1 債権回収×法的倒産手続|破産・民事再生・会社更生
2 破産×債権回収
3 民事再生×債権回収
4 会社更生手続×債権回収

1 債権回収×法的倒産手続|破産・民事再生・会社更生

債権回収の問題が具体化するのは『相手(債務者)の経済状態が悪化している時』です。
相手が破産・民事再生・会社更生の手続を申し立てる,という状況も生じます。
この場合は,通常の債権回収の手段のほとんどが封じられます。
これらの法的倒産手続に参加する形で『配当』や『弁済』を受ける,という方向性になります。
それぞれの手続について,債権者の対応について説明します。

2 破産×債権回収

(1)債権回収手段の制限|『配当』のみ

原則的に破産手続における『配当』だけが回収手段となってしまいます。
それ以外の回収手段はシャットアウトされます。
ただし,例外的に破産手続とは関係ない回収が許される場合もあります。

<破産手続において回収OKの場合>

あ 担保権|別除権

ア 約定担保権+非典型担保
抵当権,根抵当権,質権,譲渡担保,所有権留保
イ 法定担保権
先取特権,商事留置権
※破産法65条

い 相殺

<破産手続における債権者の対応>

あ 債権届出を行う

これをしないと,配当されないことがある

い 別除権の把握

抵当権などの『設定した担保』は『見過ごす』ということは通常ない
先取特権などの法定担保権の場合,『契約』がない
→うっかり見過ごしてしまうおそれがある

う 破産管財人への情報提供

債務者が財産を隠匿していたと疑われる事情などを説明する
→管財人による否認権の行使

え 抜け駆け的な回収に注意

破産手続中・直前に『回収』は否認権の対象となる

(2)『免責許可』手続

破産手続の中で,一般的に『免責』が許可されます。
これにより,『債務が免除』となるのです。
逆に言えば,免責が許可されない,ということもあります。
また,債務(債権)の性質上『免責の対象外』というものもあります(非免責債権)。
債権者が『破産手続を知らなかった』という場合に,救済的に『免責対象外(非免責)』とするルールもあります。

<債権者の関与なし→非免責>

債権者名簿に記載されていない + 債権者が破産手続を知らない

破産免責の効果が及ばない
※破産法253条1項6号

債権者の記載漏れ,については別記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら|破産×債権者名簿記載漏れ|免責の効力・対応=再度の破産申立の注意
非免責債権はこれ以外にもあります。
関連コンテンツ|不貞行為の慰謝料は破産で免責される傾向にあるが,例外もある

3 民事再生×債権回収

(1)弁済禁止の保全処分によるシャットアウトに注意

民事再生(手続開始)の申立と同時に『弁済禁止の保全処分』が申し立てられることが多いです。
裁判所が決定すると『弁済禁止』=『返済を拒絶される』状態になります。
裁判所の判断により,『例外が設定される』ということもある。
債務者にしっかりと確認しておくと良いです。

(2)弁済禁止の保全処分は『手続開始決定後』は対象外

『債権の発生原因が民事再生手続開始決定以後』というものは対象外です。
この場合,民事再生の手続外で取立→弁済を受ける,ということが可能です。
民事再生の『債務減額』が及びません。
ただし『新たな担保提供を受ける』というような場合は管財人・監督委員から否認されるリスクがあります。

(3)相殺の注意

理論的に『相殺ができない』ということもよく生じます。
法律上,相殺ができるのは『債権届出期間満了前に(相殺適状+相殺の意思表示)』が要件です。
要するに『支払期限』が『債権届出期間満了』よりも『後』だと相殺できない,ということです。
取引先との契約書等において,最初から,『期限の利益喪失』条項として,『再生手続開始申立』を含めて記載しておくと良いのです。
詳しくはこちら|相殺のまとめ|機能・要件・効果・デメリット・相殺契約

(4)債権届出を怠ると『免責』になる

債権者が『債権届出』を怠ると『免責』されてしまう,ということがあります。

<債権届出不履行による『免責』>

次のすべてが満たされる場合,債務が『免責』される
ア 債権者一覧表に記載されていない
イ 債権者から債権届出がなされない
ウ 債権者が再生手続開始を知っていた

『免責』されると,要するに『請求できない』という結果になります。
このように『債権届出を怠る』ということは大きな不利益につながっているのです。

(5)債権届出を怠ると『議決権なし+弁済が数年後』となる

債権届出がなされなくても,『債務者が債権者一覧表に記載していた』場合は,『免責』されません。
これを『自認債権』と言います。
しかし,『債権届出なし』であるため『債権者集会での議決権がない』ということになります。
弁済計画案についての実質的な『交渉』に参加できないことになります。
また,債権届出のない債権は,『劣後債権』となります。
要するに,『弁済計画による弁済』が終了した後に弁済される,という意味です。
通常,弁済計画の弁済期間は数年です。
劣後債権になると,非常に不利な扱いとなるのです。
『債権者一覧表に記載がある』という場合でも,着実に債権届出をしておくべきなのです。

(6)別除権がある場合でも債権届出は必須|『不足見込額』を届け出る

別除権がある場合でも,債権届出は必要です。
特に,『別除権行使によって全額回収には至らない』と想定される場合は要注意です。
『不足見込額』を届け出ておく必要があります。
この『不足見込額』については,再生計画における弁済の対象となります。

(7)債権届出→再生債権者表に記載→債務名義となる

債権届出がなされると,適正なものであれば,『再生債権者表』に記載されます。
そうすると,『確定判決と同一の効力』が認められます。
要するに,『債務名義』となる=差押などの強制執行ができる状態となるのです。
ただし民事再生の手続中にすぐに差押ができるわけではありません。

詳しくはこちら|債務名義の種類|確定判決・和解調書・公正証書(執行証書)など

(8)再生計画案に対する賛否の判断

<再生計画案に対する賛否判断のプロセス>

あ 情報取得

ア 閲覧・謄写請求
イ 債権者説明会(に出席)
ウ 債権者集会

い 『再生の見込み』の判断

《判断要素》
ア 『破綻の原因』を除去することが可能か
イ 大口債権者(金融機関)の支援が得られるか
ウ 『清算(破産)』と比べた場合の回収率の違い

以上のように,情報収集をしっかりと行ない,情報の適切な評価・判断をすることが重要です。
判断要素となる事情は,通常,債務者サイドから資料を含めて開示,説明されるものです。
債権者説明会や債権者集会で債権者に説明する事項の主要なものです。
案件によっては,債務者サイドからこのような『計画』が明確に示されないこともあります。
その場合は,『再生の見込み』は,疑わしいです。
いずれにしても,破産など,他の選択肢との相対的な評価・判断が必要とされます。

4 会社更生手続×債権回収

(1)開始決定前;弁済禁止の保全処分

通常は『弁済禁止の保全処分』が実施されます。
その結果,取立・弁済ができなくなります。
その後の更生手続で,更生計画案が定まり,これに従った弁済を受けるだけ,ということになるのです。

(2)開始決定後;認可決定前の弁済許可

更生債権は更生計画以外での弁済ができなくなります。
通常は,開始決定前から『弁済禁止の保全処分』により,既に『弁済禁止』となっていることがほとんどです。
ただし,『弁済許可』という『例外』が認められることも多いです。

<認可決定前の弁済許可の対象|典型例>

あ 少額+円滑目的

債権が少額であり,早期の弁済により更生手続が円滑に進行する

い 少額+事業継続目的

債権が少額であり,早期弁済をしないと更生会社の事業の継続に著しい支障が生じる

う 取引先の事業継続目的

債権者が,更生会社を主要取引先とする中小企業である
早期弁済をしないと取引先に,事業の継続に著しい支障が生じる
→要するに,連鎖倒産の危機,という状況

(3)再生担保権|担保権実行禁止・解除

手続開始後は『弁済禁止』の対象となり,『担保権実行』も禁止・中止されます。
ただし,更生会社の事業の遂行に必要でない財産については,裁判所によって『担保権実行禁止の解除』がなされることもあります。
『破産手続における別除権』の扱いと異なりますので注意が必要です。

(4)債権届出

届出期間内に債権や担保権を届け出る必要があります。
届出を怠った場合,債権者の権利は『免責』され,『消滅』することになります。
これも『民事再生手続における債権届出』とは異なりますので注意が必要です。

(5)更生計画案に対する賛否の判断

債権者説明会や関係人集会で情報を収集・把握すべきです。
情報収集→その評価・判断,が重要です。
基本的に『民事再生』における『再生計画案の賛否判断』と同様です(前記『3』)。