1 『送達』の種類と使う順序のまとめ
2 『通常送達』は相手の住所や事務所が分かっている場合に用いられる
3 『就業先送達』は『通常送達』ができな特殊事情がある場合に行う
4 『付郵便送達』は相手の所在はハッキリしているが受け取らない場合に行なわれる
5 『公示送達』は相手の所在が『不明』という場合に行なわれる
6 『事実上の利害関係者』が送達を受領→一応有効だが再審事由となる
7 『相手方(当事者)』が送達を受領→無効だが追認となることもある

1 『送達』の種類と使う順序のまとめ

(1)『送達』とは

裁判所が,当事者に正式に通知をする手段は送達と言います。
代表的な例は,訴状や呼出状を被告に送付する時の特別送達です。
具体的には書留郵便に似ています。
宛名となっている者(被告等)が受領印を押して受領しないと送達されたことになりません(民事訴訟法101条)。
ここで,送達未了だと,裁判がスタートしません。
いわゆる訴訟係属は訴状の送達時,とされているのです。
最初に,送達の種類と,行なわれる状況についてまとめます。
個々の送達の内容は後述します。

<送達の種類のまとめ>

あ 住所や居所,勤務先が判明している場合

・住所や居所への送達;通常送達
↓送達不能の場合
・就業場所への送達
↓送達不能の場合
・付郵便送達

い 住所や居所,勤務先が不明という場合

・公示送達

2 『通常送達』は相手の住所や事務所が分かっている場合に用いられる

原則的な送達です。
相手方の居場所が分かっている,原則的な方法です。

<通常送達の宛先>

※いずれか
・住所
・居所
・営業所
・事務所
※民事訴訟法103条1項

3 『就業先送達』は『通常送達』ができな特殊事情がある場合に行う

送達場所は,原則として住所や居所です(民事訴訟法103条1項;通常送達)。
要は,相手が個人であれば,プライベートマターはプライベート領域で行う,ということです。
勤務先は,本来プライベートの領域ではないですし,裁判所からの送付物があることはプライバシーの観点から好ましいものではないでしょう。
しかし,やむを得ない,という場合は別です。
就業場所送達として勤務先への送達が認められることがあります(民事訴訟法103条2項)。

<就業場所送達を行うケースの例>

・住所や居所への送達をトライしたけど,相手が受け取らないので送達が完了しなかった
・住所や居所が不明であるが,勤務先だけは判明している

4 『付郵便送達』は相手の所在はハッキリしているが受け取らない場合に行なわれる

(1)送達を受領しないと無敵になってしまう

一般的な送達ができないという場合の方法として公示送達もあります(後記『5』)。
しかし,公示送達は,あくまでも『住所や居所が不明』,という場合のみに行なわれます。
そこで,単に訴状などが裁判所から送付されても『受領しない』という場合は,公示送達は利用できません。
一方,送達が完了しない訴訟が係属しない→相手は敗訴しない=無敵状態,となります。
ここで,この問題については,救済措置があります。

(2)付郵便送達は受け取らなくても受け取ったことになる

付郵便送達は,書留送達と呼ぶこともあります。
相手方の住所や居所への,通常送達ができない場合に利用できます(民事訴訟法107条)。
付郵便送達の場合,実際には書留郵便で訴状副本や呼出状が送付されます。
当然,通常送達でも受領しない者であれば,書留郵便でも受領しないはずです。
しかし,この付郵便送達では,相手が受け取っても受け取らなくても送達済として扱われます(民事訴訟法107条3項)。
これで,一方的に訴訟等の手続きは進められることになります。

5 『公示送達』は相手の所在が『不明』という場合に行なわれる

(1)相手が行方不明の場合の送達の不都合

取引先や金銭を貸与した先が,夜逃げをしたような場合,残された財産を速やかに押さえるべきです。
差押の前提として,訴訟を提起し,判決を取ることが原則として必要です。
ここで,相手方(被告)の所在がどうしても掴めない,という場合にも,訴訟,差押などの手続きは進める必要があります。
この部分で通常の送達ができないという問題が生じます。

(2)相手の所在が不明の場合,公示送達が利用できる

しかし,相手が行方不明になっただけで提訴など,裁判が利用できないとなると,裁判所の機能として不十分です。
そこで,民事訴訟法上,救済措置のルールが設けられています。
それが公示送達です。

(3)公示送達の内容

公示送達は,裁判所の前の掲示板などに,訴状その他の送付物を掲示する方法です。
相手方の住所,居所などの送達すべき場所が分からない場合に利用できます。
これにより,送達したことになるのです(民事訴訟法110条)。

(4)相手の所在不明の立証

公示送達が適用されるためには,実際に居場所が分からないということを証明する必要があります。
具体的には,以前の住所地は不在である,などの『調査報告書』を作って裁判所に提出します。

(5)公示送達により提訴→差押が可能になる

公示送達がなされれば,結局,被告が行方不明でも提訴することができます。
取引や貸金の契約書などで証拠が揃っていれば,判決を取ることが可能です。
差押の申立についても『送達』が必要です。
相手方が行方不明でも『公示送達』を用いれば差押手続きを進めることができます。

6 『事実上の利害関係者』が送達を受領→一応有効だが再審事由となる

(1)補充送達

『送達』を裁判の当事者が受領するとは限りません。
一般的に『同居人』の受領,についても送達として有効となります(民事訴訟法106条1項;補充送達)。

(2)『事実上の利害関係者』の受領

例えば相続や離婚などの『家事事件』では,敵対する人や一定の利害関係のある人が同居していることもあります。
この場合,郵便局のシステム上,住所・所在地として記載されている場所に赴くことになります。
利害関係のある者が送達を受領してしまう可能性もあります。
『利害関係者』が受領した場合の効果についてまとめます。

<事実上の利害関係者が送達を受領した場合の効果>

あ 原則

『補充送達』として有効
※民事訴訟法106条1項

い 例外|当事者が交付を受けなかった場合

受領者(同居人)から当事者に交付されなかった
→当事者がまったく知らないまま判決が確定するに至った
→この場合は『再審』事由となる
※最高裁平成19年3月20日

送達自体は『有効』となります。
そうすると,『知らないまま判決確定』ということが生じてしまいます。
その救済措置として『再審』が可能,ということになるのです。

7 『相手方(当事者)』が送達を受領→無効だが追認となることもある

送達を『敵対する当事者』が受領してしまう,というケースも生じます。
離婚・相続については,敵対者=夫婦や兄弟,が同じ住所地に同居している,ということも多いのです。
この場合の送達の効果をまとめます。

<『敵対当事者』が送達を受領した場合の効果>

あ 原則

双方代理として無効
『同視し得る者』が受領した場合も含む
※民法108条

い 例外|追認

当事者本人が異議なく受領した場合
→責問権放棄or追認として『有効』となる
※札幌高裁昭和31年12月14日
※基本法コンメンタール民事訴訟法1p267

条文

[民事訴訟法]
(交付送達の原則)
第百一条  送達は、特別の定めがある場合を除き、送達を受けるべき者に送達すべき書類を交付してする。

(送達場所)
第百三条  送達は、送達を受けるべき者の住所、居所、営業所又は事務所(以下この節において住所等という。)においてする。ただし、法定代理人に対する送達は、本人の営業所又は事務所においてもすることができる。
2  前項に定める場所が知れないとき、又はその場所において送達をするのに支障があるときは、送達は、送達を受けるべき者が雇用、委任その他の法律上の行為に基づき就業する他人の住所等(以下就業場所という。)においてすることができる。送達を受けるべき者(次条第一項に規定する者を除く。)が就業場所において送達を受ける旨の申述をしたときも、同様とする。

(補充送達及び差置送達)
第百六条  就業場所以外の送達をすべき場所において送達を受けるべき者に出会わないときは、使用人その他の従業者又は同居者であって、書類の受領について相当のわきまえのあるものに書類を交付することができる。郵便の業務に従事する者が郵便事業株式会社の営業所において書類を交付すべきときも、同様とする。
2  就業場所(第百四条第一項前段の規定による届出に係る場所が就業場所である場合を含む。)において送達を受けるべき者に出会わない場合において、第百三条第二項の他人又はその法定代理人若しくは使用人その他の従業者であって、書類の受領について相当のわきまえのあるものが書類の交付を受けることを拒まないときは、これらの者に書類を交付することができる。
3  送達を受けるべき者又は第一項前段の規定により書類の交付を受けるべき者が正当な理由なくこれを受けることを拒んだときは、送達をすべき場所に書類を差し置くことができる。

(書留郵便等に付する送達)
第百七条  前条の規定により送達をすることができない場合には、裁判所書記官は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める場所にあてて、書類を書留郵便又は民間事業者による信書の送達に関する法律 (平成十四年法律第九十九号)第二条第六項 に規定する一般信書便事業者若しくは同条第九項 に規定する特定信書便事業者の提供する同条第二項 に規定する信書便の役務のうち書留郵便に準ずるものとして最高裁判所規則で定めるもの(次項及び第三項において書留郵便等という。)に付して発送することができる。
一  第百三条の規定による送達をすべき場合
     同条第一項に定める場所
二  第百四条第二項の規定による送達をすべき場合
     同項の場所
三  第百四条第三項の規定による送達をすべき場合
     同項の場所(その場所が就業場所である場合にあっては、訴訟記録に表れたその者の住所等)
2  前項第二号又は第三号の規定により書類を書留郵便等に付して発送した場合には、その後に送達すべき書類は、同項第二号又は第三号に定める場所にあてて、書留郵便等に付して発送することができる。
3  前二項の規定により書類を書留郵便等に付して発送した場合には、その発送の時に、送達があったものとみなす。

[民事訴訟法]
(公示送達の要件)
第百十条  次に掲げる場合には、裁判所書記官は、申立てにより、公示送達をすることができる。
一  当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合
二  第百七条第一項の規定により送達をすることができない場合
三  外国においてすべき送達について、第百八条の規定によることができず、又はこれによっても送達をすることができないと認めるべき場合
四  第百八条の規定により外国の管轄官庁に嘱託を発した後六月を経過してもその送達を証する書面の送付がない場合
2  前項の場合において、裁判所は、訴訟の遅滞を避けるため必要があると認めるときは、申立てがないときであっても、裁判所書記官に公示送達をすべきことを命ずることができる。
3  同一の当事者に対する二回目以降の公示送達は、職権でする。ただし、第一項第四号に掲げる場合は、この限りでない。