1 仮差押の担保基準
2 仮差押の担保基準(全体の表)
3 仮差押の担保の実情(目的物=動産)
4 仮差押の担保の実情(目的物=不動産)
5 仮差押の担保の実情(目的物=債権)
6 仮差押の担保の実情(目的物=自動車・船舶)
7 仮差押の担保の実情(目的物=有価証券)

1 仮差押の担保基準

民事保全(仮差押・仮処分)では,発令の際,担保が要求されます。担保の金額の算定については,実務では,担保基準が目安(相場)として用いられています。
担保基準は,あくまでも目安であり,実際に決定される担保金額は個別的な事情で変動します。とはいっても,現実には担保基準に沿った担保金額が決定されるケースが多いです。
詳しくはこちら|民事保全の担保の基本(担保の機能・担保決定の選択肢・実務の傾向・不服申立)
本記事では,担保基準のうち,仮差押に関するものを説明します。

2 仮差押の担保基準(全体の表)

最初に,仮差押の担保基準の全体をまとめた表を紹介します。

<仮差押の担保基準(全体の表)>

目的物→
被保全債権
 ↓
動産 不動産 債権 自動車
預金・給料 敷金・
保証金
預託金
供託金
その他 登録 取上げ 併用
手形金・小切手金 10〜25 10〜20 10〜25 10〜20 10〜25 10〜20 15〜25 20〜30
貸金・賃料
売買代金
その他
10〜30 10〜25 10〜30 10〜25 10〜30 10〜25 20〜30 25〜35
交通事故損害賠償 5〜20 5〜15 10〜25 5〜15 5〜20 5〜15 10〜20 15〜25
その他の損害賠償 20〜30 15〜30 25〜35 15〜30 20〜30 15〜30 20〜35 25〜35
詐害行為取消権 20〜30 15〜35 20〜40 15〜40
財産分与 10〜15 5〜15 10〜15 10〜15
離婚に伴う慰謝料 10〜20 5〜20 10〜20 10〜20

※単位; 担保金額 / 目的物の価格 × 100(%)
※司法研修所編『民事弁護教材 改訂 民事保全 補正版』日本弁護士連合会2014年p29

前記のように,実際には多くの個別的な事情が考慮され,この基準の範囲を外れることもあります。
以下,仮差押の目的物の種類ごとに,実際の運用の状況など,担保金額の算定において参考となるものを紹介・説明します。

3 仮差押の担保の実情(目的物=動産)

仮差押の目的物が動産であるケースでは,さらに請求債権(被保全債権)の種類によって担保基準が決まります(前記)。また,目的物である動産の具体的な内容も,実際に決定される担保金額に影響します。

<仮差押の担保の実情(目的物=動産)>

あ 1977年大阪地裁

原則は債権額の20〜30%程度
被保全債権の疎明の程度,目的物の性質などに応じて適宜修正する
※『最近における大阪地方裁判所保全部の事件処理の実情1』/『判例タイムズ341号』1977年2月p56

い 1969年東京地裁

ア 目的物=家具類

被保全債権 運用の実情
貸金債権 20〜25%
損害賠償債権 25〜33.3%

イ 目的物=商品類
家具類のうち最も高額な率(33.3%)を用いる
※『東京地裁保全部の事件処理の現況』/『判例タイムズ238号』1969年11月p16

4 仮差押の担保の実情(目的物=不動産)

仮差押の目的物が不動産であるケースでの担保金額の算定では,基礎(基準)とする金額には2つの考え方があります。請求債権(被保全債権)目的物(不動産)の価額(価値)のそれぞれを基礎とする考え方です。
目的物の価額を基礎とするとした場合には,(不動産の価値の)評価方法について,固定資産評価額をそのまま用いる方法と,実勢価格を用いる方法があります。

<仮差押の担保の実情(目的物=不動産)>

あ 1977年大阪地裁

原則は目的物(う)or被保全債権額の10〜25%
基準とする金額には2つの考え方がある
詳しくはこちら|保全の担保算定における目的物価額基準説と請求債権額基準説
※『最近における大阪地方裁判所保全部の事件処理の実情1』/『判例タイムズ341号』1977年2月p56

い 1969年東京地裁

目的物(う)or被保全債権額の高い方の10〜20%

う 目的物(不動産)の価格の算定

固定資産評価額と実勢価格の2つの考え方がある
担保の負担分は控除する
詳しくはこちら|保全の担保算定における不動産の評価(用いる評価・担保負担・敷地権)

5 仮差押の担保の実情(目的物=債権)

仮差押の目的物が債権であるケースでは,さらにその債権の内容(種類)によって担保基準が異なります(前記)。
実際の裁判所の運用の統計でも,おおむね担保基準に沿った担保決定がなされていることが分かります。

<仮差押の担保の実情(目的物=債権)>

あ 1977年大阪地裁

原則として動産の場合に準じる
目的物が給料債権,預金債権などのときには若干高めにする
※『最近における大阪地方裁判所保全部の事件処理の実情1』/『判例タイムズ341号』1977年2月p56

い 1969年東京地裁
目的物 運用の実情
預金債権 20〜33.3%
売掛代金 15.8〜20%

※『東京地裁保全部の事件処理の現況』/『判例タイムズ238号』1969年11月p16

6 仮差押の担保の実情(目的物=自動車・船舶)

仮差押の目的物が自動車や船舶であるケースでは,仮差押の執行の方法(種類)によって担保基準が決まります(前記)。
要するに,債務者から奪う処分・利用の範囲(大きさ)担保金額を比例されるという考え方です。実際の裁判所の運用の統計としても,おおむね担保基準どおりに担保金額が算定されていることが分かります。

<仮差押の担保の実情(目的物=自動車・船舶)>

あ 1977年大阪地裁

ア 登録による方法
監守保存・停泊命令なし,債務者使用の場合
→時価の20%程度
イ 取上げによる方法
監守保存・停泊命令つきの場合
→時価の25〜30%程度
※『最近における大阪地方裁判所保全部の事件処理の実情1』/『判例タイムズ341号』1977年2月p56

い 1969年東京地裁(自動車について)

ア 登録による方法
監守保存がない場合
→自動車の時価と被保全債権額の高価な方の20%
イ 取上げによる方法
監守保存つきの場合
→自動車の時価と被保全債権額の高価な方の25%〜33.3%
※『東京地裁保全部の事件処理の現況』/『判例タイムズ238号』1969年11月p14,16

7 仮差押の担保の実情(目的物=有価証券)

仮差押の目的物が有価証券であるケースについては,前記の担保基準(表)には記載がありません。この点,実際の裁判所の運用の統計では,有価証券の時価または額面の10〜20%相当額を担保金額として決定しているものが多いです。

<仮差押の担保の実情(目的物=有価証券)>

有価証券の時価or額面の10〜20%
※『東京地裁保全部の事件処理の現況』/『判例タイムズ238号』1969年11月p16

本記事では,仮差押の担保基準を説明しました。
実際には,個別的な事情や主張・立証のやり方次第で決定される担保金額は違ってきます。
実施に保全の担保に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。