【会社の(形式上か実質上の)『本店』が基準となるいろいろな規定】

1 会社の(形式上か実質上の)『本店』が基準となるいろいろな規定
2 会社の組織に関する訴えの専属管轄と『本店』(形式)
3 会社の組織に関する訴えの種類(参考)
4 過去の会社法以外の裁判管轄と『本店』(参考)
5 会社法上の制度と『本店』(形式)
6 会社に関する登記と『本店』(形式)

1 会社の(形式上か実質上の)『本店』が基準となるいろいろな規定

会社の『本店』や『営業所』という法律上の概念(用語)があります。日常用語とは使い方(意味)が少し異なります。
営業所本店(や支店)は一致することもありますが,別の概念(意味)です。実際に一致しないことも多いです。
詳しくはこちら|会社の『営業所・本店・支店』の意味(2種類の『本店』の意味)
具体的な規定によって,(主たる)営業所(形式上または実質上の)本店が基準となります。
本記事では,本店の場所を基準とする具体的な規定を説明します。

2 会社の組織に関する訴えの専属管轄と『本店』(形式)

会社法は,いろいろな種類の会社の組織に関する訴えを定めています。会社という組織の内部の問題を扱う訴訟です。この訴訟では,一般的な訴訟(外部との対立)とは異なる特殊な扱いがあります。その1つが(専属)管轄です。
本店所在地の地裁に専属管轄があるのです。この本店とは,形式上の本店(登記上の本店)を意味します。

<会社の組織に関する訴えの専属管轄と『本店』(形式)>

あ 会社の組織に関する訴えの管轄

会社の組織に関する訴え(後記※1)について
本店所在地の地方裁判所を専属管轄とする
※会社法835条1項

い 『本店所在地』の意味

管轄裁判所を形式的,画一的に定めるものである
形式上の本店が基準となる
※上柳克郎ほか『新版注釈会社法(1)』有斐閣1985年p68

なお,会社の外部の者(会社)が相手となるような一般的な訴訟では,営業所を基準として管轄が定まります。
詳しくはこちら|会社の『営業所』が基準となる(『本店』を用いない)いろいろな規定

3 会社の組織に関する訴えの種類(参考)

会社の組織に関する訴え(前記)の内容を紹介しておきます。

<会社の組織に関する訴えの種類(参考・※1)>

会社の設立の無効の訴え
株式の発行の無効の訴え
自己株式の処分の無効の訴え
新株予約権の発行の無効の訴え
株式会社における資本金の額の減少の無効の訴え
会社の組織変更の無効の訴え
会社の吸収or新設合併の無効の訴え
会社の吸収or新設分割の無効の訴え
株式会社の株式交換or株式移転の無効の訴え
株式の発行が存在しないことの確認の訴え
自己株式の処分が存在しないことの確認の訴え
新株予約権の発行が存在しないことの確認の訴え
株主総会等決議の不存在or無効の確認の訴え
株主総会の決議の取消の訴え
持分会社の設立の取消しの訴え
持分会社の設立の取消しの訴え
株式会社の解散の訴え
持分会社の解散の訴え
※会社法834条

4 過去の会社法以外の裁判管轄と『本店』(参考)

以前は,会社法以外でも,非訟事件手続法の旧規定により,一般的な訴訟とは違う扱いがされるものがありました。
この訴訟の管轄は,形式上の本店・実質上の本店のいずれも含まれると解釈されていました。
現在は会社法に規定が統合されていて,非訟事件手続法の規定は削除されています。
参考として一応指摘しました。

5 会社法上の制度と『本店』(形式)

会社法上には,訴訟以外の多くの手続(制度)が規定されています。
これらの中で場所が登場する時は,形式上の本店が使われています。

<会社法上の制度と『本店』(形式)>

あ 株主総会招集地

株式会社について
本店は,総会招集地を定める標準となる
※会社法298条1項1号

い 書類備置の場所

本店は,各種書類・資料(ア〜カ)の備置の場所となる
ア 定款イ 株主総会・取締役会の議事録ウ 株主名簿・端株原簿・実質株主名簿エ 社債原簿オ 計算書類・その付属明細書カ 監査役・会計監査人の監査報告書 ※会社法125条1項,311条1項,318条,442条,684条1項
※株券保管振替法32条1項

う 『本店』の意味

『い』における『本店』は,いずれも形式上の本店の意味である
※大隅健一郎『会社法の諸問題 新版』有信堂高文社1983年p105
※鈴木竹雄『会社の営業所』/『商法研究2』有斐閣1971年p177
※米津昭子『会社の本店所在地の意義』/『私法18号』1957年p45
※上柳克郎ほか『新版注釈会社法(1)』有斐閣1985年p69

6 会社に関する登記と『本店』(形式)

会社に関するいろいろな情報は登記することが義務付けられています。
登記をする登記所(法務局)の管轄については,形式上の本店が基準となります。登記されている本店所在地のことが形式上の本店なので当然ともいえます。

<会社に関する登記と『本店』(形式)>

あ 設立と合併の登記と『本店』

本店所在地における設立登記or合併登記によって効力を生じる
※会社法911条,921条,922条

い 変更登記と『本店』

登記事項に変更を生じたとき
本店・支店所在地で変更登記を要する
※会社法915条1項

う 『本店』の意味

形式上の本店を基準とする
※上柳克郎ほか『新版注釈会社法(1)』有斐閣1985年p68,69

本記事ではいろいろな場面で会社の本店(の場所)が基準として用いられる具体的内容を説明しました。
実際に会社の場所(営業所・本店・支店)が関係する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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