1 MTGOX破産手続におけるおかしな配当
2 ビットコインでの配当の可否
3 ビットコインの売却金額
4 実現しないビットコインでの配当への期待

1 MTGOX破産手続におけるおかしな配当

平成29年12月現在,MTGOX破産手続が進んでいます。
MTGOXにビットコインを預けていた元ユーザーが持つBTC建て債権の評価額よりも,現在のビットコインの評価額の方が大きくなるという状況が生じています。
このまま破産手続が進むと不合理な配当が行われることになります。
詳しくはこちら|MTGOX破産手続におけるビットコイン返還請求権(BTC建て債権)の評価と不合理な配当
一方,破産手続の当初から,ビットコインでの配当の可能性が指摘されていました。
本記事では,破産手続において,ビットコインで債権者への配当を行うことについて説明します。

2 ビットコインでの配当の可否

まず,破産法の規定上,日本円(金銭)以外で配当を行うことを認めるような規定はありません。
ただし,ビットコインで配当をしたのと似ている方法を実現することはできます。
それは,ビットコインを債権者に(任意)売却するというものです。
全体としてみると,債権者がビットコインを受け取ったといえます。
ただし,破産債権との相殺はできず,いったん任意売却をしたビットコインに相当する日本円を代金として管財人に支払う必要があります。一時的に手出しが必要なのです。

<ビットコインでの配当の可否>

あ 日本円以外での配当の可否

破産法上,『配当』を日本円以外で行うことを認める規定はない

い 任意売却の方法(可能)

管財人がビットコインを債権者に任意売却することは可能である

う ビットコインの任意売却の具体的状況

ビットコインを債権者に売却すると
債権者がいったん日本円を手出ししてビットコインを管財人から購入する(代金額については後記※1)
後から債権者は日本円で配当を受ける
→全体としてビットコインの配当を受けたのと同じような状況になる

3 ビットコインの売却金額

前記のビットコインの任意売却をするには,購入者(債権者)が一時的に日本円を手出しする必要があります。
しかし,これよりも大きな問題があります。
任意売却における代金の金額算定です。
売却する時点の評価額(日本円との換算レート)を用いる必要があるのです。
仮に過去のレートと使ったとすると,管財人が,善管注意義務違反として賠償責任を負うことになるでしょう。
また,任意売却の対象財産の評価額が100万円以上であれば裁判所の許可が必要です。現在の価値を下回る金額で売却することは,裁判所が許可しないと思われます。

<ビットコインの売却金額(※1)>

あ 取引一般の原則論

ビットコインの売却価格は売却の時点のものとするのが一般的である

い 過去のレートによる売却

仮に過去のレートであると破産財団が大きく毀損される(損する)
→管財人の善管注意義務違反となる可能性が高い
詳しくはこちら|破産管財人の善管注意義務と義務違反による損害賠償責任

う 裁判所の許可の必要性

現在の評価額(額面のようなもの)が100万円以上であれば裁判所の許可を要する
詳しくはこちら|破産債権の額の評価・確定(金銭化)と配当の順位・平等性
現在の評価額を下回る金額での売却は裁判所が許可しないと思われる

4 実現しないビットコインでの配当への期待

MTGOX破産手続では,管財人が当初よりビットコインでの配当の可能性を指摘していました。
現在,なんでこんなできもしないことを説明したんだ!という疑問(批判)もあるようです。この疑問について考えてみます。
具体的内容は明示されていませんでしたが,管財人は前記のような任意売却のことを想定していたと思われます。
ビットコインの(日本円換算レートの)価値の変動が小さければ,特に問題なく,これが実現できたはずです。
しかし,ビットコインの価値の高騰により,レート基準時の違いによる歪みが大きく現れることになってしまいました。
そこでビットコインの任意売却はできるけど,債権額とのアンバランスが大きく出るので,あまり現実的ではないということになってしまいました。
管財人が,実現しないことを期待させたという指摘もありますが,管財人にとって想定外の値動きが生じたのでしょう。
逆に,管財人は,ビットコインでの配当(任意売却)の可能性を残しておくために,すぐにビットコインを売却(日本円に交換)していなかったのかもしれません。
結果として,高くなった価値を債権者に還元する方法を模索できる状態になっている,ともいえます。
正常な配当(弁済)を実現する方法論については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|MTGOX破産手続の不合理な配当を回避する方法(発想と実現可能性)
なお,原則通り日本円で配当するとしても,配当後に財産が余るという,破産法が想定していないおかしな状況となることに変わりはありません。