1 『私的使用のための複製』の要件|『利用制限の例外』
2 私的使用のための複製|『私的使用が目的』
3 私的使用のための複製|『使用する者が複製する』
4 私的複製の例外|ダビング業者
5 私的複製の例外|技術的保護手段の回避|プロテクト外し
6 私的複製の例外|違法にアップロードされたことを知っていた場合
7 私的複製→補償金支払いが必要|補償金制度
8 書籍のデータ化業者=『自炊代行』が『違法』となった判例|平成26年10月
9 『自炊』を排除する方向性は合理性なし|法整備の方向性

1 『私的使用のための複製』の要件|『利用制限の例外』

『複製』等を行っても,『利用制限の例外』に該当すると,『著作権侵害』にはなりません。
『利用制限の例外』の中で『私的使用のための複製』があります。
『私的複製』と呼ばれることもあります。

<『私的複製』|発想>

あ 買ったCDの音楽をiPhoneに入れて外で聞きたい
い スマホで見つけた『猫の写真』がかわいいから『保存する』の操作をした

昔はCDを買って,アナログテープやMDに移して(録音して)WALKMANで外で聴く,というスタイルが普及していたものです。
それが現在では,録音の媒体はコンパクトなガジェットに変わりました。
MP3プレイヤー→スマホ,と主役は代々変わってきています。
さらに,音楽を入手する媒体も,アナログレコード→CD→オンラインでのダウンロード(iTunes Store)とテクノロジーの波を受け続けています。
さて,このように『自分で買った音楽を別の記憶媒体に移す』ということは日常風景となっています。
ここで,法的に分析すると,これも『著作物』の『複製』です。
スマートフォンにおける画像等の『保存する』の操作も同じです。
形式的に『著作権侵害』に該当する行為です。
もちろん,結論としては『合法』です。
『合法』とするためのルールがあるのです。

<私的使用のための複製=『合法』の要件|『利用制限の例外』>

あ 私的使用が目的

私的使用=個人的にor家庭内その他これに準ずる限られた範囲内における使用

い 使用する者が『複製』する
う 『例外の例外』に該当しない(※1)

※著作権法30条

『私的使用のための複製』に該当すると,『本来違法である複製』が『適法』となります。
上記の各要件について説明します。

2 私的使用のための複製|『私的使用が目的』

<『私的使用が目的』(上記『あ』)>

あ 『私的使用』の定義

個人的にor家庭内その他これに準ずる限られた範囲内における使用
ア 『個人的』→仕事・業務とは関係ない
『企業内』は規模が小さい会社でも該当しません(=違法)
※東京地裁昭和52年7月22日;舞台装置設計図事件
イ 『家庭内』→親子・兄弟などの範囲内(での使用)
特定の人数4〜5人以内+関係が親密・閉鎖的
※昭和56年著作権審議会第5小委員会報告書

い 対象となる著作物

ア 著作物の種類は問わない
イ 公表/未公表を問わない

3 私的使用のための複製|『使用する者が複製する』

<『使用する者が複製する』(上記『い』)>

あ 基本形態

対象著作物を使用する者自らが複製の作業をする

い 注意事項

ア 『補助的な立場にある者』が本人に代わって複製することも含む
例;親のために子供が複製する
イ ユーザーが『複製を事業として行う者』に発注することは含まない
※『著作権法・第 2 版』斉藤博 有斐閣p224
※知財高裁平成26年10月22日

4 私的複製の例外|ダビング業者

『私的使用のための複製』は,原則『複製=違法』に対する『例外』=『合法』です。
しかし,一定の事情があると,さらにこれの『例外』=『違法』となります。

<私的複製の例外|ダビング業者(上記『う』)>

あ 私的複製が『違法』となる場合

公衆の使用目的で設置されている自動複製機器を用いる場合

い 詳しい説明

ア 『自動複製装置』の意味
『装置の全部or主要な部分が自動化されている』
いわゆる『ダビング機』のことです。
イ 『違法』とする趣旨
大量の複製が行われる可能性が高い
→権利者の利益侵害が『不当』なレベルまでアップする
ウ 『例外の例外の例外』|紙のコピー機は合法
『自動複製機器』には,『専ら文書or図画の複製に供するものを含まない』(附則5条の2)
典型例=コンビニのコピー機(→合法

5 私的複製の例外|技術的保護手段の回避|プロテクト外し

いわゆる『プロテクト外し』も,『私的複製』としての救済の対象外です。

<私的複製の例外|プロテクト外し(上記『う』)>

あ 私的複製が『違法』となる場合

『技術的保護手段の回避』
いわゆる『プロテクト外し』のことである

い 技術的保護手段(プロテクト)の種類

ア SCMS=Serial Copy Management System
デジタル方式の複製を1世代のみ可能とする技術
典型例;音楽CD
イ CGMS =Copy Generation Management System
デジタル方式の複製について3種類の設定が可能
・複製禁止
・1世代のみ可能
・複製自由
典型例;映画のDVD
ウ 擬似シンクパルス方式(いわゆるマクロビジョン方式)
複製をしても鑑賞に堪えられないような乱れた画像とするようにする技術
典型例;映画のビデオテープ
※著作権法30条1項2号

『技術的保護手段の回避』については,『コピーコントロール』『アクセスコントロール』を分ける見解・同じ扱いとする見解があります。
また,『コピー防止技術の回避』は,著作権法以外に,不正競争防止法違反となることもあります。

<不正競争防止法におけるプロテクト外しの規制>

『技術的制限手段』を回避する装置・プログラムの譲渡・引渡・展示・輸出・輸入・電子通信回線を通じて提供する行為を禁止する
※不正競争防止法2条1項10号,11号)

6 私的複製の例外|違法にアップロードされたことを知っていた場合

『私的複製』に該当する場合でも,対象のコンテンツが『違法にアップロードされたもの』という場合は違法となることがあります。

<私的複製の例外|違法にアップロードされたことを知りながら>

次の要件を満たすと,『私的複製』に該当しても違法となる

あ 有償で販売されているコンテンツ

《例》
ア CD,DVD,Blu-ray Disc
イ インターネット上の有料配信(ダウンロード)

い 有償で販売されていることを知っていた
う (私的使用目的で)ダウンロードした(デジタル方式による録音・録画)

※著作権法119条3項

この点以前は『コンテンツが投稿・アップロードされたこと』が『違法』か『適法』かは関係ありませんでした。
しかし,法改正により,平成24年10月からこのようなルールが適用されるようになりました。

7 私的複製→補償金支払いが必要|補償金制度

(1)私的複製の『補償金』の対象となる媒体

『私的複製』については,著作権者に『補償金』を支払う必要があります。
ただし,複製先が,指定された媒体である場合に限定されています。

<私的複製の補償金の対象となる記録媒体>

あ 録音
媒体 正式名称 記録方式
DAT デジタル・オーディオ・テープ 磁気テープ
DCC デジタル・コンパクト・カセット 磁気テープ
MD ミニ・ディスク 光ディスク
CD-R コンパクト・ディスク・レコーダブル 光ディスク
CD-RW コンパクト・ディスク・リライタブル 光ディスク
い 録画
DVCR デジタル・ビデオ・カセット・レコーダー 磁気テープ
D-VHS データ・ビデオ・ホーム・システム 磁気テープ
MVDISC マルチメディア・ビデオ・ディスク 光ディスク
DVD-RW デジタル・バーサタイル・ディスク・リライタブル 光ディスク
DVD+RW デジタル・バーサタイル・ディスク・リライタブル 光ディスク
DVD-RAM デジタル・バーサタイル・ディスク・ランダム・アクセス・メモリ 光ディスク
Blu-ray ブルーレイ・ディスク・レコーダー 光ディスク

※著作権法30条2項,著作権法施行令1条,1条の2

<補足|注意>

・『録画用』『録音用』のみが対象
・『(録画・録音以外の)データ用』は対象外
・光ディスク・磁気テープ以外の媒体は対象外
対象外の例=PC(HDD),スマホ,iPod

(2)私的複製の補償金の支払フロー

私的複製の『補償金』は,ユーザーが特定の手続を取る必要はありません。

<私的複製の補償金支払フロー>

あ 記録メディアの販売価格に,予め『補償金』が上乗せされている

空のCD・MD・DVD・Blu-ray Discなど
『データ用』の記録媒体に著作物(音楽・映像)をダビングすると『補償金支払義務違反』となる

い 『権利者』への金銭支払い

補償金は『権利者団体』が集めてから『分配』する
《分配フロー》
権利者団体→著作権者・実演家・レコード制作者

8 書籍のデータ化業者=『自炊代行』が『違法』となった判例|平成26年10月

<適法性の解釈が分かれるデータ化方法>

ユーザーが所有している書籍を『スキャン作業代行業者』が預かる
業者は『スキャン作業』を(ユーザーに代わって)実行する
(『自ら吸い込む』→『自炊』という俗称があります)
書籍は『画像データ』となる
ユーザーが『画像データ』を受け取る

これが『私的使用のための複製』として合法となるか,該当しないため違法となるか,については統一的な見解がありませんでした。
この点,知財高裁で次のような判決がくだされました。

<『自炊の代行』を『違法』と判断した判決>

あ 判決の要点

書籍のデータ化(スキャン作業)代行業者への差止請求・損害賠償請求を認めた

い 理由の概要
スキャン作業の主体 業者の立場 適法性 裁判所の判断
『ユーザー』 『作業の代行=補助者』 合法 採用しなかった
『業者』 『複製を行う者』 違法 採用した

※知財高裁平成26年10月22日

9 『自炊』を排除する方向性は合理性なし|法整備の方向性

上記判決は,結果として,『自炊』を排除する方向性のものでした。
結論だけを考えると,テクノロジー進化→社会がメリットを受ける,という流れにブレーキをかけています。

<判決の判断と現実的状況とのギャップ>

あ 書籍のデジタライズ要請の強さ

近年普及しているテクノロジーを組み合わせることによる利便性は非常に大きい
ア ストレージ(情報保管)→クラウド型
イ 通信→超高速化・エリアカバー率ほぼ100%
ウ 端末の高性能化・低廉化→スマホ・Kindleで快適に読書可能

い デジタライズ作業の『超容易性』

非破壊型の自動の書籍スキャナが普及している
『自炊代行の主体はどちらか』という解釈論は『ボタンを押すのはどちらか』に過ぎない
→『主体論不毛説』

う 他の手法との比較→不合理

『高性能のスキャナ自体のレンタル』を想定する
→『設置』されている自動複製機器,には該当しない
→違法とならない(方向性)

え まとめ

『違法』という結論の妥当性には大きな疑問がある
立法(法改正)により,ルールの最適化が必要な状況と言える
著作者としては,率先して『電子書籍化』することが望まれる

立法・司法サイドでは,新たなテクノロジーの普及を促進する方向で法整備・法解釈を行うべきだと考えます。