1 民法402条の任意規定性
2 民法402条1項の任意規定性
3 現行民法402条制定経緯の要点
4 法定通貨以外の貨幣の普及を止められない実情

1 民法402条の任意規定性

民法402条は,金銭債権(債務)各種の通貨で弁済できると規定しています。
詳しくはこちら|民法402条(金銭債務の通貨による弁済)の規定と解釈の基本
ところで現在の民法では,この規定は任意規定とされています。つまり,当事者が,この規定とは異なる内容を合意(特約)することが可能なのです。
本記事では,旧民法時代の規定と比較しつつ,民法402条の任意規定という性質について説明します。

2 民法402条1項の任意規定性

民法402条1項を強行規定と定める規定はありません。そこで,この規定は任意規定ということになります。
この点,現行民法に改正される前の旧民法では強行規定とされていました。

<民法402条1項の任意規定性>

あ 任意規定

民法402条1項は任意規定である

い 変更の経緯

改正前の旧民法463条は明文で規定に反する合意を『無効である』(強行規定)と定めていた(後記※1)
※古市峰子稿『現金,金銭に関する法的一考察』/『金融研究14巻4号』日本銀行金融研究所1995年12月p106

3 現行民法402条制定経緯の要点

現在の民法402条が制定される前には,明治23年に交付された旧民法がありました。旧民法の時代は金や銀の法定通貨が普及していて,旧民法で他の貨幣の使用を禁止する姿勢であったことが分かります。

<現行民法402条制定経緯の要点(※1)>

あ 旧民法から現行民法への移行の時期

ア 旧民法(財産編)
明治6年に草案が作成された
明治23年に公布された
最終的に施行されなかった
イ 現行民法
明治27年9月に草案が作成(議論)されていた
※明治27年9月法典調査会議事速記録

い 民法402条の改正点
時期 条文の文言 強行規定性
旧民法 金若しくは銀の国貨 強行規定
現行民法 貨幣 任意規定

※古市峰子稿『現金,金銭に関する法的一考察』/『金融研究14巻4号』日本銀行金融研究所1995年12月p106,141,142

4 法定通貨以外の貨幣の普及を止められない実情

旧民法から現在の民法402条に変更された箇所から,読み取れることがあります。
旧民法の時代(明治時代)は,金や銀(金属)を使った硬貨が法定通貨として使われていました。しかし,国民(社会)全体が信用してこれを決済に使うことが完全に浸透するには至っていなかったのです。そこで,旧民法で他の決済手段の使用を禁じるという発想があったのです。
しかし法律で強制することで国民(社会)の貨幣への信頼が実現するものではありません。
そのため,強行規定とすることは断念し,任意規定にとどめることになったのです。

本記事では,民法402条の任意規定という性質について説明しました。
実際にこの規定が問題になるのは(仮想通貨など)イレギュラーな支払方法に関するケースです。
実際に金銭債務の弁済(支払)に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。