1 保証契約と保証人が負う責任|基本的事項
2 単純保証と連帯保証の違い|通常は『連帯保証』が用いられる
3 保証人を担保とする効果|保証人の資力に依存する・心理的な効果も大きい
4 保証人の経済力低下→『別の保証人を立てる』義務
5 保証契約が否定されるリスクもある|3つの大きな類型
6 保証契約の『合意』・『効力』が否定される|保証否認
7 根保証契約|継続的な取引の債務を保証する
8 特殊な『保証』は別のルールがある|賃貸借に伴う保証・身元保証

1 保証契約と保証人が負う責任|基本的事項

貸金や取引の際,『保証人を立てる』ということが広く行なわれています。
また,一般的な支払が滞納となった場合に『支払期限を猶予する条件として保証人を要求する』ということもあります。
まずは保証人・保証契約の基本的なことをまとめておきます。

<保証契約・保証人の責任>

あ 保証契約と保証委託契約

ア 保証契約
債権者(貸主等)と保証人が締結する
『保証債務を負う』という内容
現在では『書面調印が必須』となっている(要式性;後記『6』)
イ 保証委託契約
債務者(借主等)と保証人が締結する
『保証人になることを要請・承諾する』という内容

い 『保証』の種類|単純保証・連帯保証

2種類があるが『債務の担保』として実効性のある『連帯保証』が一般的に使われている

う 『共同保証』

複数の保証人を設定すること
ア 単純保証人が複数→『分別の利益』あり
各保証人の負う金額は『保証人数で按分した金額』となる
イ 連帯保証人が複数→『分別の利益』なし
各保証人の負う金額は『主債務の全額』となる

え 保証人の求償権

保証人が弁済した場合,主債務者に請求(求償)できる

2 単純保証と連帯保証の違い|通常は『連帯保証』が用いられる

<単純保証と連帯保証>

あ 単純保証(人)

催告の抗弁権と検索の抗弁権がある
ア 催告の抗弁権;民法452条本文
保証人が債権者に対し,『まず主債務者に催告をなすべき』旨を請求することができる権利
イ 検索の抗弁権;民法453条
保証人が債権者に対し,『主債務者の財産につき執行をなすまで自己の保証債務の履行を拒む』権利
保証人が『主債務者に弁済の資力がある+執行が容易である』ことを証明する必要がある

い 連帯保証(人);民法454条

催告の抗弁権・検索の抗弁権を持たない
→実質的に『債務者と同じ義務』と言える状態

3 保証人を担保とする効果|保証人の資力に依存する・心理的な効果も大きい

保証人の設定=保証契約の根本的な目的は『債権回収を確実にする』という債権者視点のものです。
債権回収としての『保証人』の位置付け・効果についてまとめます。

<保証人を設定する趣旨・効果>

あ 債務の担保

主債務が履行されない時に『保証人に請求』できる
保証人の財産の『仮差押』も可能

い 心理的効果

主債務者が『保証人への迷惑』を避ける意欲
→任意の支払に応じやすい

4 保証人の経済力低下→『別の保証人を立てる』義務

もともと『保証』は,『保証人の資力』を引き当てとする制度です。
ところが,保証人を立てた後に,『保証人の資力(経済力)が低下する』ということがあります。
このような場合は,債権者が『主債務者が別の保証人を立てる』ことを請求できることになっています。

<債務者が立てる保証人|前提としての『資力』>

あ 債務者が立てる義務のある保証人の条件

ア 行為能力者
イ 弁済の資力

い 後から『条件』が欠けた場合

債権者は『条件を満たした別の保証人を立てる』ことを請求できる
他の『物的担保・保証人』の担保で十分,という場合は請求できない
※民法450条1項,2項,451条

5 保証契約が否定されるリスクもある|3つの大きな類型

保証人を確保した場合,後から主債務者が『滞納』になっても,債権者は保証人に請求できます。
これが『担保』という本質的な機能です。
しかし,状況によっては『保証契約自体が否定される』ということがあります。
いくつかのパターンがあるので分類します。

<保証契約が否定される類型>

あ 合意が否定される

『合意』(契約)として認められない

い 効力が否定される

合意はあるが『効力』を生じない
例;公序良俗違反

う 保証の範囲(内容・期間)外と判断される

例;身元保証・賃貸借契約に伴う保証

6 保証契約の『合意』・『効力』が否定される|保証否認

保証契約の無効が主張される=有効性が争われる,というものを『保証否認』と呼んでいます。
現実に,『保証人』が,不十分な説明を受け,不十分な認識のまま契約書に調印する,ということが生じる傾向があります。
以下,保証否認の種類と,その判断方法についてまとめます。

(1)保証契約書を作成しなかった場合

<保証契約の『要式』化>

あ 『要式』化

〜平成17年3月31日 『合意』だけで成立
平成17年4月1日〜 『合意』+『書面or電磁的記録』により成立

い 『電磁的記録』

サーバー・ハードディスク・その他記憶媒体に保管されているデータ
※民法446条2項,3項

平成16年の民法改正により『書面』によることが必要となりました。
逆に改正前は『書面なし』でも保証契約は有効に成立していました。
契約書なし,という場合は,『軽い気持ちで口約束をする』という傾向がありました。
後から『保証契約』としての成立の有無について対立するケースも多くあります。
『契約書なし』の場合の保証契約の有効性判断についてまとめます。

<保証契約(合意)の有効性判断要素>

あ 保証人とされる者と主債務者の人的関係

特に『経済的同一性』が重要

い 保証人とされる者の『契約への関与の仕方・程度』
う 保証したことを前提とする言動の有無

事後的な言動の整合性のこと

<保証契約を『有効』と判断した判例|東京高裁昭和32年9月26日>

あ 事案

主債務者が弁済期に弁済しなかった
『保証人』が主債務者の依頼に応じて
『保証人』の孫名義の土地の登記済証を債務の担保の趣旨で債権者に預け入れた
その旨を記載した書面を差し入れた

い 裁判所の判断

保証契約成立を認めた

<保証契約を『有効』と判断した判例|東京高裁昭和55年5月21日>

あ 事案

主債務者が倒産した
『保証人』が債権者に対して『迷惑はかけない,自分が責任を負う』と繰り返し述べていた(←重視された)

い 裁判所の判断

保証契約成立を認めた

(2)保証契約書の調印を行った場合

<保証契約(合意)の有効性判断要素>

あ 成立の真正|『書いた人』を争う(※1)

『自分が書いたものではない』という主張

い 成立の真正|『保証意思』を欠いていた(※2)

『自分で書いたが保証の認識が不十分だった』という主張

う 作成された保証契約書の文言の解釈(※3)
え 一般条項(※4)

(3)成立の真正|『書いた人』を争う(上記※1)

<『書いた人を争う』の判断方法|概要>

あ 具体的主張

『自分が書いたものではない』という主張

い 事実認定で用いられる『2段の推定』

印章と同一の印影=本人の印影
↓事実上の推定;最高裁昭和39年5月12日
本人の意思による押印
↓法律上の推定;民事訴訟法228条4項
文書成立の真正

『自分で書いたものではない』というのは,一般的な文書・調印について問題となることが多いものです。
この点,訴訟においては,『推定』によって認定されるルールがあります。
押印がある場合は,『覆すためには一定の高い精度の証明』が要求されるのです。

(4)成立の真正|『保証意思』を欠いていた(上記※2)

<『保証意思を欠いていた』の判断要素>

あ 具体的主張

『自分で書いたが保証の認識が不十分だった』という主張

い 判断基準

『契約が成立したとは認められない特段の事情』があれば成立が否定される

う 『特段の事情』の具体例

ア 経済的同一性
イ 契約への関与の仕方・程度
ウ 保証の動機
エ 保証の必要性
オ 他の同種契約の状況
カ 保証人の資力
キ 保証したことを前提とする言動の有無

『保証意思』が争われる典型例として『迷惑はかけない,とハッキリ言われた』というものが多いです。
一般論としての判断の方向性をまとめます。

<『迷惑はかけない』と言われてサインした→一般的判断の傾向>

あ 主張の典型例

ア 『迷惑はかけない』と頼まれた場合(頻出事例)
イ 『保証契約書をよく読まなかった』
ウ 『多量の書類を拡げられて,ここにサインしてくれ,とだけ言われた』

い 評価

通常の社会人であれば,『保証の効果』は理解している
『保証の効果』=主債務者が払えない場合に代わって払う

う 結論

ア 原則
『保証意思』は否定できない
錯誤無効も成立しない
イ 例外
客観的に『意思が欠ける』背景事情が存在する場合
例;当事者が高齢で判断能力に疑いがある
※加藤新太郎 民事事実認定と立証活動2 判例タイムズ社p220

<『保証意思』を否定した判例|大阪高裁昭和47年4月24日>

あ 事案

『保証人』=従業員,それも現場の労務者がほとんど
資力は不十分,過去に同種の調印なし
『農協からセメントを買うために必要だから』
『農協内部の監査があるから名前を書いてくれ』
詳しい説明なし
契約書を読んでいないでサインした

い 裁判所の判断

『保証意思』否定

<『保証意思』を否定した判例|東京地裁平成8年8月30日>

あ 事案

主債務者が『保証人』に↓の念書を差し入れた
念書内容=『形式上の保証人です。一切の責任・ご迷惑をおかけしないことを確約します』
名前を借りるだけ,と説明した。
借入金額・返済期限・金利等の説明はしなかった。
債権者は『保証人』に保証意思の確認をしなかった。

い 結論

『保証意思』否定

(5)作成された保証契約書の文言の解釈(上記※3)

保証契約書の個々の文言を元に解釈論が展開されることもあります。
典型的なものを挙げます。

<『経営指導念書』の評価>

あ 『経営理念書』の趣旨

金融期間が融資のを受ける会社の関係者に提出を要請するもの

い 『経営理念書』の例

ア 『会社の親子関係を維持し,子会社の経営を指導します』
イ 『融資を認識しました』
ウ 『財務情報を提供します』
エ 『助言をします』
オ 『出資比率を維持します』
カ 『資金援助します』

う 『経営理念書』の評価の方向性

特段の事情がない限り法的効力は生じない
※東京地裁平成9年4月28日
※東京地裁平成11年1月22日

<『曖昧な肩書』の評価>

書面上,一定の『肩書』付で署名(記名)押印したことの評価

肩書 『保証意思』評価の方向性
引受人 肯定方向
仲介人 原則否定
立会人 原則否定
証人 原則否定

※瀧澤泉ほか 民事訴訟における事実認定 法曹会p218

(6)一般条項(上記※4)

権利濫用などの一般条項を適用して『保証』(の効果)を否定する事例もあります。
当然,事案全体の利害バランスの偏り,を判断することになります。
具体例(判例)を挙げておきます。

<権利濫用として『保証』を否定した判例|最高裁平成22年1月29日>

あ 事案

実質的に財布を共通にするグループ会社間での金銭の貸し借り
X社はB社から『顧問料』等の名目で確実に収入を得ていた
『保証人』となった者=B社の代表取締役Y
短期間でアルバイト→正社員→代表取締役と変わった
実質は権限・利益として代表取締役としてマッチしない
利息が,利息制限法違反(超過)していた

い 裁判所の判断

保証契約(合意)自体は肯定(認定)
『請求』が権利濫用にあたる

(7)『人的関係』の評価のまとめ

契約書の調印がある場合,ない場合のいずれでも『人的関係』は『保証』の効果の判断で重要です。
『人的関係』の類型と評価の対応をまとめます。

<『人的関係』と『保証』の判断の関係>

人的関係の類型 人間関係の密度 利害関係 印章・印鑑証明書の入手
会社とその代表者個人 濃い 濃い 容易
夫婦関係 やや濃い やや濃い やや容易
親子関係
兄弟関係 やや薄い やや薄い やや困難
会社の上司・同僚関係,友人・知人関係 薄い 薄い 困難

※加藤新太郎 民事事実認定と立証活動2 判例タイムズ社p212〜

<参考情報>

月報司法書士14年11月p36〜

7 根保証契約|継続的な取引の債務を保証する

(1)根保証契約一般

個々の,特定の債務について『保証』する,というのが通常の方式です。
一方,一定範囲の・将来発生する債権も含めてひっくるめて『保証』する,という方法もあります。
これを『根保証(契約)』と言います。

<根保証契約>

あ 内容

継続的取引によって生じる債務を保証するもの

い 被担保債権の特定

ア 保証期間
イ 限度額(極度額)
ウ 被担保債権の範囲

保証対象の債務=『被担保債権』の設定が重要となります。

(2)包括根保証契約の責任の制限

ところが,『被担保債権』の特定をしない,というケースもあります。
範囲が拡がりすぎるおそれがあるので,解釈上『制限』が加えられることがあります。

<包括根保証契約|責任の制限>

あ 包括根保証の定義

『根保証契約』において『保証期間・限度額・被担保債権の範囲』を定めないもの

い 解約権行使

ア 長期間経過
相当の日時経過後は保証人が『解約権行使』ができる
※大審院大正14年10月28日
イ 主債務者の経済力悪化
主債務者の財産状況が著しく悪化した場合は保証人が『解約権行使』ができる
※最高裁昭和39年12月18日

う 範囲の制限

取引慣行に反して不合理に拡大した時は,保証の限度は合理的な範囲に制限される
※大判大正15年12月2日
※大阪地裁平成10年10月1日
※東京高裁平成11年11月25日
※札幌地裁平成17年9月16日
※我妻栄・注釈民法(4)p473

包括根保証契約は『範囲が拡がりすぎる』というおそれについては,民法改正で手当がなされました。

<民法改正による『自然人の包括根保証禁止』>

保証人が自然人である場合の包括根保証契約は無効
↑条文上は『極度額の定めのない貸金等根保証契約』
※民法465条の2;平成16年改正より

保証人が自然人(個人)の場合のみ,『禁止(無効)』となりました。
保証人が法人の場合は,従前どおり有効です。

(3)限定根保証契約の責任の制限

一方,上限を設定した『限定根保証契約』でも,事情によっては『責任の制限』が加えられます。

<限定根保証契約|責任の制限>

あ 限定根保証契約の定義

限度額(極度額)の定めがある

い 範囲の制限

ア 原則
約定の『範囲』に制限される
イ 例外
約定の『範囲』をさらに制限する解釈もあり得る
法的根拠=信義則・合理的意思解釈
※東京地裁平成11年10月28日
※東京高裁昭和55年9月29日

8 特殊な『保証』は別のルールがある|賃貸借に伴う保証・身元保証

単純に,一定の債務を対象とする保証とはちょっと違う『保証』もあります。
建物などの賃貸借契約に伴う保証人や会社に就職する時の『身元保証』などです。
これらについては,法的な扱いとしても,ちょっと特殊性があります。
別に説明しています。
詳しくはこちら|保証人の責任×更新,『徒歩n分』表記,重要事項説明義務|建物賃貸借・その他の問題
詳しくはこちら|『身元保証人』の意味|一般的用語と法的用語