1 ユーザーの行為によりサイト・アプリ運営者が責任を負うリスク
2 サイト・アプリ運営者が負う刑事責任|『幇助犯』『教唆犯』
3 サイト・アプリ運営者が負う民事責任|損害賠償責任
4 児童ポルノの投稿×アプリ運営者の刑事責任|実例
5 わいせつ動画の投稿×サイト運営者の刑事責任|実例
6 『電気通信役務提供者』|定義=プロバイダ・サーバー管理者など
7 サイト運営者→監視義務まではない
8 ユーザーの違法行為によるサイト運営者の責任|責任免除
9 ユーザーの違法行為によるサイト運営者の責任|努力義務

1 ユーザーの行為によりサイト・アプリ運営者が責任を負うリスク

一般ユーザーがテキスト・画像・動画を投稿できる,インターネット上のサイト・アプリが普及しています。
また,ユーザーが販売できるサイト・アプリもあります。
これらのプラットフォーム上で,ユーザーが不法・違法な投稿を行う,という事例もよく生じます。
当然,そのようなユーザーは法的な責任を負うことになります。
それだけではなく,『サイトやアプリの運営者』も責任を負う,というケースもあります。
一定の関与が前提となりますが,運営者(事業者)としては,一定のケア(リソース配分)が必要です。

<ユーザーの違法行為の責任を負う『サイト・アプリ』の例>

あ テキスト・画像・動画の投稿サイト

2ちゃんねる・ニコニコ動画・YouTube

い SNS

Facebook・twitter・インスタグラム

う 販売プラットフォーム・オークションサイト

Amazon・楽天市場

<サイト・アプリ運営者が責任を負う事情|概要>

あ 違法行為を知っていた

ユーザーによる各種違法行為を知っていたが削除などの対応をしなかった
被害者から削除要求を受けたが放置した

い 収益

ユーザーによる各種違法行為により利用料・広告料等の収益を上げていた

<サイト・アプリ運営者が負う責任の種類>

あ 刑事責任

投稿が犯罪行為に該当する場合
→運営者が『幇助犯』『教唆犯』となるケース

い 民事責任

投稿による被害者が生じた
→運営者が損害賠償責任を負うケース

以上は,いろいろな種類の違法行為に共通する,大雑把なものです。
違法行為の種類などについては次に説明します。

2 サイト・アプリ運営者が負う刑事責任|『幇助犯』『教唆犯』

まずは刑事責任として『幇助犯』『教唆犯』となるものを示します。

<ユーザーの投稿によって運営者が『幇助犯』『教唆犯』となるリスクの例>

あ 第三者の名誉を毀損する投稿

詳しくはこちら|ネット上の名誉棄損など|運営者・管理人の責任|損害賠償・削除義務

い 第三者の著作権を侵害する投稿

別項目|投稿サイト,アプリ運営者,クラウドサービス運営者の著作権に関わる責任

う わいせつ系の投稿

運営者が次のような責任を負うことがある(後記)
ア 児童ポルノ法違反の幇助犯
イ わいせつ物頒布罪の幇助犯
ウ 風営法違反
エ 売春防止法違反の幇助犯
詳しくはこちら|男女交際・性行為に関する刑罰|売春防止法・児童ポルノ法・青少年育成条例・強姦罪

え 各種犯罪を『指南』する投稿

さまざまな『犯罪に当たる行為』の遂行方法を説明する投稿がなされた場合
運営者が幇助犯,教唆犯となる可能性がある

お 第三者を脅迫する投稿

脅迫罪や強要罪,恐喝罪に当たる投稿がなされた場合

一般的に,『幇助犯』『教唆犯』となる基準については別に説明しています。
詳しくはこちら|犯罪の手助け,そそのかしだけでも,幇助犯,教唆犯が成立する

3 サイト・アプリ運営者が負う民事責任|損害賠償責任

ユーザーの投稿により,サイト・アプリ運営者が民事的な損害賠償責任を負うこともあります。
典型的なものをまとめます。

<ユーザーの投稿によって運営者が損害賠償責任を負うリスクの例>

あ 名誉毀損,著作権侵害等の『幇助犯』『教唆犯』に当たる場合

ア 前提事情
上記の『幇助犯』『教唆犯』に該当する
被害者・損害が生じている
イ サイト・アプリ運営者の責任
被害者に対して,不法行為の損害賠償責任を負うことがある

い 第三者の肖像権,プライバシー権,パブリシティ権を侵害する投稿(民事)

ア 前提事情
肖像権,プライバシー権,パブリシティ権の侵害が生じた
イ 法的扱い
『犯罪』としての規定がない
しかし,民事的な,損害賠償請求の対象となる
関与の程度によっては,運営者も賠償責任を負うことがある

4 児童ポルノの投稿×アプリ運営者の刑事責任|実例

実際に検挙されたケースについて紹介します。
まずは児童ポルノ法違反によるアプリ運営者の逮捕というケースです。
全国初のケースとして話題となっています。

<児童ポルノの投稿×アプリ運営者の刑事責任|実例>

あ 事案|疑いの内容

ユーザーが『写真共有アプリ』に児童ポルノの画像を投稿した
アプリ運営者はこのことを知っていた
一定範囲で児童ポルノの閲覧には料金がかかる
アプリ運営者は閲覧者からの収入で利益を得ていた

い 検挙

次の疑いでアプリ運営者が逮捕された
罪名=児童ポルノ法違反(公然陳列)の幇助犯

う 検挙の歴史

児童ポルノ法違反容疑での『アプリ運営者の検挙』は全国で初めてである
※日本経済新聞オンライン平成27年11月5日

『幇助犯』については,『著作権侵害の投稿』のケースにおける判例が参考になります。
別項目|サイト,アプリ運営者×著作権侵害;誘引

5 わいせつ動画の投稿×サイト運営者の刑事責任|実例

『わいせつな動画』を広く配信すると,『わいせつ物頒布罪』となります(刑法175条1項)。
ユーザーがサイトにわいせつ動画を投稿することが『わいせつ物頒布罪』となります。
この場合,運営サイトは,『投稿場所の提供』として,この犯罪を『手助け』したことになります。

<わいせつ動画の投稿×サイト運営者の刑事責任|実例>

あ 事案

わいせつ行為の動画を,ユーザーが有料配信していた
投稿サイト運営者はこれを把握した後も放置していた

い 検挙

次の犯罪の疑いでサイト運営者が検挙(捜索)された
ア 公然わいせつ罪の幇助犯
イ 風営法(無許可営業)
※平成26年9月の報道

『幇助犯』だけではなく,風営法違反も被疑事実とされました。
閲覧するユーザーから徴収する料金が『アダルト動画』の対価,に該当します。
要するに『アダルト動画の無許可販売』ということになるのです。

6 『電気通信役務提供者』|定義=プロバイダ・サーバー管理者など

いくつかの法律で『サイト運営者の責任』に関する規定があります。
共通して使われる『電気通信役務提供者』の定義についてまとめておきます。

<『電気通信役務提供者』|定義>

あ 対象事業者

『電気通信役務提供者』

い 具体例

プロバイダ・サーバー管理者・運営者など
『サーバーの提供がないアプリ制作者』は含まれない
※電気通信事業法2条2項

具体的な規定の内容は次に説明します。

7 サイト運営者→監視義務まではない

サイト・アプリ運営者が責任を負う前提は,違法行為を『知っていること』が前提です。
この点,運営者は『違法行為の有無を監視するべき』という考え方もあります。
仮に『管理義務あり』とすると運営に大きな負担を課すことになってしまいます。
現行法では,一般的な『監視義務』は否定されています。

<サイト運営者×監視義務>

『電気通信役務提供者』
→『監視義務』は否定される
※プロバイダ責任制限法3条1項
※東京地裁平成16年5月18日
※東京高裁平成13年9月5日;ニフティサーブ事件

ただし,一定の範囲で『努力義務』が規定されています(後述)。

8 ユーザーの違法行為によるサイト運営者の責任|責任免除

いくつかの法律で,サイト運営者の責任の免除(制限)が規定されています。

<ユーザーの違法行為によるサイト運営者の責任|責任免除>

あ 責任免除|共通事項

各法律により一定の情報の『削除・送信防止措置』の責任が免除される

い プロバイダ責任制限法

『他人の権利を侵害』する情報
※プロバイダ責任制限法2条

う 医薬品医療機器等法(※1)

指定薬物(危険ドラッグ)に関する違法広告
※医薬品医療機器等法72条の6,76条の7の3

え 児童ポルノ法

『免責』の規定はない

お リベンジポルノ法

『私事性的画像記録』
→これにより名誉or私生活の平穏を侵害する情報
※リベンジポルノ法4条
※1 正式名称=医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

これらは『責任制限=免除』です。
しかし,反対解釈が事実上適用される傾向があります。
つまり『削除しないと違法性あり』という認定・判断です。

9 ユーザーの違法行為によるサイト運営者の責任|努力義務

『児童ポルノ法』だけはサーバー・サイト運営者の『努力義務』が規定されています。
『努力義務』ですから,法律的・具体的な『義務』ではありません。
これを履行しなくても『罰則』などの不利益が直接適用されることはありません。

<ユーザーの違法行為によるサイト運営者の責任|努力義務>

あ 児童ポルノ法×サイト運営者の努力義務|内容

ア 児童ポルノ法違反に関して捜査機関に協力する
イ 児童ポルノの情報を防止する措置を講じる
※児童ポルノ法16条の3

い 他の法律

次の法律には『サイト運営者の努力義務』規定はない
ア プロバイダ責任制限法
イ 医薬品医療機器等法
ウ リベンジポルノ法

各法律の説明はそれぞれ別の記事に記載しています。
詳しくはこちら|ネット上の名誉棄損など|運営者・管理人の責任|損害賠償・削除義務
詳しくはこちら|児童ポルノ単純所持罪・公然陳列罪(基本・サーバー運営者の責任)
詳しくはこちら|リベンジポルノ法|元恋人とのセクシャル画像のインターネッツ拡散→犯罪