1 『権利』と『財産権』の意味・成立要素・根拠
2 『権利』の一般的な意味
3 『権利』の成立要素の内容
4 『権利』の現代社会における意味(観念)
5 『財産権』の意味と根拠

1 『権利』と『財産権』の意味・成立要素・根拠

私生活や事業・産業の中のいろいろな場面で,権利財産権が登場します。
特に,新しいテクノロジーに関する問題を解決する際に,ストレートに当てはまる法令や判例がないことが多く,そのような時には,権利財産権といった非常に基本的な概念の理解が必要になります。仮想通貨の法的扱いがその典型例の1つです。
本記事では,権利財産権の意味や,どのような状況で成立するのか,また,認められる根拠が何なのか,という法学の一般教養のようなテーマを説明します。

2 『権利』の一般的な意味

権利という言葉は単純すぎて,日常用語としても頻繁に使います。
実は法令の中で明確に定義されているわけではありません。何かを求めることができるというような抽象的な意味としかいいようがありません。

<『権利』の一般的な意味>

あ 権利の一般的な意味

権利とは
相手方(他人)に対して,ある作為・不作為を求めることのできる権能である
権利の意味を一般的に述べることは極めて難しい

い 権利の成立要素

3つの要素(要件・後記※1)によって権利は成立すると考えられる
※高橋和之ほか編『法律学小辞典 第5版』有斐閣2016年p339,340

3 『権利』の成立要素の内容

権利として認められるためには,3つの要件(要素)を満たす必要があります。
ある意味トートロジーになりますが,大雑把にいえば保護されるべき利益権利であり,権利は社会として保護することになる,ということになります。

<『権利』の成立要素の内容>

あ 価値・利益の社会的認識

一定の社会的集団内の構成員にとって,利益あるいは価値と観念される事態の存在
社会的集団とは一般的には国家である

い 第三者による解決の要請・期待

『あ』の利益あるいは価値の配分を巡って紛争が生じた場合には,紛争当事者以外の判定によって紛争が解決されなければならないという社会的要請及び社会的期待の存在
→紛争解決機構は一般的には裁判所である

う 客観的基準による判断が行われる認識

『い』の判定が,正当性を持つ客観的な基準にのっとって行われるという観念の存在
→解決のための基準は一般的には法律である
※高橋和之ほか編『法律学小辞典 第5版』有斐閣2016年p339,340

4 『権利』の現代社会における意味(観念)

法律が整備され,発展している社会では,権利という用語は,少し違った意味(概念)を持っています。
法律によって保護すべき利益権利ということになっています。そして実際にはいろいろな種類の権利を,多くの法律の中で定義して,体系的なルールの中で使っているのです。
根本的には,社会的に認める,つまり正義というニュアンスもありますし,また,現代では法が保護するという意味も持っています。『権利』を意味する外国語に,このような背景が反映されています。

<『権利』の現代社会における意味(観念)>

あ 『権利』の現代社会における意味

権利とは法律によって保護される利益と観念される

い 発展的な意味(法技術概念)

このような観念が成立した以降では,権利は,法律によって保護される利益というにとどまらない
その保護のいろいろな態様を体系的・論理的に説明し処理するための法技術概念として構成されている
この意味での権利は,『ア〜キ』のような分類がなされている
ア 公権・私権
イ 物権・債権
ウ 財産権・身分権
エ 形成権
オ 請求権
カ 実体権
キ 訴権

う 語源との関係(権利と法の関係)

『権利』の語は同時に法や正義を意味している
ラテン語のius
フランス語のdroit
ドイツ語のRecht
※高橋和之ほか編『法律学小辞典 第5版』有斐閣2016年p339,340

5 『財産権』の意味と根拠

多くの種類の権利の中の代表的なものの1つが財産権です。
文字どおり財産(経済的取引の対象)を支配する権利です。日本国憲法の大原則である私有財産制が根拠といえます。
法律上,多くの財産権が規定されています。規定されていない財産については,前記の権利の成立要素によって判断することになります。

<『財産権』の意味と根拠>

あ 財産権の一般的な意味

財産権とは
経済的取引の客体を目的とする権利の総称である

い 財産権の根拠

日本国憲法は,近代憲法の例に倣い,財産権を不可侵の権利として保障する
※憲法29条1項,2項

う 私法における財産権の意味・内容

私法の分類においては,財産権は人格権,身分権に対立する意味で用いられる
一般的には,物権・債権・知的財産権がこれに属する主なものである
※高橋和之ほか編『法律学小辞典 第5版』有斐閣2016年p471

本記事では権利財産権の意味や解釈について説明しました。
この理論は,単独で使うわけではなく,具体的な問題解決のためのツールとして使う理論です。
具体的な問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。