1 名誉棄損・侮辱的『表現』が損害賠償などの責任生じることがある
2 掲示板運営者×プロバイダ責任制限法|免責される事情
3 掲示板管理者・運営者|免責されない→実質的な削除義務が生じる
4 掲示板運営者には『監視義務』があるわけではない
5 運営者が安易に投稿を削除した場合『投稿者に対する責任』が生じる
6 権利侵害の根拠により『運営者の削除』は免責される
7 『ユーザーの違法投稿』による運営者の法的責任予防策

1 名誉棄損・侮辱的『表現』が損害賠償などの責任生じることがある

インターネット上の掲示板,ブログによる『表現』は,内容によっては,違法となります。
一般的に『表現』は尊重されています(表現の自由;憲法21条)。
そこで民事上『違法』つまり『損害賠償の対象』となるのは一定の限度を超えた表現となります。
表現の違法性の判断基準については別記事で説明しています。
詳しくはこちら|違法な表現行為|基本|損害賠償・差止・削除請求・謝罪広告・違法性阻却

2 掲示板運営者×プロバイダ責任制限法|免責される事情

『違法な発言,投稿』があった場合に責任を負うのは原則的に『発言者・投稿者』です(前述)。
一方で『掲示板管理者・運営者』が責任を負うこともあります。

<掲示板管理者・運営者×プロバイダ責任制限法>

あ 掲示板管理者・運営者の法的な立場

『特定電気通信役務提供者』に該当する
※プロバイダ責任制限法2条3号
※東京地裁平成16年5月18日

い 『違法な投稿』の内容;3条1項

『情報の流通により他人の権利が侵害された』

う 『違法な投稿』があった場合の手続・責任;3条

ア 知らなかったので削除しなかった→責任なし
※プロバイダ責任制限法1項1号
イ 権利侵害を認識して削除した→責任なし
※プロバイダ責任制限法2項1号
ウ 削除要請を受けた+同意の有無の照会+回答なし→削除した→責任なし
※プロバイダ責任制限法2項2号

3 掲示板管理者・運営者|免責されない→実質的な削除義務が生じる

プロバイダ責任制限法は運営者の責任を『制限』する規定です。
しかし『制限』に該当しない場合は,反対解釈が可能です。
つまり『責任あり』ということにつながるのです。

<掲示板管理者・運営者×削除義務>

あ プロバイダ責任制限法の反対解釈

『免責される事情』(上記)に該当しない場合
→削除しないと,管理人・運営者が責任を負うこともあり得る
※プロバイダ責任制限法2条

い 実質的な解釈

次のいずれにも該当する場合
→実質的な削除義務がある

う 削除義務の要件

ア 『権利侵害』がある
イ 削除要請を受けた

4 掲示板運営者には『監視義務』があるわけではない

被害者としては,急いで削除して欲しいと掲示板運営者などに要請することがあります。
そして,管理人が『削除請求』を受けた場合に『削除しない』場合は『責任が否定』されなくなるのです。
逆に言えば,『管理人が自ら違法投稿を監視する』ことは要請されていないということです。

<掲示板管理者・運営者×監視義務>

あ 実情

ア 掲示板・投稿サイトのシステム
通常,ユーザーが自動的に投稿(表現)できる
イ 運営者の監視可能性
運営者が『すべての投稿を常時確認する』ことは事実上不可能と言える

い 監視義務

『監視義務』は否定される
※プロバイダ責任制限法3条1項
※東京地裁平成16年5月18日
※東京高裁平成13年9月5日;ニフティサーブ事件

なお『ブログ主』についても,掲示板運営者に準じた責任が生じることもあります。
詳しくはこちら|ブログの『コメント欄』|ブログ主は『削除義務』を負うこともある

5 運営者が安易に投稿を削除した場合『投稿者に対する責任』が生じる

逆に正当な投稿を削除すると,削除したことが違法となることもあります。
削除された投稿の内容次第では損害賠償の対象となります。
ここでは,詳細な内容について割愛します。

とにかく,運営者としては『削除要請』を受けた場合にジレンマに陥ります。
『削除する・しない』のいずれでも損害賠償責任が生じる可能性がある,ということです。
この点については,プロバイダ責任制限法で手当がなれています。
次に説明します。

6 権利侵害の根拠により『運営者の削除』は免責される

実際に削除要請を受けた場面で『権利侵害』に該当するかどうか,を判断することは難しいです。
運営者が削除した後で,後から訴訟を提起され『権利侵害ではない』と判断されることもあり得ます。
このような運営者のジレンマを救済する規定があります。
プロバイダ責任制限法により,次の範囲で運営者は免責されます。

<プロバイダの削除等が免責される要件>

あ 削除の責任免責

次のいずれかに該当する
→『削除』した責任は生じない=免責される

い 免責の要件

ア 相当の理由
権利侵害を信じる相当の理由がある
イ 7日以内の回答なし
運営者が投稿者に削除の同意を照会した
投稿者が7日以内に『同意しない』旨の申出をしなかった
※プロバイダ責任制限法3条2項

7 『ユーザーの違法投稿』による運営者の法的責任予防策

運営者は『削除』した場合もしない場合も法的責任を負う可能性があります。
その一方で,一定の範囲で『免責』の対象となります。
より確実に『免責』の対象となり,責任発生を抑制する方法をまとめます。

<侵害行為に関する運営者の責任発生防止策>

あ 対『被害者』の責任関係

ア 侵害行為の苦情受付(申告)方法を明示しておく
イ 申告の記録を保管しておく
侵害行為を知ったか否か,知った時点が明確になる
→『知らなかった』ことによる免責適用(1項)

い 対『投稿者』の責任関係

ア 投稿者に削除に対する同意の有無を質問
7日間回答がなければ,削除しても免責適用(2項2号)
イ 権利侵害の根拠,について,双方に質問
反論の機会を与える
→削除実行後も同様に意見を聴取する(機会を与える)
→『権利侵害を信じる相当の理由』が強くなる
=免責適用可能性アップ

実際のケースにおける裁判所の判断=判例については別記事で説明しています。
詳しくはこちら|インターネッツ×違法な表現・名誉毀損|判例|ニフティサーブ事件ほか