことになります。

しかし,例外的に,関与の程度によっては,サイト運営者自体が著作権を侵害したと認められることもあります(後掲裁判例2)。
著作権の侵害を『誘引』した,という考え方が元になっています。

この裁判例における関与の程度の判断は次のとおりです。

<サイト運営者の責任を認めた要素>

・著作権侵害ファイルが多く蔵置されていた
・そのことを管理者が知っていた
・ごく一部の削除を行った他は蔵置を継続していた
・放置した理由は運営の経済的利益の獲得であった
→著作権侵害を誘引したと言える

この裁判例では,このような事情を理由に,関与の程度が大きい→著作権侵害を行った→賠償責任を認める,ということになりました。
削除要求が多かったわけではないですが,誘引したのと同じだ,という見方がされたのです。

(2) Winny事件;幇助犯

※最判平成23年12月19日;判例4
この判例では,ソフトウェアの提供者が著作権侵害の幇助に該当するか否かが判断されました。
もともと,幇助犯手助けだけを犯罪とするもので,適用が拡がりすぎる根本的危険性がある規定です。
別項目;犯罪行為の手伝いをした者も犯罪となることがある;幇助犯
Winny事件判例では,次のような認識という主観的な事情と幇助犯の成否が争われました。
争点,裁判所の判断をまとめます。

<Winny事件判例の内容整理>

あ 争点

ソフトウェア提供者,作成者が,ユーザーによる著作権侵害行為をどの程度想定,認識していると幇助犯が成立するか

い 裁判所の判断

『一般的可能性を超える具体的な侵害利用状況が必要であり,また,そのことを提供者においても認識,認容していることを要する』

3 サイト,アプリ運営×法的リスク回避

動画サイト運営者が法的責任を負わないようにするために,工夫をしておくと良いでしょう。
一定の人的・システム的リソースを投入し,事前・事後の違法回避プロセスを構築せざるを得ないでしょう。

大きく分けると,事前と事後のケア,ということになります。

<動画サイト運営者の法的リスク回避措置の例>

あ 投稿される動画を目視で監視する

・アップロード自体をできなくする,アップロード直後に削除する
・利用規約で,違法動画のアップロードを禁止する条項を盛り込む
・アップロード時に,このルールをポップアップで表示(警告)する
・サイトの配信をストリーム方式にする

い 著作権管理団体と包括的な利用許諾契約を締結しておく

・日本発の音楽関係モノは,JASRACと一括的利用許諾契約を締結する(定型化されている)
・他の団体も似ている制度があることが多い

一般的に事業活動においては適法性を重視する,というスタンスは重要です。
近年は違法・不当行為に対する社会的な見方も厳しくなっています。
違法状態を特色とする,という時点で社会に受け入れられなくなる危険性を孕んでいます。
むしろ,積極的に適法・遵法のポリシーを掲げ,実践することが社会・顧客に歓迎されることにつながっています。
仮にそうでないとすれば,社会の仕組み自体がおかしい,是正を要する状態,ということになりましょう。
違法状態を回避するような仕組み作りは必須です。

4 アプリの作成,運営者も著作権のケアをしないと責任を負うことがある

平成26年2月26日に,メッセンジャーアプリLINEから画期的な発表がありました。
同年4月17日に,登録受付開始に至りました。
楽しみな企画であり,期待も大きいです。

<サービス内容>

メッセージ中にイラストを表示するスタンプについて,一般クリエーターが提供(販売)できるようなシステムをスタートする
クリエーターは販売代金(売上)のうち50%を受け取る
LINE Creators Market
【LINE】ユーザーが制作したスタンプを販売できるプラットフォームLINE Creators Market、全世界で登録受付を開始

この発表は大きな話題となっています。
参加するクリエーターが非常に多く,また,購入するユーザーも非常に多くなるでしょう。
そうすると,必然的に,法的ケア(管理)も生じます。
これについて説明します。
メッセンジャーアプリ上の著作物販売という事例でメジャーな判例等はこれまでありません。
しかし,動画等の投稿サイト運営(ストレージ・サービス)と同じ法的枠組が当てはまります。
既存の判例等を含めた,類似テーマの説明コンテンツを紹介しておきます。
詳しくはこちら|ネット上の名誉棄損など|運営者・管理人の責任|損害賠償・削除義務

法的ケア,管理をしっかりと行って,サービスを広く展開して欲しいと思います。

5 クラウドサービス利用者の著作権侵害の責任

クラウドサービスも具体的な内容は多岐にわたります。
基本的,一般的なクラウドサービスの機能は,利用者がデータを保管する,という単純なものです。
投稿サイト,アプリ運営とは違って,データを利用する者が特定されているクローズである,ということです。
一方で,会社など,複数多数の者が実際に利用している形態においては,投稿サイトアプリ運営と似てきます。
要するに,クラウドサービスの運営についても,著作権侵害が生じる可能性自体はあります。
まずは利用者の責任について説明し,その後でクラウド事業者の責任について説明します。

(1)『私的利用』(著作権法30条1項)について

仮に利用者にとって『私的利用』の範囲内であれば,原則的に著作権侵害から除外されています。

ただし,『自動複製機器』が使用されている場合は,例外的に除外されません(著作権法30条1項1号)。
現時点では,クラウドサービスの外部サーバが『自動複製機器』に該当するか否かの説について統一的なものがありません。
『私的利用』による適用除外とはならないリスクもある,ということです。

(2)データの保管が『公衆』に向けられたものかどうか

サーバへの保管(アップロード)した情報が,他者の著作物であった場合,『公衆送信』に該当するかどうかの問題です(著作権法23条)。
そのデータを閲覧(ダウンロード)できる者がアップロードした者だけ,であれば『公衆』とは言えません。
ここで,会社で特定多数の従業員が閲覧する場合については注意が必要です。
特定多数も『公衆』に含まれると解釈されているのです。
会社の従業員のみが閲覧できる,という状態でも『公衆送信』に該当する可能性があります。

6 クラウドサービス事業者の責任

クラウドサービス利用者の行為が著作権侵害に該当する場合に,サービスを提供している事業者も責任を負うかどうかという問題です。
クラウドサービスそのものについての判例は見当たりません。
しかし,類似の論点について判断された判例がいくつかあります(判例2,判例3,判例4)。

個別的な事情を慎重に審査・判断されたものが蓄積されています。
これらの理論を元に検討すると,一般的なクラウドサービスにおいては,事業者が著作権侵害の責任を負うことは通常はないと思われます。
すなわち『事業者はサーバ内のデータ内容を利用,把握していない』という前提です。
逆に,この前提ではない場合は,関与の程度によっては著作権侵害の責任を負う可能性も出てくるでしょう。
関連する判例を元にまとめます。

(1)ロクラク2事件

※最判平成23年1月20日;判例3

<ロクラク2事件判例の内容整理>

あ 判決趣旨(抜粋)

事業者の『管理,支配下において(放送を受信して)複製機器に対して放送番組等に係る情報を入力するという,複製機器を用いた放送番組等の複製の実現における枢要な行為』をしていた
↓この要件を満たしたので
複製権の主体,と認めた

い 事情の整理

・放送の情報の入力=事業者
・録画(複製)の指示=利用者
・複製の実行=事業者

う 判断のポイント

情報入力,複製実行,という複製に関わるプロセスのメイン部分が事業者のサービスの内容となっていた
→一般的なクラウドサービス事業者のサービスには該当しないと思われます。

(2) Winny事件

※最判平成23年12月19日;判例4
前記のとおり,幇助犯という対象が広い類型が争点となりました。
成立するために必要な一定の認識が基準として示されました。
この部分からクラウドサービスでの該当性をまとめます。

<Winny事件判例の結論とクラウドサービスへの適用>

あ 争点

ソフトウェア提供者,作成者が,ユーザーによる著作権侵害行為をどの程度想定,認識していると幇助犯が成立するか

い 裁判所の判断

『一般的可能性を超える具体的な侵害利用状況が必要であり,また,そのことを提供者においても認識,認容していることを要する』

う クラウドサービスへの適用

一般的なクラウドサービス事業者のサービスには該当しないと思われる

7 『マジコン』=プロテクト解除プログラム提供を対象とする刑罰がある

(1)『間接的な権利侵害をした者が刑事責任を負う』類型

『他の者(ユーザー)が行う侵害行為』に間接的に関与した者の責任,として,『マジコン』も挙げられます。

<『マジコン』とは>

コンシューマーゲームのプロテクトを解除し,不正なコピーを可能にするプログラム,装置

(2)『マジコン』に適用される刑罰規定

このような装置,プログラムの販売について,特定の規制があります。
民事的な差止,損害賠償請求が認められる上に,刑事罰も規定されています。

<不正コピー防止プロテクト解除プログラム販売に関する規定>

あ 構成要件

映像,音声,プログラムのプロテクト(技術的制限手段)の効果を妨げる機能を有する装置,プログラムの譲渡,提供
※不正競争防止法2条1項10号

い 該当する典型例

ソフトウェアのプロテクトを解除するプログラム,装置

う 罰則(法定刑)

※いずれか
懲役10年以下
罰金1000万円以下
ただし,他の刑法上の犯罪が成立することもある
※不正競争防止法21条2項4号,21条7項

(3)裁判所,経産省も該当性を認めている

文言上,『マジコン』のようなプログラム,装置の販売は該当することは明らかです。
実際に,裁判所でも該当すると判断されています(平成21年2月東京地裁)。
経産省;ニュースリリース;不正競争防止法に違反する物品の輸入差止申立てが受理されました

8 間接的な著作権侵害による刑事責任をまとめてみた

間接的な著作権侵害の『関与,認識の程度』と刑罰の適用の関係>

態様,具体的事例 運営者,作成者等の認識内容 一般的違法行為の想定レベル 該当する罰則規定(※1)
マジコン 購入者がプロテクト解除→不正コピーを行う ほぼ100% 不正競争防止法
Winny ユーザー同士が楽曲を不正にコピー(し合う) 幇助犯
オープンの掲示板,アプリ運営 ユーザーが著作権侵害となる投稿を行う 正犯(誘引
クローズドなデータ保管(クラウド方式,ロクラク2) (同上) 特に低い 非該当

※1 罰則規定に該当するのは,個別的な『違法行為想定レベル』が高い,という場合に限定されます。

条文

[不正競争防止法]
(定義)
第二条  この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
一〜九(略)
十  営業上用いられている技術的制限手段(他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録をさせないために用いているものを除く。)により制限されている影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録(以下この号において「影像の視聴等」という。)を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有する装置(当該装置を組み込んだ機器及び当該装置の部品一式であって容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは当該機能を有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該機能を有するプログラムを電気通信回線を通じて提供する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあっては、影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする用途に供するために行うものに限る。)
十一〜十五(略)
2〜9(略)
10  この法律にいう「物」には、プログラムを含むものとする。

(罰則)
第二十一条  次の各号のいずれかに該当する者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一〜七(略)
2  次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一〜三(略)
四  不正の利益を得る目的で、又は営業上技術的制限手段を用いている者に損害を加える目的で、第二条第一項第十号又は第十一号に掲げる不正競争を行った者
五〜七(略)
3〜6(略)
7  第一項及び第二項の規定は、刑法 その他の罰則の適用を妨げない。

判例・参考情報

(判例1)
[東京高等裁判所平成16年(ネ)第2067号著作権侵害差止等請求控訴事件平成17年3月3日]
(2ちゃんねる小学館事件)
自己が提供し発言削除についての最終権限を有する掲示板の運営者は,これに書き込まれた発言が著作権侵害(公衆送信権の侵害)に当たるときには,そのような発言の提供の場を設けた者として,その侵害行為を放置している場合には,その侵害態様,著作権者からの申し入れの態様,さらには発言者の対応いかんによっては,その放置自体が著作権侵害行為と評価すべき場合もあるというべきである。
(略)
インターネット上においてだれもが匿名で書き込みが可能な掲示板を開設し運営する者は,著作権侵害となるような書き込みをしないよう,適切な注意事項を適宜な方法で案内するなどの事前の対策を講じるだけでなく,著作権侵害となる書き込みがあった際には,これに対し適切な是正措置を速やかに取る態勢で臨むべき義務がある。掲示板運営者は,少なくとも,著作権者等から著作権侵害の事実の指摘を受けた場合には,可能ならば発言者に対してその点に関する照会をし,更には,著作権侵害であることが極めて明白なときには当該発言を直ちに削除するなど,速やかにこれに対処すべきものである。

(判例2)
[知的財産高等裁判所平成21年(ネ)第10078号著作権侵害差止等請求控訴事件平成22年9月8日]
 しかしながら,先に指摘したとおり,本件サービスは,本来的に著作権を侵害する蓋然性の極めて高いサービスであって,控訴人会社は,このような本件サービスのシステムを開発して維持管理し,運営することにより,同サービスを管理支配している主体であるところ,ユーザの投稿に対し,控訴人会社から対価が支払われるわけではなく,控訴人会社は,無償で動画ファイルを入手する一方で,これを本件サーバに蔵置し,送信可能化することで同サーバにアクセスするユーザに閲覧の機会を提供する本件サービスを運営することにより,広告収入等の利益を得ているものである。
(略)
 そうすると,控訴人会社は,ユーザによる複製行為により,本件サーバに蔵置する動画の中に,本件管理著作物の著作権を侵害するファイルが存在する場合には,これを速やかに削除するなどの措置を講じるべきであるにもかかわらず,先に指摘したとおり,本件サーバには,本件管理著作物の複製権を侵害する動画が極めて多数投稿されることを認識しながら,一部映画など,著作権者からの度重なる削除要請に応じた場合などを除き,削除することなく蔵置し,送信可能化することにより,ユーザによる閲覧の機会を提供し続けていたのである。
 しかも,そのような動画ファイルを蔵置し,これを送信可能化して閲覧の機会を提供するのは,控訴人会社が本件サービスを運営して経済的利益を得るためのものであったこともまた明らかである。
 したがって,控訴人会社が,本件サービスを提供し,それにより経済的利益を得るために,その支配管理する本件サイトにおいて,ユーザの複製行為を誘引し,実際に本件サーバに本件管理著作物の複製権を侵害する動画が多数投稿されることを認識しながら,侵害防止措置を講じることなくこれを容認し,蔵置する行為は,ユーザによる複製行為を利用して,自ら複製行為を行ったと評価することができるものである。
 よって,控訴人会社は,本件サーバに著作権侵害の動画ファイルを蔵置することによって,当該著作物の複製権を侵害する主体であると認められる。

(判例3)
[平成23年 1月20日 最高裁第一小法廷 平21(受)788号 著作権侵害差止等請求事件;ロクラク2事件]
放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて,サービスを提供する者(以下「サービス提供者」という。)が,その管理,支配下において,テレビアンテナで受信した放送を複製の機能を有する機器(以下「複製機器」という。)に入力していて,当該複製機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合には,その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても,サービス提供者はその複製の主体であると解するのが相当である。すなわち,複製の主体の判断に当たっては,複製の対象,方法,複製への関与の内容,程度等の諸要素を考慮して,誰が当該著作物の複製をしているといえるかを判断するのが相当であるところ,上記の場合,サービス提供者は,単に複製を容易にするための環境等を整備しているにとどまらず,その管理,支配下において,放送を受信して複製機器に対して放送番組等に係る情報を入力するという,複製機器を用いた放送番組等の複製の実現における枢要な行為をしており,複製時におけるサービス提供者の上記各行為がなければ,当該サービスの利用者が録画の指示をしても,放送番組等の複製をすることはおよそ不可能なのであり,サービス提供者を複製の主体というに十分であるからである。

(判例4)
[平成23年12月19日 最高裁第三小法廷 平21(あ)1900号 著作権法違反幇助被告事件;winny事件]
(1) 刑法62条1項の従犯とは,他人の犯罪に加功する意思をもって,有形,無形の方法によりこれを幇助し,他人の犯罪を容易ならしむるものである(最高裁昭和24年(れ)第1506号同年10月1日第二小法廷判決・刑集3巻10号1629頁参照)。すなわち,幇助犯は,他人の犯罪を容易ならしめる行為を,それと認識,認容しつつ行い,実際に正犯行為が行われることによって成立する。原判決は,インターネット上における不特定多数者に対する価値中立ソフトの提供という本件行為の特殊性に着目し,「ソフトを違法行為の用途のみに又はこれを主要な用途として使用させるようにインターネット上で勧めてソフトを提供する場合」に限って幇助犯が成立すると解するが,当該ソフトの性質(違法行為に使用される可能性の高さ)や客観的利用状況のいかんを問わず,提供者において外部的に違法使用を勧めて提供するという場合のみに限定することに十分な根拠があるとは認め難く,刑法62条の解釈を誤ったものであるといわざるを得ない。
(2) もっとも,Winnyは,1,2審判決が価値中立ソフトと称するように,適法な用途にも,著作権侵害という違法な用途にも利用できるソフトであり,これを著作権侵害に利用するか,その他の用途に利用するかは,あくまで個々の利用者の判断に委ねられている。また,被告人がしたように,開発途上のソフトをインターネット上で不特定多数の者に対して無償で公開,提供し,利用者の意見を聴取しながら当該ソフトの開発を進めるという方法は,ソフトの開発方法として特異なものではなく,合理的なものと受け止められている。新たに開発されるソフトには社会的に幅広い評価があり得る一方で,その開発には迅速性が要求されることも考慮すれば,かかるソフトの開発行為に対する過度の萎縮効果を生じさせないためにも,単に他人の著作権侵害に利用される一般的可能性があり,それを提供者において認識,認容しつつ当該ソフトの公開,提供をし,それを用いて著作権侵害が行われたというだけで,直ちに著作権侵害の幇助行為に当たると解すべきではない。かかるソフトの提供行為について,幇助犯が成立するためには,”一般的可能性を超える具体的な侵害利用状況が必要であり,また,そのことを提供者においても認識,認容していることを要する”というべきである。すなわち,ソフトの提供者において,当該ソフトを利用して現に行われようとしている具体的な著作権侵害を認識,認容しながら,その公開,提供を行い,実際に当該著作権侵害が行われた場合や,当該ソフトの性質,その客観的利用状況,提供方法などに照らし,同ソフトを入手する者のうち例外的とはいえない範囲の者が同ソフトを著作権侵害に利用する蓋然性が高いと認められる場合で,提供者もそのことを認識,認容しながら同ソフトの公開,提供を行い,実際にそれを用いて著作権侵害(正犯行為)が行われたときに限り,当該ソフトの公開,提供行為がそれらの著作権侵害の幇助行為に当たると解するのが相当である。