【民法402条(金銭債務の通貨による弁済)の規定と解釈の基本】

1 民法402条(金銭債務の弁済)の規定と解釈の基本
2 民法402条(金銭債権の弁済)の条文
3 決済手段と債権者の同意の要否(民法402条適用の典型)
4 『金銭(債権)』と『通貨』の意味(概要)
5 民法402条の任意規定性(概要)
6 現金の一般的受容性・汎用性と強制通用力の関係(概要)

1 民法402条(金銭債務の弁済)の規定と解釈の基本

民法402条には,金銭債務通貨によって弁済するということが規定されています。
この規定の解釈では,金銭(債務)通貨の本質に関わるいろいろな考え方が登場します。
本記事では,民法402条の規定や解釈の基本的なものを説明します。

2 民法402条(金銭債権の弁済)の条文

民法402条に関する解釈はとても深いものがあります。まずは条文自体を押さえておきます。

<民法402条(金銭債権の弁済)の条文>

(金銭債権)
第四〇二条 債権の目的物が金銭であるときは、債務者は、その選択に従い、各種の通貨で弁済をすることができる。ただし、特定の種類の通貨の給付を債権の目的としたときは、この限りでない。
2 債権の目的物である特定の種類の通貨が弁済期に強制通用の効力を失っているときは、債務者は、他の通貨で弁済をしなければならない。
3 前二項の規定は、外国の通貨の給付を債権の目的とした場合について準用する。

3 決済手段と債権者の同意の要否(民法402条適用の典型)

次に,民法402条が適用される典型的な状況を押さえておきます。
金銭債務(日本円で支払う債務)を負う者(債務者)は,現金(日本円)を提供すれば弁済(の提供)となります。
例えばクレジットカードで支払いたいと思っても,債権者が同意しない限り認められません。
この点,解釈上,銀行の振出小切手など,現金と同視されるものであれば,現金と同じように債権者の同意なく弁済(提供)ができます。

<決済手段と債権者の同意の要否(民法402条適用の典型)>

あ 現金による金銭債務の履行

債務者が現金を提供すれば
債権者の明示的な同意がなくても有効な弁済の提供となる
効果の内容=(金銭債務の消滅or)債務不履行責任からの免責
※古市峰子稿『現金,金銭に関する法的一考察』/『金融研究14巻4号』日本銀行金融研究所1995年12月p111

い 現金以外による金銭債務の履行

現金以外により金銭債務の履行することについて債権者の同意が必要である
(同意がなければ使用できない)
現金以外の決済手段の例=プリペイドカード・クレジットカード
手形・小切手をはじめ,そのほかの支払手段についても一般論としては債権者の同意が必要である
例外的に現金と同じ扱いとなるものもある
詳しくはこちら|金銭の提供として認められる範囲(手形・小切手・郵便為替など)
※古市峰子稿『現金,金銭に関する法的一考察』/『金融研究14巻4号』日本銀行金融研究所1995年12月p113

4 『金銭(債権)』と『通貨』の意味(概要)

民法402条1項は,『金銭債権』の弁済を『通貨』で行うということが規定されています(前記)。
この『金銭(債権)』に,法定通貨(強制通用力あり)が含まれることは間違いありません。一方,自由貨幣(強制通用力なし)も含むかどうかの見解は分かれています。
ただ,どちらの見解でも現実的な扱いに違いはないと指摘されています。
詳しくはこちら|民法402条の『金銭』・『通貨』の意味(自由貨幣を含むか)

5 民法402条の任意規定性(概要)

民法402条は任意規定であるため,当事者が別の内容を合意(特約)することが可能です。
法改正の経緯を振り返ると,強制通用力のある通貨の流通を強制することは好ましくないという判断が見えてきます。
詳しくはこちら|民法402条の任意規定性(法定通貨使用の強制を断念した経緯)
この考えは,強制通用力を持たせても社会が受け入れるとは限らないという実情(後記)が元になっています。

6 現金の一般的受容性・汎用性と強制通用力の関係(概要)

現金(貨幣)の基本的な機能として,一般的受容性と汎用性があります。要するに広く流通するという特徴のことです。
これは,法律による強制通用力によって実現されているといえます。
とはいっても,強制通用力があっても社会が受け入れない(一般的受容性がない)こともあります(前記)。また逆に強制通用力はない自由貨幣が一般的受容性を持つということもあります。
つまり,一般的受容性・汎用性と強制通用力の有無が一致するとは限らないです。

本記事では,民法402条の規定と基本的な解釈について説明しました。
民法402条については,細かい解釈がたくさんあって複雑です。
実際にこの規定が問題になるのは(仮想通貨など)イレギュラーな支払方法に関するケースです。
実際に金銭債務の弁済(支払)に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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【民法402条の『金銭債権・金銭・通貨』の意味(自由貨幣を含むか)】

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