【宇宙空間と各国の法規制の限界(月面での仮想通貨マイニングなど)】

1 宇宙空間と各国の法規制の限界
2 天体や人工衛星での仮想通貨マイニング
3 マイニングに対する法令の適用
4 クロスボーダーの法規制問題の種類(参考)
5 クロスボーダーの法規制の解釈(概要)
6 宇宙空間と地球の通信上の行為(サービス)の法規制問題
7 宇宙空間で完結する行為(サービス)の法規制問題
8 宇宙空間利用に伴う政府の許可と監督
9 政府の許可の判断内容の問題

1 宇宙空間と各国の法規制の限界

宇宙空間は,世界各国の主権(統治権)は及びません。つまり,どの国の法律・規制も適用されないエリアだということです。
そして,国際的なルールとして,宇宙条約は,天体を領有・所有・占拠(独占)することを禁止しています。しかし,宇宙空間を利用することを禁じているわけではありません。
詳しくはこちら|宇宙・天体の利用に関する国際的ルール(宇宙条約・月協定)
そうすると,各国の領土や領海・領空で行うと違法となることが宇宙空間では違法とならない可能性も出てくるわけです。
本記事では,宇宙空間には各国の法規制(主権)が及ばないというテーマに関して説明します。現在の技術水準では難しいものも含めて,一種の思考実験として検討します。

2 天体や人工衛星での仮想通貨マイニング

分かりやすい具体例として,月などの天体や人工衛星で仮想通貨のマイニングをするということを考えます。
宇宙空間でも太陽光発電パネルやプルトニウム電池を使って長期にわたって電力を得る技術はすでにあります。そこにマイニングマシンがあれば,無人で仮想通貨のマイニング(計算)を行うことができます。
あとは,地上(地球)とマイニングマシンの間の一定のクオリティの通信が実現すれば宇宙空間でマイニングすることができます。

3 マイニングに対する法令の適用

前記のような宇宙空間でのマイニングを前提として考えます。
国によってはマイニングが法律による規制(禁止)の対象とされています。
では,人工衛星(や月面)にあるマシンでのマイニングにはどの国の法律が適用されるのでしょうか。
なお,ここで問題となる法律には税法も入ります。どの国に税金を課せられる(徴税権の対象となる)のでしょうか。
実質的にはどの国の主権(統治権)が及ぶかという問題です。
単に宇宙空間というエリアだけを考えると,どの国の主権も及ばないことになります。
しかし実際にはマイニングという行為の場所の法律的な判断(解釈)はそのように単純ではありません。次の項目で説明を続けます。

4 クロスボーダーの法規制問題の種類(参考)

実は,以前から,インターネットの登場,普及によって国境をまたぐ行為(クロスボーダー)が大量に生じています。どの国の法令が適用されるかという問題は既に議論がなされているテーマなのです。
主に,わいせつ物陳列罪,賭博罪,各種サービスについての行政的な規制(業法)の適用の問題に分類できます。要するにオンライン上で(ほぼ)完結する行為については,従来の人の行動を前提とした行為の場所という概念(判断)がうまく機能しないのです。

<クロスボーダーの法規制問題の種類(参考)>

あ 共通している枠組み

インターネット(通信回線)上のサービス(行為)について
どの国の法令(規制)が適用されるのかの判定がはっきりしない
問題となる行為の典型は『い〜え』に分けられる

い 表現系犯罪

インターネット上の投稿によるわいせつ物陳列罪
 詳しくはこちら|インターネット上の投稿によるわいせつ物陳列罪の行為地(国内犯)の判断

う 賭博系

オンラインカジノによる賭博罪
詳しくはこちら|国内犯解釈論×賭博罪|オンライン・カジノ|海外サーバー

え 業法系

ア 仮想通貨交換サービス 国によって仮想通貨交換サービスの規制の有無・内容(登録制など)が異なる
仮想通貨交換サービスはオンラインでほぼ完結する
どの国で営業したことになるのかがはっきりしない
詳しくはこちら|日本国内居住者向け仮想通貨交換サービス(日本での営業)の判断基準
イ ICO 国によってICOの規制の有無・内容が異なる
ICOの募集,払込,新コイン発行(交付)のすべてがオンラインで完結する場合
どの国の規制を受けるのかがはっきりしない

5 クロスボーダーの法規制の解釈(概要)

前記のようなクロスボーダーの法規制の問題をどう扱うかという解釈についてはいろいろな考え方があります。
大雑把にいうと(少なくとも日本では)行為と結果のいずれかが日本国内であれば日本の法律を適用するという見解が有力です(偏在説)。
詳しくはこちら|国内犯に該当する一般的基準(インターネット上の賭博・表現系犯罪)
これを元に考えます。
前記のようなインターネット上の行為でも,インターネットの外とつながっているところがあります。
例えば,人が映像やプログラムをアップロードして,別の人が映像を見るとか,サービスを受ける(賭ける,注文をする)というように人間のリアルな動作が関わっています。
このように関わっている人間の居場所(国)があります。この場所の法律が適用される可能性があるわけです。

6 宇宙空間と地球の通信上の行為(サービス)の法規制問題

宇宙空間にマシン(サーバー)が置いてある状況も,以上の従来のクロスボーダーの法規制の解釈が流用できるでしょう。
つまり,このマシンを実質的に管理している人間や利用する人間の居場所(国)があるはずなので,その国の法律が適用される可能性があるのです。

7 宇宙空間で完結する行為(サービス)の法規制問題

さらに,マシンだけではなく人間も宇宙空間にいるという状況を考えてみます。
要するに有人の宇宙ステーションがあって,その中で賭博を行ったという想定です。
この場合は人間もマシンも,どこかの国(の主権)の範囲内にあるわけではありません。単純に考えるとどの国の法令も適用されないことになります。
実はこの発想は,公海(領海より外)での船上カジノとして実在するサービスの延長です。
詳しくはこちら|船上カジノ×賭博罪|法解釈|カジノクルーズ・リアルサービス

8 宇宙空間利用に伴う政府の許可と監督

以上のように,従来の法令とその解釈を前提とすると,宇宙空間に出れば法規制を逃れるということになります。
ただし,実際には別の問題があります。
宇宙空間に出る(宇宙活動をする)ためには国の許可が必要なのです。
これは,民間企業の宇宙活動による責任を国が負うという特殊なルールに伴うものです。つまり賠償責任を国が負うのであるから,他者(他国)に損害を生じさせないように国が監督するという趣旨です。
詳しくはこちら|宇宙活動による損害の賠償責任(国家への責任集中の原則・外交ルート)

9 政府の許可の判断内容の問題

結局,民間企業が完全に自由に宇宙空間を利用できるわけではないのです。
なお,この宇宙活動についての国の許可の制度は損害発生防止が目的なので,それ以外の理由で不許可にすることができるのか,という問題もあります。つまり,宇宙船上にカジノの施設があるという理由で宇宙旅行を不許可にすることは許可の制度の趣旨に整合しないとも考えられるのです。

本記事では,宇宙空間の法規制というテーマについて説明しました。
現時点では技術的な実現性が低いものが多く含まれています。
しかし,現在のテクノロジーやサービスに間接的に関係する,ヒントになることはあると思います。
具体的なプロジェクトにおいて法律面の問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINE
【財産分与と詐害行為取消権(詐害性の判断基準と取消の範囲・対象)】
【宇宙・天体の利用に関する国際的ルール(宇宙条約・月協定)】

関連記事

無料相談予約 受付中

0120-96-1040

受付時間 平日9:00 - 20:00