1 学祭でのアイドルグループのダンス→非営利なら適法
2 ピアノの発表会での演奏は適法|楽譜・歌詞の配布は違法
3 図書館での映画(映像)提供→適法|著作権者の利益の制限が心配
4 CD・DVD・Blu-ray Disc自体の譲渡は適法|『ライセンス契約』の場合は違法
5 著作権の保護期間は50年|映画だけ70年に伸長された|ローマの休日事件

創作した楽曲・映画を『再現する』ということは著作権に抵触することがあります。
『再現の方法』は大きく2つに分けられます。
『リアルに再現→ダンス・楽器演奏』と『機械で再現→音楽や映画をAV機器で再生』というものです。
いずれも『演奏権・上演権・上映権』侵害に該当します。
実際には『例外』が広く認められています。
また,古い楽曲・映画も多く『保護期間』も関係してきます。
ここではこれらについて説明します。

1 学祭でのアイドルグループのダンス→非営利なら適法

(1)ダンスパフォーマンスは原則として演奏権侵害となる

AKBなどのグループのコピーとして集団でダンスをする,というイベントはよくあります。
学園祭・忘年会・演芸会などのイベントの一環という位置付けが多いです。
著作権の問題としては『演奏権』侵害の判断ということになります。

<演奏権侵害の内容>

『公衆に直接見せ又は聞かせる目的』で演奏・演奏すること
※著作権法22条

ここで『演奏権侵害』となるのは演奏・上演の対象が『著作物』であることが大前提です。
何が『著作権』で守られているものが何か,を説明します。

<著作権の有無|ダンスパフォーマンス>

あ 楽曲をAV機器で再生すること

作曲者=著作権者の『演奏権』侵害になる
演奏者・レコード会社の『公衆送信権』等の侵害にはならない

い ダンス自体を再現すること=踊ること

ア ダンス・振付が『非常に特徴的』である場合
→『創作性』あり→『著作権』が認められる
→『ダンスの再現』は『演奏権』侵害となる
イ ダンス・振付が,それほど特徴的ではない
『著作権』の対象ではない
→『ダンスの再現』は権利侵害にならない

詳しくはこちら|ダンス自体は『著作物』ではない→『踊ってみた』は適法の傾向

ここまでをまとめます。

<アイドルグループのダンス×著作権|問題点の特定>

ア ダンス(踊り)自体は問題ない傾向にある
イ 楽曲を流すことが演奏権侵害となる

(2)ダンスパフォーマンスは『非営利+無償』→適法となることが多い

ダンスパフォーマンスが『上演権侵害』にならないための,例外規定があります。

<例外|公表された著作物|非営利+無償→適法;38条1項>

あ 『適法』となる要件

ア 公表された著作物の上演・演奏・上映
イ 非営利(営利を目的としない)
ウ 無償(聴衆・観衆から料金を受けない)
エ 演奏者への報酬支払なし

い 典型例

地域の祭りでBGMとして音楽CDを再生する

学園祭などのダンスパフォーマンスは,大部分がこれに該当するでしょう。
ただ,状況によってはストレートに当てはまりません。
順に説明します。

(3)劇団に外注→違法

パフォーマンスを劇団などに『外注』する方法もあります。
この場合『演奏者への報酬支払なし』ではなくなります。
例外規定が適用されません。
つまり,許諾ない限りは上演権侵害となります。
実際には,劇団などのプロは,事前に著作権者の許諾を取ることを前提に受注しています。

(4)学園祭の入場料|通常はパフォーマンスの料金ではない→適法

学園祭自体の入場の際に『入場料』が徴収されていることもあります。
この場合,上演権侵害の例外の要件のうち『非営利』『無償』の要件を満たすかどうかが問題となります。
『ダンスパフォーマンス』鑑賞のためにチケットを購入する,という場合は,『上演の対価』となります。
『非営利』『無償』に該当しません。違法となります。
入場料だけで『ダンス』自体のチケット・料金は不要,という場合は判断が難しくなります。
著作権法上,『料金』(無償の要件)について説明が付されています。

<著作権法38条1項の『料金』に関する規定>

いずれの名義をもつてするかを問わず,著作物の提供又は提示につき受ける対価をいう

結局は『何の対価か』ということを実質的に判断することになります。

<入場料などの料金の対価性×著作権>

あ 判断の方向性
料金の対価性 例外として適法となる可能性
イベント全体に要する経費の填補
イベント実施による『利益』
い 判断要素(事情)

ア 全体のイベントの収支(プラスorマイナス)
イ ダンスパフォーマンス主催者の得る利益の有無
徴収された入場料の一部が分配される+分配金が経費を上回る,など

2 ピアノの発表会での演奏は適法|楽譜・歌詞の配布は違法

(1)著作権の保護期間内であれば『演奏権』『複製権』侵害となる

ピアノの発表会では特定の楽曲が演奏されます。
この楽曲を創作した『作曲家』の『演奏権侵害』が想定されます。
この点,使われる楽曲は『古い』ものも多いです。
著作権の保護期間『外』であれば,当然,著作権侵害ということは生じません。

<著作権の保護期間>

開始時点 創作の時
終了時点 著作者の死後50年経過するまで
※著作権法51条

保護期間内にピアノの発表会を行う,という前提で説明を続けます。

<ピアノの発表会×著作権>

演奏 『演奏権』侵害 著作権法22条
楽譜・歌詞の配布 『複製権』侵害 著作権法21条

このように『演奏』と『楽譜等の配布』は,原則としては著作権侵害になります。

(2)演奏|非営利+無償→例外的に適法

『演奏』については,『非営利+無償』の場合は広範に当てはまる例外規定があります。

<例外|公表された著作物|非営利+無償→適法;38条1項>

あ 『適法』となる要件

ア 公表された著作物の上演・演奏・上映
イ 非営利(営利を目的としない)
ウ 無償(聴衆・観衆から料金を受けない)
エ 演奏者への報酬支払なし

この点『非営利・無償』という要件については注意が必要です。
例えば,ピアノ教室自体は『営利』で行なわれているのが通常です。
しかし『発表会で大量動員してチケット売り上げを獲得する』という目的はないはずです。
つまり『発表会自体は利益目的ではない・入場料もない』という事情である限り,上記例外に該当し,適法となります。
入場料の徴収があったとしても,会場の設営(場所を借りる料金)の範囲内であれば『料金』としては扱われません(上記『1』)。

(3)楽譜・歌詞の複製|『学校』以外は違法

楽譜・歌詞のコピーを作った時点で『複製権侵害』に該当します。
『非営利+無償』の例外規定は『上演・演奏・上映』のみで『複製』には適用されません(著作権法38条)。
次に『複製』の例外として『私的複製』という規定があります。
この点,発表会の来場者に配布する,という前提ですから『個人的・家族の範囲』ではありません。
『私的複製』にも該当しません。
ただし,主催者が『学校』であれば複製が許されます(著作権法35条)。
私立でも『学校法人』であれば該当します。
逆に,民間のピアノ教室,という場合は『学校』に該当しません。
楽譜のコピーは許諾を取らないと複製権侵害となってしまいます。

3 図書館での映画(映像)提供→適法|著作権者の利益の制限が心配

図書館ではDVD・Blu-ray Discなどの映画を観るブースが設置されていることが多いです。
『著作物』の『上映』なので,一般的には上映権侵害となります(著作権法22条の2)。
この点,図書館での『映画再生』は,一般的な著作物の例外規定に該当します。

<例外|公表された著作物|非営利+無償→適法;38条1項>

あ 『適法』となる要件

ア 公表された著作物の上演・演奏・上映
イ 非営利(営利を目的としない)
ウ 無償(聴衆・観衆から料金を受けない)
エ 演奏者への報酬支払なし

まさに図書館での『映画鑑賞ブース』での再生はこれにあたります。
地域の子供を始めとする住人への公的サービスとして有意義,という背景があります。
しかし,創作者の立場からは『利益が制限』されている状態です。
今後は,適切な『課金』システムが普及することが期待されます。
法律というよりもテクノロジーで効率的な室テムが実現されるのではないでしょうか。
YouTubeのContent IDシステムが大きなヒントになっています。
詳しくはこちら|YouTube|Content_IDシステム

4 CD・DVD・Blu-ray Disc自体の譲渡は適法|『ライセンス契約』の場合は違法

(1)媒体(CD・DVD・Blu-ray Disc)の譲渡は適法|譲渡権消尽

音楽や映画がCD・DVD・Blu-ray Discに入った状態で販売されています。
現在では,インターネット回線の高度化→オンライン『配信』が普及しています。
将来は『物理的媒体』に入れた状態での販売は『過去のもの』・骨董品となることでしょう。
これらの媒体に入っている楽曲・映画については『著作物』として多くの保護があります(前述)。
この点『ディスク自体を第三者に売却・譲渡する』ということは,著作権法上独特の扱いとなります。

<譲渡権の内容>

著作物を譲渡して公衆に提供すること
※著作権法26条の2第1項

これを形式的にあてはめると『DVDを知人にあげる・売る』ということは『譲渡権侵害』となります。
しかし『譲渡権』には大きな例外があるのです。

<譲渡権の『消尽』>

あ 譲渡権の『消尽』の内容

次の『譲渡』は適法である
ア 『著作物の複製物』を譲り受けた
イ これを第三者に『譲渡』した

い 『消尽』のネーミング

『1度譲渡すると権利が消える』という現象→『消尽』と呼ばれる
※著作権法26条の2第2項1号

例えば,観終わった映画のDVDを友人にあげる,ということは適法となります。

(2)『譲渡されていない』場合は『譲渡権の消尽』は適用されない

『譲渡権の消尽』によって『譲渡OK』となるのは『元々譲渡によって入手した』場合です。
間違えやすいのは『譲渡ではない形で入手した』場合です。

<譲渡権の消尽が適用されない場合>

あ 『消尽』が適用されない場合

(著作物の複製物を)『譲渡』によって入手していない場合

い 具体例

パッケージソフトウェアで『使用許諾』(ライセンス付与)の形態となっている場合
→『ソフトウェアの入ったディスクの譲渡』が許容されていない

このように『販売』『入手』の方式・形態によって法的な扱いが違うのです。
原則的にPCのパッケージソフトは『譲渡』ではなく『ライセンス付与』の方式となっています。
パッケージの表面に記載されています。
購入者はこれを理解・了解して購入した→『ライセンス契約成立』と考えられるのです。
『譲渡権の消尽』は適用されません。
知人にパッケージソフト(ディスク)をあげてしまうと『譲渡権侵害』となります。

 

5 著作権の保護期間は50年|映画だけ70年に伸長された|ローマの休日事件

(1)著作権の保護期間が著作権法で設定されている

著作物を利用するシーンは非常に幅広いです。
音楽・映画については『古い』ものも,永く鑑賞されています。
著作権に対する考え方として『強化し過ぎる』→文化の振興にブレーキとなる,という配慮があります。
この反映として『保護期間』を限定・設定する,ということになっています。

<著作権の保護期間|まとめ>

あ 著作権の保護期間|まとめ
著作物の種類 スタート時点 終了時点 著作権法
一般的規定 創作時 著作者の死後50年経過時点 51条
創作者不明;『無名著作物』 創作時 公表から50年経過時点 52条1項
法人・団体が創作者 創作時 公表から50年経過時点 53条1項
映画 創作時 公表から70年経過時点 54条1項
い 『終了時点』の『端数繰り下げ』

正確には一定の期間が経過した時点の『年末』が終了時点となる
法律上は『起算点』が規定されているが結論は↑となる
※著作権法57条

(2)平成16年法改正による映画の保護期間伸長|接着理論を否定する判例

映画の著作物の保護期間は,平成16年の法改正で『伸長』されました。
ただし,安定性を考えて経過措置のルールも作られました。

<映画の著作物の保護期間伸長>

あ 改正法施行日

平成16年1月1日
※平成15年改正附則1条

い 改正(変更)内容

映画の著作物について『50年』→『70年』
つまり,20年伸長された
※著作権法54条1項

う 経過措置

改正前の著作権法による著作権が消滅している映画の著作物については適用しない(延長しない)
つまり『消滅の後の復活』はない,という趣旨である
※平成15年改正附則2条

ここまではあまり変わったところはない,自然なルール変更です。
しかし,解釈の対立が生じ,裁判所が判断することになったのです。

<ローマの休日事件|東京地裁平成18年7月11日(仮処分)>

あ 事案

ローマの休日の公開時は1953年であった
→旧規定による保護期間満了時=50年経過時
→2003年の『年末』

い 見解(主張)の対立

ア 販売業者の主張
平成16年(2004年)1月1日の時点では『消滅』している
→『復活』しない=著作権は消滅したまま
イ 映画会社(パラマウント)の主張
2003年の『年末』と2004年1月1日は『接着』している
例外的に『消滅』は適用されないと考えるべきだ
著作権法改正に係る国会答弁では『延長される(接着理論肯定)』という趣旨の議員のコメントがあった

う 結論

著作権は消滅している
理由=『接着理論』を否定した
その後,パラマウント側は抗告したが,抗告審において取り下げた→手続終了

『接着理論』自体がちょっと無理のある考え方です。
仮にこのような理論が適用されるならば,法改正時に法律(附則)で明確に規定すべきものです。
逆に言えば,明確な規定がない場合はこのような理論を否定する方が安定的であり解釈として妥当でしょう。