1 テレビ番組を『店内等で流す(見せる)』→原則として著作権法違反
2 テレビ番組を『店内等で流す(見せる)』→広い例外=適法化
3 テレビ番組を第三者に見せること×適法性|まとめ
4 CDの音楽を『店内でBGMとして流す』×著作権
5 有線放送やFM放送を『店内でBGMとして流す』×著作権
6 CD・DVDを使ったカラオケ→顧客が自由に使用できる→『間接侵害』

1 テレビ番組を『店内等で流す(見せる)』→原則として著作権法違反

動画をテレビ受像機で観る,というテクノロジーは今となってはレガシーなカテゴリとなってきました。
テクノロジーとしては古いのですが,法的な扱いは複雑です。
テレビ受像機の所有者が『番組を観る』という原則形態を離れた『方式』について説明します。
まずは著作権法上の扱いの基本をまとめます。

<テレビ番組についての著作権の基本>

主体 権利の分類 権利 著作権法
番組内容の創作者 著作権 公衆送信権 23条
放送事業者 著作隣接権 放送権 99条の2
実演家 著作隣接権 放送権 92条

<『放送権』>

『放送する』権利
『公衆送信権』の1つとして分類される
『実演家の放送権』は,放送事業者に『再度の許諾する権利』はない
→いったん許諾するとその後は行使できない

各主体が『公衆送信権』や『放送権』を持ちます。
これらの権利の基本的な内容=禁止される行為,をまとめます。

<テレビ番組の公衆送信権・放送権の基本的内容>

あ 通常の『観る』

テレビ受像機所持者がテレビを見る(受信する)こと→適法

い 『公衆送信権』『放送権』侵害の典型

テレビ受像機所持者が,第三者に『見せる』
→『公衆』に見せた場合→『公衆送信権(放送権)侵害』

このように『テレビ番組を第三者に見せる』は,原則論としては『著作権法違反』となります。
しかし,著作権法上『例外』がいくつか用意されています。

2 テレビ番組を『店内等で流す(見せる)』→広い例外=適法化

(1)テレビ番組を第三者に見せることの『適法化』|例外規定

『テレビ受像機所持者だけしか見てはいけない』だと常識的に不合理なことになります。
そこで,テレビ番組を『第三者に見せる』ということは実は広く例外が認められています。

<例外1|非営利+無償→適法;38条3項第1文>

あ 『適法』となる要件

ア 放送される著作物
イ 非営利(営利を目的としない)
ウ 無償(聴衆・観衆から料金を受けない)

い 『非営利』の判断の注意点

『受信した映像を顧客に見せる』ことに対する『利益』がないという場合

う 典型例

ア 友人が集まり,そのうち1名の自宅でテレビ番組を観る
イ 家電量販店のテレビ受像機売り場でテレビ番組を流す
→店舗は商品販売の利益を得るが『テレビ番組を見せた』対価とは言えない
ウ 学校の授業(行事)として教室や体育館で多くの生徒がテレビ番組を観る
エ 地域住民が町内会のイベントの一環として公民館でテレビ番組を観る

<例外2|家庭用受像機→適法;38条3項第2文>

あ 『適法』となる要件

ア 放送される著作物
イ 通常の家庭用受信装置を用いる

い 注意

『非営利』『無償』という要件は不要となる

う 典型例

飲食店で顧客にテレビ番組を提供する(見せる)
具体例;スポーツバー・定食屋・電車やタクシーの車内・深夜の警察署

以上のように,日常生活における多くのシーンが『適法』とされます。
むしろ,これらの『例外』のさらに『例外』,つまり『違法となる』場合の方が要注意です。

(2)テレビ番組を第三者に見せることが『違法』になる場合|例外の例外

<例外の例外|プロジェクター・大型モニター→違法;100条>

あ 『違法』となる要件

『影像を拡大する特別の装置を用いてその放送を公に伝達する』場合

い 具体的な基準の目安

ア プロジェクターを使用する場合
イ 55インチ以上のモニターを使用する場合

『影像を拡大する特別の装置』を用いて伝達する権利は放送事業者に『専有』します。
そのため,38条の例外に該当したとしても『適法』にはなりません。
ここで『特別な装置』について,具体的な基準は定められていません。
参考として,米国連邦著作権法110条第5項は『55インチ』以上を違法としています。
これは,(日本の)著作権法100条の解釈でも目安となりましょう。

3 テレビ番組を第三者に見せること×適法性|まとめ

<テレビ番組を流す×著作権|まとめ>

あ 『家庭用受信装置』の使用

適法;38条3項第2文

い 『家庭用受信装置』ではない+『影像を拡大しない』

無料+非営利であれば適法;38条3項第1文

う 『影像を拡大する特別の装置』

違法(放送事業者の許諾が必要);100条

4 CDの音楽を『店内でBGMとして流す』×著作権

(1)創作者の『演奏権』をクリアする必要がある

カフェ・レストランの店内に『音楽(BGM)』は必須でしょう。
CDの音楽を流す,という発想もあります。
これについて著作権の問題を説明します。
創作された楽曲は『著作物』です。
これを,楽器で演奏,AV機器で再生することは『演奏権侵害』となります(著作権法22条)。

(2)歌手・演奏者・レコード会社の『著作者隣接権』は抵触しない

CDの音楽の演奏者・制作者には『著作隣接権』がありますが『著作権』とは別のものです。

<演奏者・CD制作者の権利>

あ 著作権法上の扱い

歌手・レコード制作者=『実演家』

い 『実演家』の権利

ア 認められる権利
『公衆送信権』→楽曲をインターネット上で広く『聴ける』ようにすることを禁止する
イ 認められない権利
『演奏権』など

このように,CDを店内でBGMとして再生する,という場合,歌手・レコード会社などの権利とは抵触しません。
結局,『創作者=著作者』の著作権をクリアすれば良い,ということになります。

(3)著作権の保護期間

ところで,音楽については『古い』ものが多く存在します。
著作権には『保護期間』のルールがあります。

<著作権の保護期間>

開始時点 創作の時
終了時点 著作者の死後50年経過するまで

※著作権法51条

これは著作権=創作者の権利,の保護期間です。
要するに作曲者です。
CDの音楽の演奏・収録の時期,は関係ありません。
この保護期間が経過した後の楽曲については『演奏権侵害』は生じません。
以下,保護期間内の楽曲を再生したことを前提に説明を続けます。

(4)『非営利・無料』の例外のみ→飲食店はNG

ちょっと間違えやすいのですが『CDの音楽(BGM)』と『テレビ番組を流す』は著作権法の扱いが違います。
テレビ番組,については『家庭用受信装置』を使うと『営利』=飲食店でも『適法』になります(著作権法38条3項)。
しかし,これは『放送』だけに適用されるルールです。
『CDの音楽』については,一般的な『著作物』としての例外規定があります(著作権法38条1項)。

<例外|公表された著作物|非営利+無償→適法;38条1項>

あ 『適法』となる要件

ア 公表された著作物
イ 非営利(営利を目的としない)
ウ 無償(聴衆・観衆から料金を受けない)
エ 演奏者への報酬支払なし(※CDの音楽再生では該当しない)

い 典型例

地域の祭りでBGMとして音楽CDを再生する

レストランでは『ピアノなどの楽器生演奏』に対応するカバーチャージ(席料)が設定されていることもあります。
この場合は『無償』ではありません。
では,『CDの音楽のBGM』では『対価なし』と言えるのでしょうか。
確かに,『BGMに対する』対価は設定されていません。
しかし,カフェ・レストランの顧客が得るサービスは『体験』です。
『体験』の中に『BGM・眺望・インテリアの雰囲気・料理・飲み物が含まれる』と考えられます。
要するに『BGM』は割合はともかく『顧客の支払う料金の対価の一部』となるのです。
そこで『無償』に該当しません。
結局,この『例外』にあたりません。
つまり『演奏権侵害』ということです。

(5)平成11年までは『適法』だった|浦島現象に注意

以上の著作権法のルールについて,誤解が多く見受けられます。
というのは,過去に『適法だった時期』があるからです。
意図しない『著作権法違反』にならないよう,しっかりと理解することが必要です。

<音楽CDを店舗で流すこと×法改正>

あ 平成11年の法改正前の規定

適法に製作されたCDやレコードを流す(演奏する)こと
→営利も含めて適法だった
※改正前附則14条

い 現行法

現在は上記規定は廃止されている

5 有線放送やFM放送を『店内でBGMとして流す』×著作権

(1)有線放送・FM放送をBGMにすることは原則適法

店舗で音楽CDを流すことは基本的に『違法』です(前述)。
この点,有線放送・FM放送では『適法』になります。
間違えやすいところです。

<有線放送・FM放送を店内で流す×著作権>

あ 原則

ア 公衆送信権侵害となる
著作権者・著作隣接権者のいずれもが公衆送信権(放送権・有線放送権を含む)を有している

い 『家庭用受信装置』に関する例外

『家庭用受信装置』で受信→適法
営利の使用も含む
※著作権法38条3項

『家庭用受信装置』の使用による例外=適法,というルールが広く適用されます。
これはテレビ番組を流す,というケースとまったく同様です(前述)。

(2)有線放送やFM放送を『録音したもの』を流すことは違法

以上はあくまでも放送されている音楽を『そのまま・リアルタイム』で流す,という前提です。
いったん録音して編集したり,再生タイミングを操作する,ということが介在するとまったく違う扱いとなります。

<HDD,CDその他の記憶媒体に録音した音楽を流す×著作権>

あ 権利侵害

ア 著作権者の複製権侵害;21条,96条,98条
イ 実演家の録音権侵害;91条

い 例外で救済されない

私的複製(30条)には該当しない

このように,著作権法違反となります。

6 CD・DVDを使ったカラオケ→顧客が自由に使用できる→『間接侵害』

(1)原則論=演奏権侵害

CDやDVDの音楽を店内で流す,ことは原則的に違法となります(前述)。
ですから,CDやDVDを許諾なく『店舗でカラオケとして使用』することも当然違法です。
この点『店舗側は再生機器を店内に置いておくだけ+顧客が自由にこれを使用』というちょっと特殊なケースについての判例があります。
なお,平成11年の著作権法改正前はCDのBGMは『適法』でした(前述)。
現行法とは異なります。
しかし,この判例では非営利の例外(著作権法38条)の解釈が判断されています。
現在でも関係ある(再現性ある)解釈論です。

<店舗でのCD・DVDの音楽使用が違法となる場合>

あ 特殊な使用方法

レストラン・バーでCD・DVDをカラオケとして流す(使用する)

店舗側 室内に再生機器を設置した+顧客の使用を制限しないだけ
顧客 自由に室内に準備された再生機器を使用できる
い 原則論

『演奏権(上演権)侵害』に該当する(著作権法22条)

(2)最高裁の判断=違法|主体は『店舗側』である

以上の原則論に対する『例外』規定の適用が問題となりました。

<例外|公表された著作物|非営利+無償→適法;38条1項>

あ 『適法』となる要件

ア 公表された著作物
イ 非営利(営利を目的としない)
ウ 無償(聴衆・観衆から料金を受けない)
エ 演奏者への報酬支払なし(※CDの音楽再生では該当しない)

い 『カラオケとしての使用』に関する店舗側の主張=『適法』

顧客がすべての操作・歌唱をしている→上記要件(非営利)に該当する

う 裁判所の判断

『顧客の歌唱』→その主体は『店舗側にある』→演奏権侵害(間接侵害)
『店舗側の行為』なので『非営利』の規定(38条)の適用はない
※最高裁昭和63年3月15日