1 パロディー・アレンジ・替え歌・DJ-MIX・MADビデオ|著作権の問題の概要・ 具体例
2 キャラクターの模倣|キャラクター自体ではなく漫画全体の著作権侵害となる
3 『複製』と『翻案』の違い|『変更量』が『ゼロ』or『多少あり』
4 アレンジが著作権違反となる基準|『翻案』の定義
5 パロディーで原作のイメージ低下→同一性保持権侵害|『改変』
6 アレンジは黙認・『2次創作OK』と明示も多い
7 ダンス自体は『著作物』ではない→『踊ってみた』は適法の傾向
8 2次的著作物の扱い|権利者が複数になる

1 パロディー・アレンジ・替え歌・DJ-MIX・MADビデオ|著作権の問題の概要・ 具体例

替え歌や類似する小説,漫画,映像など,いわゆる『パロディー』がよく作られています。
キャラクターのアレンジ・パロディーも同様です。
著作権法では一定のルールが規定されています。
まずは,ここで扱う,具体的に問題となる行為をまとめておきます。

<アレンジ・類似のコンテンツ創作の具体例>

あ 漫画・小説の映画化・ゲーム化
い 漫画の小説の続編・別ストーリー創作

漫画のキャラクターを用いて『続編』『別ストーリー』を創作すること
同人誌など

う キャラクターのイラスト作成

既存のイラスト(格好)そのまま,ではなく,格好は自分で考えたもの
例;ディズニーキャラクターのイラストを描くこと

え 替え歌を作って歌うこと
お DJ-MIX・MADビデオ(ムービー)

テレビゲーム,アニメの音声,BGM,画像,動画(アニメーション)を編集,合成して作成したもの

か 『踊ってみた』系

例;人気グループのダンスを真似て踊る→投稿サイトに動画をアップロードする

また,辞書的な意味として,似ている単語があるので整理しておきます。

<パロティ・オマージュという言葉の意味>

あ 『パロディ』

ある作品を題材として新しく作品を作ること

い 『オマージュ』

ある作品に対して尊敬の意味を込めて,似たような作品を作ること

以上のような行為について,著作権法の扱いを順に説明します。
まず『参考とした元のコンテンツ』が著作物である場合に始めて著作権の問題となります。
例えば小説・漫画・イラスト・楽曲・歌詞は,通常,著作物として認められています。
詳しくはこちら|著作物の例示の規定(条文・趣旨・プラグラムの例外)
そして『元の著作物』と『まったく同じもの』を作ると,『再製』に該当するので『複製権侵害』『公衆送信権侵害』となります。
『まったく同じ』ではない場合には『自由』というわけではありません。
いわゆる『アレンジ』などと呼ばれる手法です。
『違うけど似ている』場合には『翻案権侵害』となることがあります。
さらに『そこまで似てないけど,原作のイメージ低下となる』となると,『同一性保持権侵害』となります。
これれとは別の問題もあります。
新たに作られたコンテンツは『模倣部分+新たな創作部分』というミックス状態です。
『2次的著作物』と呼ばれます。
以上の著作権に関する問題について説明します。

2 キャラクターの模倣|キャラクター自体ではなく漫画全体の著作権侵害となる

『アレンジ』の問題の中で典型的なものは『キャラクター』の模倣です。
ここで『キャラクター』という用語は実はいくつかの意味で使われます。
最初に整理しておきます。

<『キャラクター』の種類>

あ 『ファンシフルキャラクター』→著作権△

漫画・アニメーション等の視覚的表現を伴う著作物の登場人物
例;ポパイ

い 『オリジナルキャラクター』→著作権△

商品化等の目的で単体で創作され視覚的に表現されたキャラクター
例;イメージマスコット・『ゆるキャラ』

う 『フィクショナルキャラクター』/文学的キャラクター→著作権☓

小説等の言語の著作物の登場人物;性格や生き様という概念

え 『キャラクター』が描かれた個々のイラスト・動画→著作権◯

『キャラクター』ではなくて『イラスト・動画』という著作物となる

まず,物語の中で描写される登場人物の『性格・生き様』としての『フィクショナルキャラクター』は著作物ではありません。
『表現』に該当しないからです。
次に,漫画・アニメで実際にイラスト(動画)となっている登場人物や,具体的イラスト・ぬいぐるみなどとして作られたキャラクター(上記『あ』『い』)は,著作権で保護されています。
この点『特定のイラストを模写した』場合は,『キャラクターの模倣』ということではなく『特定のイラストの模倣』として複製権侵害などになります(上記『う』)。
問題になるのは『どのイラストにも描かれていない格好』だけど『服装・姿態から見て同一キャラクター』という場合です。
結果的には『複製権侵害』か『翻案権侵害』になります。
詳しくは後述します。

3 『複製』と『翻案』の違い|『変更量』が『ゼロ』or『多少あり』

既存のコンテンツを参考に新たにコンテンツを作る,ということは大きく2つに分けられます。
『ほぼ同じ』と『多少は変えた』というものです。
まずは著作権法上の扱いの違いを整理しておきます。

<複製/翻案の違い>

変更の量 創作性 権利の種類 具体例(呼称)
ほぼなし なし 複製権・公衆送信権 トレース
多少あり あり 翻案権・同一性保持権 アレンジ・パロディー

ほぼ同じものを作った,という場合は,原則として『複製権侵害』となります。
そして,投稿サイトにアップロードするような『サーバー1箇所に置いた』だけでも,不特定多数の者がアクセスして閲覧できる,ことになります。
多数に複製されたのと実質的にイコールです。
これは『公衆送信権侵害』となります。
『複製』のインターネット版,と言えます。
次に『多少は変えた』=アレンジ,の場合は『翻案権侵害』となる可能性があります。
『キャラクター』については,特定のイラストを模写した,というわけではなく『格好』自体は新たに考えて作った,ということが多いです。
そこで『変更なし→複製』の対象外となりがちです。
『翻案権侵害』については,次に説明します。

4 アレンジが著作権違反となる基準|『翻案』の定義

(1)『翻案』の定義

次に『元のコンテンツを多少変えて別のコンテンツを作った』ことが著作権侵害となるかどうか,という基準について説明します。
要するに『真似』と言えるか言えないか,というような区別です。
現実には曖昧な状態となったイラスト・写真・影像がインターネット上では多く見られます。
著作権法上の『翻案』の解釈・基準についてまとめます。

<『翻案』の定義>

次のいずれをも満たす行為

あ 既存の著作物に依拠している
い 表現上の本質的な特徴の同一性を維持している

↑元のコンテンツを直接感得できる状態にある

う 具体的な表現形式を変更した
え 新たな著作物を創作した

※著作権法27条
※最高裁平成13年6月28日;江差追分事件
※東京高裁平成13年1月23日;ケロケロケロッピ事件

(2)『本質的な特徴の同一性』の判断の傾向

難しいのは『い』の『本質的な特徴(の同一性)』です。
これについて,明確な指標となる公的判断(裁判例等)はありません。
実務上の傾向としては『同一性』を厳しく(狭く)判断する傾向があります。
批評自体は,表現の自由や思想の自由市場として尊重されていることが根底にあります。
※東京地裁平成13年12月19日

動画については,セリフやカット・構成を含めて,ある程度長い時間で酷似している場合でないと『同一性』を認めない傾向があるのです。
例えば,著名人が演じる映像については,体格が大きく異なる人が真似をする場合には,セリフは同じでも全体のイメージが大きく異なります。
このような考慮から,『同一性』が否定されることもあります。

替え歌DJ-MIXについても,元の歌詞とはイメージが大きく異なるのが通常でしょう。
例えば元の歌を聞きたい人その代わりに替え歌を聴く,ということは考え難いです。
なお,文化庁(文化審議会著作権分科会)において,パロディーについて,法律上,ルールとして明確化する必要性が指摘されています。

(3)キャラクターのアレンジ・パロディー×翻案権侵害|対象の『著作物』

<『アレンジ』が侵害する対象=著作物>

あ 『アレンジ』が侵害する著作物の特定
『特定のキャラクターの名前等から連想される抽象的な人物像
イラストの集合体としての『漫画・絵本』『アニメ』全体
い 侵害対象のイラストの特定の要否

『必ずしもそれが連載漫画の第何回のどのコマの図柄』かの特定は不要
※最高裁平成9年7月17日;ポパイ事件

一定のアレンジ=変更部分がある場合は,ストレートな『複製』にはなりません。
また『抽象的な人物像』は著作物ではありません。
『人物像という意味でのキャラクター』についての著作権侵害は生じないのです。
侵害の対象は『漫画・絵本』『アニメ』全体という『著作物』なのです。
このような『作品全体』については『美術の著作物』として著作権の保護が及ぶのです。
『漫画・アニメ』などの全体を『複製or翻案』した,ということになるのです。

多くの判例がありますが,『複製』と『翻案』を明確に区別していないものもあります。
ただ,著作権侵害・違法,という意味では同じなので実質的な違いは生じません。

(4)キャラクターのアレンジ・模倣|判例

キャラクターのアレンジ・パロディー・模倣について,裁判所が判断した事例は多くあります。
判例を紹介します。

<キャラクターの模倣→『違法』|判例>

あ ポパイ事件

最高裁平成9年7月17日;ポパイ事件

い ノンタン事件

東京高裁平成11年11月17日(原審東京地裁平成10年3月30日)
いたずら心いっぱいの白猫が主人公の物語,『絵本全体』を著作物と捉えた

う スヌーピー事件

東京地裁昭和53年12月22日

え ライダーマン事件

東京地裁昭和52年11月14日
『改造人間ライダーマン』が『仮面ライダーV3』の著作権を侵害したと判断された

お たいやきくん事件

東京地裁昭和52年3月30日

か サザエさん事件 

東京地裁昭和51年5月26日

<キャラクターの模倣→『適法』|判例>

あ ケロケロケロッピ事件

東京高裁平成13年1月23日
創作されたイラストの特徴から元コンテンツのキャラクターを描いたものであることを知り得ない

5 パロディーで原作のイメージ低下→同一性保持権侵害|『改変』

パロディー作品が『そこまで似ていない』という場合は『翻案権侵害』にはなりません。
これとは別に,原作のイメージ低下が違法となることもあります。
『イメージを維持する』ことは,著作権法上『同一性保持権』として保護されます(著作権法20条)。
これは『著作者人格権』の1つに分類されています。
そして,類似作品の創作でイメージが低下することを『改変』として,これを禁じています(著作権法20条1項)。
その一方,著作物の性質,利用目的,態様からやむを得ない場合は,適法としています(著作権法20条2項4号)。
この例外的なやむを得ないという規定からは,明確・画一的な判断が困難です。
実務では,次のように,根本的な著作権者のデメリット,に着目する判断基準が用いられています。

<『改変』=著作者人格権侵害,の判断要素(概要)>

あ 原作品のイメージを悪化させる
い (潜在的)市場価値を低下させる

典型例としては,原作品を不当に誹謗中傷するようなケースです。
批評自体は,表現の自由・思想の自由市場として尊重されます。
原作品のイメージ・市場価値を下げる程度や,目的などの悪質性によって『改変』に該当するか否かが判断されることになります。
逆に悪質なものでなければ『改変』として違法になることは少ないでしょう。

6 アレンジは黙認・『2次創作OK』と明示も多い

アレンジ・パロディーの著作権法上の問題は,以上の説明以外に重要なことがあります。

<アレンジ・パロディーに関するありがちなこと>

あ 『黙認』が多い
い 明確に『2次創作OK』とPRしていることもある

『広告掲載』を条件として設定する場合もある

漫画などの著者の立場としては,パロディーが作られること,を歓迎することも多いです。
実際には,特定の作品(漫画)のファンが,好意的に創作することが多いのです。
より多くの人が興味を持ち,オリジナルの作品についても『普及』することにつながるのです。
そこで仮に『パロディーが出回る』ことが分かっても元の作品創作者は『黙認』することが多いです。
また,このようなことを見越して,最初から創作者が『2次創作OK』と明示していることもあります。
逆に言えば,『黙認されると思って確認しないままパロディーを作ってしまう』こともよく生じます。
その後,『パロディー作品の販売後に原作の創作者からクレームが来た』という経過で問題が表面化することにつながるのです。
クリエーターの立場を考えて,SNS(twitter,pixiv)などのオンライン上で感想を伝える,ということは好ましいでしょう。

7 ダンス自体は『著作物』ではない→『踊ってみた』は適法の傾向

ダンス,振付,というものが,著作物に該当しなければ,これを真似した動画の公表は著作権違反になりません。

ダンス,振付が『著作物』に該当するかどうかを説明します。
まず,形式的には『舞踊』の著作物に該当します(著作権法10条1項3号)。
しかし,前提として創作性が必要です(著作権法2条1項1号)。
ダンスの振付について,裁判例が判断基準を示しています。

<ダンスの振付の創作性判断基準>

ア 既存のステップの組み合わせに過ぎない→否定
イ 顕著な特徴を有するといった独創性→肯定
ウ 対象がごく一部(短時間)→否定
※東京地裁平成24年2月28日

つまり,非常に珍しく,ありふれていない,という動きについては著作物として認められることがありましょう。
しかし,現実的には,ダンスの個々の動き(振付・ステップ・型)は,既存のものであることがほとんどです。
純粋にまったく初めてということは多くないでしょう。
実際に,日本のアイドルグループのダンスなどについて,業界では,著作権侵害の主張がなされることはほぼ皆無です。
以上はあくまでも『ダンス』自体についての法的保護の説明です。
この点,『ダンス』と一緒になっている『楽曲』自体は作曲者の著作権があります。
機器で多人数に向けて再生すれば演奏権侵害になるなど,著作権の保護が及んでいます。

8 2次的著作物の扱い|権利者が複数になる

前述のとおり,アレンジ・パロディーにより,コンテンツを模倣することは一定の範囲で『翻案権侵害』となります。
もちろん,黙認や明確に承諾を得た場合は適法となります。
この『創作すること』とは別に『新たに創作されたコンテンツ』の権利関係がちょっと複雑です。
『新たに創作されたコンテンツ』も『元コンテンツ』とは別の『2次的著作物』となります。

<2次的著作物の著作権>

あ 定義

著作物を『翻案』することにより創作した著作物

い 『翻案』の具体的内容|例

翻訳・編曲・変形・脚色・映画化
※著作権法2条1項11号

う 2次的著作物の保護

原著作物の著作者の権利に影響を及ぼさない
『原著作物の著作者』は,『2次的著作物の著作者』と同一の種類の権利を有する
※著作権法11条,28条
※最高裁平成13年10月25日;キャンディ・キャンディ事件

結局,パロディー作品=『2次著作物』を販売する,という場合には『原作の創作者+パロディー作品創作者』の両方が合意(許諾)する必要があります。