1 破産債権の額の評価・確定と配当の順位(破産法の基礎)
2 『破産債権の額』の基本的な決定方法
3 『破産債権の額』の評価を要する債権
4 外国通貨建ての債権の評価方法
5 債権の評価(金銭化)の手続
6 債権額の確定(金銭化)の効力(概要)
7 配当の順位・平等性

1 破産債権の額の評価・確定と配当の順位(破産法の基礎)

破産手続では,破産者の財産を破産管財人が管理します。
各債権者は個別的に回収する(取り立てて返還を受ける)ことはできません。
破産管財人が財産を金銭に換えて,配当として,全債権者に対して弁済するのです。
配当をする金額は,破産債権の額(金額)を元にして配当する順位によって決まります。
本記事では,破産債権の額の決定(評価)と配当の順位について説明します。

2 『破産債権の額』の基本的な決定方法

まず,通常の金銭債権は単純にその金額が破産債権の額となります。
それ以外の債権は,(日本円として)評価することが必要になります。

<『破産債権の額』の基本的な決定方法>

あ 一般的な金銭債権

金額が確定している金銭債権について
→債権額を『破産債権の額』とする
※破産法103条2項2号

い 評価を要する債権

『あ』以外の債権(後記※1)について
破産手続開始時における評価額を『破産債権の額』とする
※破産法103条2項1号

3 『破産債権の額』の評価を要する債権

破産債権の額の評価が必要になる債権(通常の金銭債権以外の債権)の種類をまとめます。
いずれも,単純な金額(日本円)として特定するには評価が必要なのです。

<『破産債権の額』の評価を要する債権(※1)>

あ 非金銭債権

金銭の支払を目的としない債権
※破産法103条2項1号イ
ただし,財産上の請求権に限られる
※破産法103条2条5項
具体例=物の引渡請求権・役務提供債権

い 金額が不確定な金銭債権

※破産法103条2項1号ロ
例=将来の一定時期における収益分配請求債権

う 外国通貨で金額を定めた金銭債権

外国通貨建ての債権のことである(後記※2)
※破産法103条2項1号ロ

え 不確定の定期金債権

金額or存続期間が不確定である定期金債権
※破産法103条2項1号ハ

お 評価の方法(まとめ)

『あ〜え』の債権について
破産手続開始時における評価額を『破産債権の額』とする
※破産法103条2項1号

4 外国通貨建ての債権の評価方法

日本における破産手続では,日本円(日本の通貨)が基準となります。
そこで,外国通貨建ての債権は,日本円に換算することが必要になります。
当然,時期によって為替レートが違います。破産法では破産手続開始決定の時点での為替レートを使うことになっています。

<外国通貨建ての債権の評価方法(※2)>

あ 背景の考え方

破産手続においては,内国通貨により配当が行われる
→外国通貨金銭債権については内国通貨により評価する

い 基準となる時点

破産手続開始時の為替相場に従って評価する
※破産法103条2項1号

う 基準とする為替相場

破産手続開始決定地の為替相場による

え 東京地裁の運用

破産手続開始前日の東京外国為替市場の終値を基準とする
為替レートは,電信為替売相場を基準とする
※東京地裁破産再生部の運用
※山本克己ほか編『新基本法コンメンタール破産法』日本評論社2014年p234

5 債権の評価(金銭化)の手続

以上の説明は,破産債権の額を特定する理論的な方法でした。
実際の破産手続では,債権の評価によって単純な金銭(日本円)として特定する手続が決まっています。
債権届出のとおりに確定することもあります。
一方,破産管財人と債権者で見解に違いが生じた場合は査定手続や異議訴訟という派生的な裁判で破産債権の額を確定することになります。

<債権の評価(金銭化)の手続>

あ 債権届出

破産債権者が自ら債権の評価を行う
(破産手続開始時を基準として評価する)
評価額を債権額として破産債権の届出をする
※破産法111条1項1号

い 債権調査

債権調査期日において
『あ』の評価の当否について調査が行われる
→破産管財人は破産債権の額の認否を行う
※破産法117条1項1号

う 破産債権査定手続

破産管財人が否認したor破産債権者が異議を述べた場合
→破産債権査定続・異議訴訟が行われる
→破産債権の額が確定する
※破産法125条,126条,131条

6 債権額の確定(金銭化)の効力(概要)

以上のような手続で,破産債権の額が確定します。
なお,確定した金額は,破産手続の中だけで使われるという位置づけです。

<債権額の確定(金銭化)の効力(概要)>

あ 金銭化

破産債権確定の効果として
破産債権が金銭化する(日本円建て)

い 相対効

『あ』の効果は破産手続との関係でのみ生じるのが原則である
第三者(保証人など)には金銭化の効力は及ばない
破産手続終了後に破産者に金銭化の効力が及ぶことも及ばないこともある
詳しくはこちら|破産債権の金銭化(日本円評価)の効力が及ぶ範囲(第三者や破産手続外)

7 配当の順位・平等性

以上のように,破産債権の額が確定(日本円として特定)します。
確定した金額を元にして,債権者への配当が行われます。
破産管財人が,配当の内容を配当表としてまとめます。
債権の種類によって,配当の優先順位が決まっています。
実際には多くの債権が一般破産債権となります。
一般破産債権の中の複数の債権は平等に扱われます。
つまり,一定の配当率が算定されて,同一の順位(グループ)内の債権に適用されるのです。

<配当の順位・平等性>

あ 配当の順位

次の順位により配当する
ア 優先的破産債権
イ 一般破産債権
ウ 劣後的破産債権
エ 約定劣後破産債権

い 同一順位間の平等配当

同一順位となる破産債権が複数存在する場合
→債権額の割合に応じて配当が実施される
破産債権者平等が図られている
※破産法194条2項

う 不平等な配当に対する不服申立

破産管財人が『あ・い』に反する不平等な配当表を作成した場合
→破産債権者は配当表に対する異議を申し立てることができる
※破産法200条1項