【広告の表記ミスによりメディアが賠償責任を負うことがある(電話番号ミス事件)】

1 広告の表記ミスによる損害とメディアの責任
2 電話番号の掲載ミス事件(事案)
3 電話番号掲載ミスの過失判断
4 電話番号掲載ミスによる損害賠償の内容

1 広告の表記ミスによる損害とメディアの責任

新聞などのマスメディアには広告が掲載されています。
広告の掲載(記載)内容に単純な誤記(ミス)が生じることもあります。
ミスによって,思わぬ実害が生じるケースもあります。
本記事では,広告のミスによって,購入者や販売者以外の方が被害を受けたケースについて紹介します。

2 電話番号の掲載ミス事件(事案)

本記事で紹介するのは,広告に掲載した電話番号に誤記があったケースです。
まずは,事案の内容をまとめます。

<電話番号の掲載ミス事件(事案)>

あ 電話番号の掲載ミス

タウン誌の広告欄の電話番号の記載が誤っていた

い 実害の発生

Aに間違い電話がひんぱんにかかった
Aは,身体的・精神的に損害を受けた

う 賠償請求

Aは,雑誌を発行した出版社Pと広告業者Sに対して損害賠償を請求した
※大阪高裁平成6年9月30日

3 電話番号掲載ミスの過失判断

まず,掲載ミスが生じた直接の原因は,広告業者(の担当者)の事務的な誤記です。
当然,広告業者には過失が認められます。
次に,出版社は,受け取った広告(原稿)をそのまま掲出しただけです。
スルーしただけなのですが,広告業者に注意を促す義務が認められました。
また,広告のスタイルが,一般の記事と区別がつかなかったことも,出版社の責任を認めることにつながりました。

<電話番号掲載ミスの過失判断>

あ 広告業者Sの過失(肯定)

電話番号の確認を怠った
→過失がある

い 出版社Pの過失(肯定)

掲載する電話番号を確認していない
広告業者に対して電話番号確認の注意を厳重に促すなどの注意義務を履行していない
広告の掲載頁の体裁を他の一般記事と区別がつかない態様としていた
→過失がある
※大阪高裁平成6年9月30日

4 電話番号掲載ミスによる損害賠償の内容

広告の表記ミスについて,広告業者と出版社の両方に過失が認められました。
賠償すべき損害のうち主なものは,間違い電話によって苦痛を受けたという精神的損害です。
これとは別に,弁護士費用のうち一定額も賠償額として認められました。

<電話番号掲載ミスによる損害賠償の内容>

あ 弁護士費用相当額の賠償(肯定)

出版社Pは,当初から責任を否定していた
広告業者Sは,第1審の口頭弁論終結後提出した準備書面で,Aの主張する損害額を否定していた
→訴訟提起,追行に伴う弁護士費用の損害賠償責任を認める

い 賠償すべき損害

ア 精神的損害 20万円イ 弁護士費用 5万円 ※大阪高裁平成6年9月30日

一般的に,不法行為による損害賠償責任では,弁護士費用相当額が賠償すべき損害として認められる傾向があるのです。
詳しくはこちら|損害賠償として弁護士費用を請求することの可否(責任の種類による分類)

本記事では,広告の記載ミスによって第三者に生じた損害についてのメディアの賠償責任について説明しました。
実際には,個別的な事案の中の,多くの細かい事情によってメディアの責任の有無や賠償の内容が判断されます。
実際の問題に直面している方は,本記事の内容だけでは判断せず,弁護士の法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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【広告を掲載するメディアは真実性調査義務を負うことがある(判断基準)】
【広告の掲載を拒否したメディアの違法性=拒否する自由(過激用語伏字事件)】

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