1 取締役の競業取引・利益相反取引による会社に対する損害の賠償責任
2 一般的な取締役の任務懈怠責任
3 任務懈怠の推定
4 競業取引による損害額の推定

1 取締役の競業取引・利益相反取引による会社に対する損害の賠償責任

取締役が競業取引利益相反取引を行うことは制限されています。
詳しくはこちら|取締役の競業取引・利益相反取引の制限(会社の承認・全体像)
これらの取引によって会社に損害が生じる可能性があることから制限されているのです。
実際に取締役がこれらの取引を行って会社に損害が生じた場合には,取締役は会社に対して損害を賠償する責任を負います。
本記事では,競業取引・利益相反取引による取締役の会社に対する損害賠償責任を説明します。

2 一般的な取締役の任務懈怠責任

一般的に,取締役に任務懈怠があり,これによって会社に損害が生じた場合,取締役は会社に対して損害賠償責任を負います。競業取引や利益相反取引をする時点で,会社に損害が生じるリスクがあります。これらの取引によって会社に損害が生じた場合は,基本的に任務懈怠があったことになり,取締役は損害賠償責任を負います。
なお,競業取引や利益相反取引を行うことについて会社の承認を得ていてもこのことは同じです。逆にいえば,会社の承認の中には損害賠償責任の免除は含まれていないということです。

<一般的な取締役の任務懈怠責任>

あ 取締役の任務懈怠責任

取締役の行為(競業取引・利益相反取引)によって会社が損害を受けた場合
会社は任務を怠った役員に対して損害賠償請求をすることができる
※会社法423条1項
詳しくはこちら|取締役などの役員が会社に対して負う責任

い 会社の承認との関係

『あ』の任務懈怠責任は(取引についての)会社の承認とは無関係である
=会社が承認した取引によって生じた損害でも賠償責任が生じる
※江頭憲治郎著『株式会社法 第7版』有斐閣2017年p447

3 任務懈怠の推定

競業取引や利益相反取引を行った取締役は通常,任務懈怠があったといえます(前記)。そこで会社法上,任務懈怠が推定されます。
さらに,会社の判断としてこれらの取引を行うことを決定した取締役や,承認する取締役会決議で賛成した取締役任務懈怠が推定されます。

<任務懈怠の推定>

あ 基本的事項

競業取引・利益相反取引が行われたケースにおいて
『い』の取締役は任務を怠ったものと推定される

い 対象となる取締役

ア 『あ』の取引を行った取締役
イ 『あ』の取引をすることを決定した取締役
ウ 取締役会設置会社で『あ』の取引に関する取締役会の承認の決議に賛成した取締役
※会社法423条3項1号〜3号

4 競業取引による損害額の推定

取締役が会社に対して損害賠償責任を負う場合に,賠償すべき金額が問題となります。会社に生じた損害のことです。
この点,取締役による競業取引については,この競業取引によって取締役が得た利益の額損害額であると推定されます。

<競業取引による損害額の推定>

会社の承認を得ずに取締役が競業取引を行った場合
当該取引によって取締役が得た利益の額会社が受けた損害の額推定する
※会社法423条2項

本記事では,競業取引や利益相反取引を行って会社に損害が生じた場合の損害賠償責任を説明しました。
実際には,個別的な事情によって責任の有無や損害の内容は違ってきます。
実際に取締役の競業取引や利益相反取引によって会社に生じた損害についての問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。