1 『著作物』の投稿・アップロード→『公衆送信権』『複製権』侵害
2 公表→閲覧者が特定・少数→『公衆送信権』『複製権』侵害にはならない
3 『私的複製』は『家族』か『閉鎖グループ』の範囲内|LINEのトークに注意
4 同一SNSでの投稿(使用)は適法
5 URLの貼り付けは適法|『複製』ではない
6 テレビ番組の録画×送信→原則的に適法|ロケーションフリーテレビ
7 ロケーションフリーテレビ|装置を第三者が設置・管理→違法となることもある
8 ロケーションフリーテレビ|総務省の『ゴーサイン』でリスタート|平成25年6月

1 『著作物』の投稿・アップロード→『公衆送信権』『複製権』侵害

(1)コンテンツの『投稿・アップロード』の具体例

インターネットの普及により,著作権侵害となっているものをよくみかけます。
投稿サイトやSNSで『公表』するという場面について,著作権上の問題を説明します。
なお,『著作権以外』の問題や『閲覧・ダウンロード・保存』については別に説明しています。
詳しくはこちら|プライバシー権のまとめ|判例の基準|定義の発展
詳しくはこちら|インターネットの写真・動画の閲覧×著作権|保存・ダウンロード・ストリーミング
まずは『投稿』や『アップロード』の具体例からまとめます。

<著作物の『投稿』『アップロード』|具体例>

・動画サイト(YouTube)に『テレビ番組』をアップロードする
・『インターネット上の文章・写真』を(いったんダウンロードして)SNSに投稿する

(2)投稿・アップロード→『公衆送信権』侵害

以上の方法で『公表』することについて,著作権として問題となることをまとめます。

<著作物(コンテンツ)の投稿・アップロード×『公衆送信権』|基本>

あ 基本的な法的構造

『自動公衆送信』が可能な状態になる

い 著作権法の抵触
コンテンツの種類 権利者 著作権(侵害) 根拠(著作権法)
著作物一般 著作権者(創作者) 公衆送信権(送信可能化権)侵害 23条1項
テレビ番組 放送事業者(テレビ局) 送信可能化権侵害 99条の2

YouTubeやSNSに投稿した動画・画像・文章は『誰でも見られる』状態になります。
『不特定多数』の者が『閲覧できる状態』です。
このようなサイトやアプリの機能を正確に言うと『ユーザー(閲覧者)がアクセスするとコンテンツをユーザーに送信する』というものです。
単純に『送信する』ではなく,『一定の操作があれば送信する状態』というものです。
著作権法上『自動公衆送信』ができる状態,と言えます。
これは『公衆送信権』『送信可能化権』に該当します。
『自動公衆送信』できる,という状態を整理すると次の2つに分けられます。

<『公衆送信権侵害』の種類を分類>

あ 投稿サイトに『アップロード』『投稿』する行為

YouTube・ニコニコ動画,その他投稿サイト

い P2Pでのインターネットへの『接続』行為

Winny・WinMX

(3)投稿・アップロード→『複製権』侵害

また,アップロード先のサーバーに『コンテンツが保管』されます。
『複数化』→『再製』と言えます。
そうすると『複製権侵害』にもあたります。

2 公表→閲覧者が特定・少数→『公衆送信権』『複製権』侵害にはならない

投稿・アップロードが著作権侵害となるのは『閲覧可能な範囲が不特定多数』ということが前提です。
『公衆』が対象である場合に『公衆送信権侵害』となるのです。
逆に言えば,特定・少人数の範囲内だけが閲覧できる状態,であれば『公衆』対象ではありません。
『公衆送信権侵害』『送信可能化権侵害』にはなりません。

<『公衆』対象ではない→『公衆送信権侵害』にならない例>

あ 本人だけが閲覧可能

例;クラウド・ストレージへのアップロード

い 特定・少人数だけが閲覧可能

《例》
ア SNSなどの『非公開グループ』コミュニケーション
イ クラウド・ストレージで『少人数限定の閲覧権限設定』
『パスワード管理』が不十分→漏洩→多数が閲覧,となると『公衆』に該当するリスクがある

投稿・アップロードは『公衆送信権侵害』となると同時に『複製権侵害』にも該当します。
『複製権侵害』には重大な『例外』があります。
これについて次に説明します。

3 『私的複製』は『家族』か『閉鎖グループ』の範囲内|LINEのトークに注意

『公衆送信権侵害』の判断で重要なのは『公衆』というところでした。
一方,『複製権侵害』としては『閲覧できる人数』は原則として関係ありません。
しかし『私的複製』として適法とされるルールがあります。
『私的複製』の判断において,『閲覧できる人数』が関係してきます。

<『私的複製』=適法,の『目的』の範囲>

個人的にor家庭内その他これに準ずる限られた範囲内における使用

一般的な解釈では『4〜5人』の範囲内とされています。
次のような場合,閉鎖的ではあっても,そのメンバー(閲覧する人)の人数・関係性で判断が違ってきます。

<『私的使用目的』の判断の具体例>

コンテンツ使用の具体的方法 適法性
twitter・ブログ(誰でも見られる)に投稿した
『少人数のLINEのトーク(グループ)』に投稿した
友人1人に送った(LINEのトーク・メールに投稿した)

いずれにしても,判断が曖昧なゾーンがあるのです。
詳しくはこちら|個人的にor家庭内その他これに準ずる限られた範囲内における使用

以上のように『公衆送信権』における『公衆』や,『複製権』における『私的複製』の判断で適法性が決まるのです。
また,以上とは別の理論で,適法性が決まることもあります。
次に説明します。

4 同一SNSでの投稿(使用)は適法

例えばtwitterにおける『非公式リツイート』が分かりやすい例です。
他のユーザーの投稿内容をそのまま『別の投稿』にするという仕組みです。
コンテンツが『新たに誕生(複数化)した』と言えるので『複製』『公衆送信』に該当します。
少人数どころか『大多数の人が見られる状態』です。
『私的使用目的』ではありません。
『私的複製』に該当しません。
しかしtwitterでは利用規約上このような使用方法が規定されています。
元の投稿をしたユーザーは,リツイートのような『使われ方』を想定しています。
一般的には,元の投稿ユーザーが許容・許諾している,と解釈されています。
詳しくはこちら|投稿サイト・SNSの利用規約|広い『ライセンス』付与|非公開グループ情報の漏洩

5 URLの貼り付けは適法|『複製』ではない

例えば,面白い記事(文章)や写真・映像をネット上で見つけて,ネット上で他の人に知らせたいことがあります。
このようなコンテンツを,いったんダウンロード(保存)して,新たに投稿する,という場合は『私的複製』に当たらない限り複製権侵害となります。
しかし『見せたいコンテンツのURLを投稿(貼り付け)する』という場合はまったく違う法的性格になります。
基本的に『複製』には該当しません。
SNSによっては『URLの貼り付け』と同様の仕組みを標準機能として持っているものもあります。

<『複製』ではない例>

ア URLの投稿(貼り付け)
イ twitterの『公式リツイート』
ウ Facebookの『シェア』

詳しくはこちら|『外部サイト情報表示』×著作権|フレームリンク・キュレーションアプリ

6 テレビ番組の録画×送信→原則的に適法|ロケーションフリーテレビ

ITの分野では,日々,新たなテクノロジーが開発されています。
著作物のダウンロード・アップロードに関するものとして『ロケーションフリーテレビ』の問題があります。

<ロケーションフリーテレビ|仕組み>

あ 目的

テレビ番組をいつでも・どこでも観たい

い 仕組み

ア ユーザーがテレビ番組をインターネット上のサーバーに『録画』する
イ ユーザーがこの番組を外部からインターネット経由でアクセスし『閲覧』する
PCやスマートフォン上で閲覧する

仕組み自体は非常に素晴らしいものです。
ただ,著作権法の問題があります。
『仕組み』が複雑なので単純なものから順に説明します。

<テレビ番組をHDD・DVDに録画|一般的方法>

自宅でテレビ番組を録画する(HDDやDVD)
→『私的複製』として適法

<テレビ番組をインターネット上のサーバーに録画>

あ 多数の人が閲覧可能な場合

公衆送信権侵害になる
複製権侵害になる
(上記『3』)

い ユーザー(+家族)だけが閲覧可能な場合

『公衆』ではない→『公衆送信権侵害』にならない
『複製』ではあるが『私的複製』に該当する→『複製権侵害』にならない
(上記『2』)

結局,IDやパスワードで,『ユーザー(その家族)だけが閲覧できる』というアクセス制限がしっかりしていれば,著作権法違反にはならないのです。
しかし,現実にはもうちょっと複雑です。

7 ロケーションフリーテレビ|装置を第三者が設置・管理→違法となることもある

(1)ロケーションフリーテレビに関する判例

ロケーションフリーテレビの『仕組み』に『業者(第三者)』が関わっている程度によっては『私的』の範囲『外』と認定されるリスクがあるのです。
これについては複数の判例で判断が示されています。
順に紹介します。

<録画ネット事件|知財高裁平成17年11月15日|違法

あ 事案

『装置をユーザーが購入』した
『現実の引渡なし+契約終了時に管理会社が装置を買い取る』方式であった

い 裁判所の評価

『装置管理業者の支配下・管理下』と言える
『装置管理業者の所有』に近い

複製が『私的』ではない

う 結論

違法(複製権侵害)

<まねきTV事件|東京地裁平成18年8月4日|適法

あ 事案

第三者(業者)が装置を設置・管理した場合
『装置(ベースステーション)をユーザーが購入→管理業者に送付』

い 裁判所の評価

ユーザー自身の支配下・管理下にある

『公衆』の閲覧が可能ではない
『私的複製』に該当する

う 結論

適法

(2)ロケーションフリーテレビの適法な運営

以上の判例の判断を前提にして,適法な運営方法をまとめます。

<ロケーションフリーテレビの適法な運営>

あ 実質的な管理・支配を『ユーザー』が行う

装置を物理的に『いったんユーザー自身が受け取る』
その後ユーザーが管理業者に,物理的に『発送』する

い アクセス制限の徹底

パスワード管理を徹底し,ユーザー以外の閲覧を未然に防止する

(3)テレビ局の『ネット化』が望まれる

このようになりますが,本質的に『どんな被害・迷惑を避けようとしているのか』がよく分かりません。
テレビ番組の提供方法としても,積極的にインターネット上で流通・消費する方式の方が望ましいと思われます。
このような好ましい方法を阻害しているのは『既存生態系』,いわゆる『しがらみ』です。
後発事業者=ベンチャーが有利になる『スリップストリーム』とも言える現象です。
既存・新規事業者の適正な競争により,サービスの向上が進むことが期待されます。

8 ロケーションフリーテレビ|総務省の『ゴーサイン』でリスタート|平成25年6月

ロケーションフリーの仕組みについて,判例の判断は出ていましたが『不明瞭』に変わりはありませんでした。
そこで,適法性の要求水準が高い大手企業は関連する機器・サービスの新たな提供を中止していました。
このような状況は要するに『ルール不備が産業発展にブレーキ』ということになっていました。
そこで司法・立法ではなく,スピードの点で優れている行政が動きました。

<総務省による『放送サービス高度化』促進への動き>

あ 総務省が『放送サービスの高度化に関する検討会』を開催

平成24年11月6日に総務省が開催した

い 目的

通信・放送サービスを取り巻く環境変化に対応した高度な放送サービスの早期普及を図る

う 検討分野

ア 4K・8K(スーパーハイビジョン)
イ スマートテレビ
ウ ケーブル・プラットフォーム

この3分野のうち『スマートテレビ』には『ロケーションフリーテレビ』のテクノロジーも含まれています。

<スマートテレビに関する検討結果>

あ 『普及の必要性』を指摘
い 普及に向けた取り組みの促進→具体化

開発・実装の体制・スケジュールを提示

このように,実質的に『公的なゴーサイン』が出たわけです。
そこで家電メーカーはロケーションフリーテレビの開発・販売を再開しています。
外部サイト|総務省|『放送サービスの高度化に関する検討会 検討結果取りまとめ』の公表