1 アプリ・ソフトの『画面表示』(UI)が似ている→著作権侵害となることもある
2 アプリ・ソフトの『画面表示』(UI)も一般論として著作物となる
3 アプリ・ソフトの『画面表示』(UI)は『実用的』なので『創作性』が否定されやすい
4 UI・画面表示の『著作権侵害』は『類似性』がポイント
5 UI・画面表示の『著作権侵害』のまとめ|『極めて類似する』場合だけ|サイボウズ事件判例
6 UI・画面表示は『特許権』の対象・侵害になりにくい
7 UI・画面表示は『意匠権』の対象・侵害になりにくい
8 アプリ・UI開発→リリース→ユーザー・社会の利便性アップへの期待

1 アプリ・ソフトの『画面表示』(UI)が似ている→著作権侵害となることもある

最近はスマホの普及→インターネットの利用者層・利用時間が爆発的に増加しています。
インターネット利用の具体的な『窓口』としてのソフトウェア・アプリも大きな変化の真っ只中です。
多くのアプリ・ソフトが開発され,リリースされ続けています。
『似たようなユーザーインターフェース(UI)・画面表示』を持つアプリが続々と誕生しています。
ここで『まねした』として『著作権侵害』になるかどうか,という問題が潜んでいます。
法的判断の枠組みをまとめます。

<UI・画面表示の著作権侵害の判断枠組み>

『発想元のUI』が著作物である + 『新作UI』が複製権(翻案権)侵害に該当する
→『著作権侵害』が成立

以下,『著作物』の判断,『著作権侵害』の判断について順に説明します。

2 アプリ・ソフトの『画面表示』(UI)も一般論として著作物となる

(1)ソースコードは『プログラムの著作権』に該当する

アプリやソフトウェアは,ソースコード・スクリプト(関数・命令の集合)により作成されています。
この『ソースコード』は『プログラムの著作物』として『著作権』が認められます(著作権法10条1項9号)。
仮に『ソースコード』自体をコピペ+編集を加えて別のアプリを作れば,著作権侵害になります。
正確には『複製権侵害』や『翻案権侵害』です。

(2)アプリ・ソフトの『まね』が問題になるのは『画面表示』(UI)

実際には,問題になるケースのほとんどは『ソースコード』ではなく『画面表示』の方です。
『ユーザーインターフェース』(UI)と呼ばれるものです。
要するに『見た目をまねた』というものです。
UI・画面表示についても,『表現』の1つとして『著作権』の対象となります。

<UI・画面表示の著作物性|一般論>

あ 一般論としての著作物性

UI・画面表示は一般論として著作物にあたりうる

い 著作物の内容(抽象的)

作成者が意図した選択・配列に基づく相互に牽連性を持った表現行為

う 著作物の要件のうち重要なもの

4つの要件のうち『創作性』
詳しくはこちら|『著作物』の定義(基本・創作性の判断基準)

創作性の判断については次に説明します。

3 アプリ・ソフトの『画面表示』(UI)は『実用的』なので『創作性』が否定されやすい

<UI・画面表示の『創作性』判断のポイント>

あ 判断要素

ア 表示の順序や画面配列
イ リンク機能の表示

い 創作性の段階|まとめ
創作性=個性の強さ 形容
強い 独創的・個性的
容易に思い付く・平凡・凡庸
弱い (一定の目的・機能の前提で)誰が作っても同じになる

アプリ・ソフトウェアは一定の情報を表示する,という実用的な機能・目的が本質的なものです。

<アプリ・ソフトの創作性判断の思考実験>

あ 設定

仮に同じ機能のアプリ・ソフトを100人がイチから独自に作る

い 判定の方向性
特定の表示・表現・動的仕組み(動作)の発想 創作性 著作物の判定
1人しか思い付かない あり 肯定する方向性
数人以上は思い付く なし 否定する方向性

判定結果は,個々のアプリ・ソフトの種類・機能によって違ってくると思います。
しかし『実用性』という根本的な共通のベースがあることから,一定の傾向がハッキリしています。

<アプリ・ソフトにおける著作物性(創作性)判断の傾向>

あ 一般的傾向

著作物ではない,と判断される傾向が強い

い 理由

具体的な機能・目的が同じ→『一定数の人が思い付く』という傾向が強い
(アプリ・ソフトに限らず一般的に『実用的』なものは著作権が否定される傾向にある)

以上の説明はあくまでも『アプリ・ソフトに関する一般的な傾向』です。
一方で前述のとおり,一般論として,アプリ・ソフトには著作権が認められることもあります。
実際に,個別的に極端な事情があれば,『著作権侵害』と判定されるケースもあります。

4 UI・画面表示の『著作権侵害』は『類似性』がポイント

著作権侵害の2つめのポイントは『複製権侵害や翻案権侵害』の判断です。
この判断基準は判例上シンプルに設定されています。
UI・画面表示に関しては,その中でも『類似性』の判断が重要になってきます。

<著作権侵害行為(複製権・翻案権侵害)の判断基準>

あ 基本構造

『依拠性』+『類似性』→複製権・翻案権侵害

い 『類似性』の内容

本質的な特徴をそれ自体として直接感得させる(態様)
※最高裁昭和55年3月28日;パロディ・モンタージュ事件

大雑把に言うと,見た人(ユーザー)が『似ている』と思う,ということです。
ただ,著作物の本質的な特徴,であることが前提です。
『ありふれた部分』=『著作物ではない部分』については,『似ている』と思われても著作権侵害にはなりません。
傾向をまた大雑把に言うと『機能が同じアプリなら似ていて当然=違法ではない』ということです。
詳しくはこちら|複製権の内容と複製権侵害の判断基準

5 UI・画面表示の『著作権侵害』のまとめ|『極めて類似する』場合だけ|サイボウズ事件判例

<UI・画面表示の著作権の特徴|まとめ>

あ 2つの特徴

ア 『著作物』
独自性が特に強い部分だけが『著作物』である
イ 著作権侵害(『複製』『翻案』)
多少似ていても『著作権侵害』ではない

う まとめ;大雑把な傾向

独自性が特に強い部分を完全コピーした場合だけが著作権侵害となる

実際に,このような枠組みでの判断が判例となっています。

<UI・画面表示の著作権侵害の基準|判例>

著作権侵害(複製権・翻案権侵害)の対象
デッドコピー(完全なコピー)ないしそれに準ずるようなものに限られる
画面全体における『共通する表現』と『異なる表現』の割合も影響する
※東京地裁平成13年6月13日;サイボウズ・オフィス事件
※大阪地裁平成12年3月30日;積算くん事件

6 UI・画面表示は『特許権』の対象・侵害になりにくい

特許権では,一定の『アイデア自体』が対象となります。
UI・画面表示も一定の要件を満たせば,『特許』の出願→登録がなされます。
詳しくはこちら|特許権の基本|登録すればアイデア自体が保護される

ただし,一般的に,UI・画面表示については『特許審査』が通らないことも多いです。
さらに,仮に特許審査を経て登録まで行っても,後から訴訟で『特許権』(侵害)が否定されることもあります。
重要なところをまとめます。

<UI・画面表示の『特許権』|判断の方向性>

『新規性・進歩性』が否定される傾向
(著作権における『創作性』と同様)

法律上の要件としては,違う言葉ですが,『著作権』で説明した『創作性』と実質的に同じような考え方です。
判例上,UIの『特許権侵害』について判断したものを紹介します。

<UIの特許権が判断された判例>

あ 一般論

UI(表示機能)も一般論として特許権の対象となる

い 個別的事情の判断(新規性・進歩性)

特許出願当時に出版されていた文献から『容易に思い付く』
→新規性・進歩性を否定
→特許権(侵害)を否定

う 裁判例

ア 東京地裁平成15年4月16日;マルチウィンドウ表示制御装置事件
カシオvsソーテック
イ 知財高裁平成17年9月30日;ヘルプアイコン事件
松下電器vsジャストシステム

7 UI・画面表示は『意匠権』の対象・侵害になりにくい

UI・画面表示は『意匠』に該当することもあります。
意匠法で,『画面表示』についても対象として規定されているのです。
詳しくはこちら|意匠権の基本|登録すればデザインが保護される

しかし『メイン機能の画面表示』は除外されています。
そこで,アプリ・ソフトにおけるUIは,『意匠』としては認められない傾向が強いです。
仮にこの点をクリアしたとしても,登録要件の1つ『新規性』などが欠けているとして,意匠権として認められない可能性も高いです。

<UI・画面表示の『意匠権』|判断の方向性>

あ 『メイン機能以外』で大部分が除外される

スマホのアプリ・ソフトではUI自体が『メイン機能』の一部といえる

い 『新規性・創作困難性・機能確保のための形状ではない』が否定される傾向

(著作権における『創作性』と同様)

なお,実際には『高度なGUI』については,特許や意匠の出願がなされている自体は多く存在します。
外部サイト|日本弁理士会|パテントVol.65|p71〜

8 アプリ・UI開発→リリース→ユーザー・社会の利便性アップへの期待

より良い,優れたアプリ・UIが開発され,普及することは社会全体にメリットがあります。
『著作権』が不当な開発へのブレーキにならないよう,開発者側もしっかりケアすることが望まれます。
以上の判例などのルールの枠組みと現在のIT発展状況を踏まえた工夫・発展への期待をまとめてみます。

<スマホファースト時代の特殊性→著作権ケア>

あ スマホの普及による特徴

画面が小さい
『個性の幅』が小さくなる傾向

表現・表示・機構(動的部分・動作)は似通う傾向が強い

い 著作権侵害を避ける工夫

細かい・付随的な表示・パーツ・装飾で『可能な限り独自のデザインを盛り込む』

『独自部分』の割合をアップ

著作権侵害という認定可能性が軽減する

次に,社会におけるニーズ,マーケット的な視点について,時代の変化として指摘されていることをまとめてみます。
サービス提供側からは,目指している『キャズムを超えろ!』というテーマになりましょう。

<独自性=競争優位=参入障壁の所在=リソース投入ポイント>

プログラム作成・開発(スクリプト+表示)部分
継続的なコンテンツ=情報ソースの確保・独占
イベント開催=『体験』の提供

アプリ・ソフトがより高度に進化し,多くのユーザーが利便性を受けることを期待しています。