1 会社の承認を欠く取締役の利益相反取引の効力と会社の承認の効果
2 会社の承認を欠く利益相反取引の効力
3 利益相反取引についての会社の承認の効果
4 会社の承認と取締役の責任との関係(参考)
5 会社に損害を与えたことによる刑事責任(背任罪・参考)

1 会社の承認を欠く取締役の利益相反取引の効力と会社の承認の効果

取締役が会社との間で利益相反取引を行うには会社の承認が必要です。
詳しくはこちら|取締役の競業取引・利益相反取引の制限(会社の承認・全体像)
この点,会社の承認を得ずに利益相反取引を行った場合には法的にどのような扱いとなるのかが問題となります。一方,承認を得た場合には,取引の効力は問題ありませんが,取締役の責任が生じることは回避されません。
本記事では,会社の承認がないで行われた利益相反取引の効力と承認の効果について説明します。

2 会社の承認を欠く利益相反取引の効力

取引に必要な承認がない場合のごく一般的な法的扱いは無効ということになります。
会社は取締役に対して,(承認していないのだから)取引は無効であると主張できます。
しかし,会社・取締役以外の第三者に利害が生じている場合には例外的な扱いがあり得ます。具体的には,この第三者が善意(承認を欠いていることを知らなかった)である限り,会社は無効であることを主張できません。結果的に有効であるのと同じような状態になります。
正確には,会社側が,第三者が悪意(承認を欠いていることを知っていた)ことを立証できない限りは無効という主張ができません。

<会社の承認を欠く利益相反取引の効力>

あ 原則

会社の承認を得ないで行った利益相反取引(違反行為)について
無効である

い 対取締役

(直接取引・間接取引を含めて)
会社は取締役に対して契約の無効を主張することができる

う 第三者保護(相対的無効説)

会社は第三者Aの悪意を証明しなくては,Aに対して無効を主張できない
※最高裁昭和43年12月25日(間接取引について)
※最高裁昭和46年10月13日(直接取引について)

3 利益相反取引についての会社の承認の効果

取締役の利益相反取引について会社が承認した場合には,当然,取引の効力は問題ありません(有効です)。この点,利益相反取引は形式的に民法108条の利益相反取引に該当しますので,本来は無効となるはずです。これは不合理なので,会社法の規定で,会社の承認がある場合には民法108条の規定の適用は排除されています。

<利益相反取引についての会社の承認の効果>

あ 承認の効果

利益相反取引は有効となる

い 民法108条の適用排除

利益相反取引のうち直接取引は民法108条に該当する
しかし,会社の承認を受けたものについては,民法108条の適用を受けない
※会社法357条2項

4 会社の承認と取締役の責任との関係(参考)

取締役の利益相反取引について会社が承認すれば,取引が有効になります。
一方,会社が承認しても,取締役の責任が免除されるわけではありません。つまり,仮に取引の結果として会社に責任が生じた場合は取締役が会社に対して損害賠償責任を負います。

<会社の承認と取締役の責任との関係(参考)>

利益相反取引により会社に損害が生じた場合
取締役の任務懈怠として賠償責任が生じることがある
このことは会社の承認の有無とは関係ない
詳しくはこちら|取締役の競業取引・利益相反取引による会社に対する損害の賠償責任

5 会社に損害を与えたことによる刑事責任(背任罪・参考)

利益相反取引によって会社に責任が生じると,取締役が損害賠償責任を負うことがあります(前記)。
さらに,このような民事責任とは別に,刑事責任として,(特別)背任罪が成立することもあります。
詳しくはこちら|背任罪の基本(条文と背任行為の各要件の解釈・判断基準)

本記事では,会社の承認を得ずに行われた利益相反取引の効力と承認の効果について説明しました。
実際には,個別的な事情によって法的扱いや法的責任の判断が違ってきます。
実際に会社と取締役の間の取引に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。