1 宅建取引士の設置場所のルールの要約と具体例
2 2号事務所に該当する主要な要件
3 継続的業務施設の主要な要件
4 宅建取引士設置義務の有無と内容のまとめ
5 契約締結権限者あり×物的施設あり
6 契約締結権限者なし×物的施設あり
7 契約締結権限者・物的施設があいまいになる例
8 レンタルスペースを活用したIT重説の想定
9 判断についての注意と相談の推奨

1 宅建取引士の設置場所のルールの要約と具体例

専任宅地建物取引士の設置義務のある場所のルールは結構複雑です。
まず,『事務所』は設置場所の典型です。
詳しくはこちら|専任宅地建物取引士|基本|設置義務・登録・違反への措置
その『事務所』に該当するかどうかの判断も複雑です。 
詳しくはこちら|宅建業法の『事務所』の概念(定義・解釈)
次に,『事務所』に該当しない場所にも,専任宅建取引士の設置が必要なこともあります。
詳しくはこちら|専任宅地建物取引士の設置が必要な『事務所』以外の場所・施設
このように多くのルールが関係してきます。
そこで,本記事では,宅建取引士の設置場所のルールを一挙に要約します。そして,具体例を使って説明します。
なお,会社の登記の本店・支店は,1号事務所としてそれだけで設置義務ありとなります。
本記事では,本店・支店の登記がなされていない場所という前提で説明します。

2 2号事務所に該当する主要な要件

まず,(2号)『事務所』に該当する要件を簡略化してまとめます。
これに該当するとスタッフの20%は宅建取引士である必要が出てきます。

<2号事務所に該当する主要な要件>

あ 各要件の関係(全体)

『い・う』の両方に該当する場合だけ『事務所』に該当する
→5分の1以上の人数の専任宅地建物取引士の設置義務がある
1つでも回避できれば『事務所』には該当しない

い 事務所としての物的施設(※1)

宅地建物取引業者の営業活動の場所として,継続的に使用することができる
社会通念上事務所として認識される程度の形態を備えている

う 契約締結権限者がいる(※2)

『契約を締結する権限を有する使用人』が置かれている
契約の種類=売買・賃貸契約,媒介・代理契約
契約締結権限者の例=営業所長,店長など

3 継続的業務施設の主要な要件

『事務所』に該当しなくても『継続的業務施設』に該当すると,宅建取引士を1人は設置する必要が出てきます。

<継続的業務施設の主要な要件>

あ 各要件の関係(全体)

『い〜お』のすべてに該当する場合
→専任宅地建物取引士の設置義務がある(継続的業務施設)
設置人数は1人以上で足りる

い 契約締結or申込が行われる

自ら売買・交換の契約or媒介(代理)契約を締結するor申込を受ける場所である

う 事務所としての物的施設

前記※1に対応する

え 契約締結権限者がいない

前記※2に該当しないという意味である

4 宅建取引士設置義務の有無と内容のまとめ

以上のように,事務所としての物的施設の有無と,契約締結権限者の有無によって,大きく整理できます。

<宅建取引士設置義務の有無と内容のまとめ>

物的施設あり 物的施設なし
契約締結権限者あり 20%以上の設置義務(2号事務所) 設置義務なし
契約締結権限者なし 1人以上の設置義務(継続的業務施設) 設置義務なし

5 契約締結権限者あり×物的施設あり

以上のルールの整理をもとにして,具体的なサービスの内容について考えてみます。
まず,契約締結権限者と事務所としての物的施設の両方が確実にありというケースです。

<契約締結権限者あり×物的施設あり>

スタッフが特定の建物でユーザーへのサービス提供を行う
一般的な『事務所』(店舗)である

典型的な2号事務所です。
専任宅建取引士の設置義務があります。

6 契約締結権限者なし×物的施設あり

事務所としての物的施設はあるが,契約締結権限者は置かれていないというケースを想定しましょう。
継続的業務施設として,1人以上の宅建取引士を設置することになるパターンです。

<契約締結権限者なし×物的施設あり>

あ 基本的な環境や機能

小さいスペースを賃借して確保している
ここに,本文とオンラインでつながる機器を設置してある
ユーザーはこの場所で,本部のスタッフとの会話ができる
本部スタッフはユーザーに資料の提示や提供ができる

い 資料の提示と提供の具体的内容

ア 画面への表示
イ プリンタからの印刷
プリンタはあらかじめ現地に置いてある

無人くんのような無人の拠点という想定です。
しかし,結局,専任宅建取引士の設置が必要になる方向性です。
無人施設の運用はできないことになってしまいます。

7 契約締結権限者・物的施設があいまいになる例

以上の想定は準備体操でした。
実際には,新しいテクノロジーによって工夫したサービスがいろいろと考えられます。
すぐに思いつくだけでも,既存の基準だとはっきりと判断できないものがいくつもあります。

<契約締結権限者・物的施設があいまいになる例>

あ 物的施設といえるのかがあいまい

宅建業者が,同じレンタルスペースを毎日のように利用している
ただし実際に使用する部屋(号室)は毎回異なる
宅建業者はレンタルスペース業者に器材(パソコン・タブレット)を預けている
→物的施設に該当するかどうかがはっきりしない

い 契約締結権限者の有無があいまい

レンタルスペースのスタッフAが器材のセッティングなどの作業を行う
Aは,他の多くのレンタルスペースの利用客のサポート作業も行っている
レンタルスペースでは宅建業者から印鑑を預かっている
宅建業者の個別的な指示に従って押印もする

8 レンタルスペースを活用したIT重説の想定

ところで,現在,政府はオンラインでの重要事項説明を促進しています。社会実験として非対面の重要事項説明を解禁しています。
必要なソフトウェア(アプリ)が入った器材が用意されている場所とセットになるとより便利だと思われます。
これをレンタルスペースで実現することを想定してみます。
宅建取引士の設置義務についてははっきりと判断できないでしょう。

<レンタルスペースを活用したIT重説の想定>

あ IT重説本体

本部に宅建主任士がいる
レンタルスペースにユーザーがいる
宅建取引士がユーザーにオンラインで重説を行う(IT重説)
詳しくはこちら|IT重説による非対面の重要事項説明解禁の制度の導入経緯

い 重要事項説明書

宅建主任士がレンタルスペースのプリンターで重要事項説明書を印刷する
重要事項説明書には宅建取引士の記名+押印が必要である
→レンタルスペースのスタッフはこの紙面に押印する作業を行う

9 判断についての注意と相談の推奨

以上の説明は大幅に簡略化したところが多くあります。
こまかい例外的なところは敢えて省略しています。
例えば,継続的業務施設については,契約の締結と申込をしないものであれば該当しません。
いずれにしても,実際のサービスの構築・運用の際には,個別的な法律相談をご利用することを強くお勧めします。