1 国庫帰属の引き継ぎ先と権利移転タイミング
2 相続財産管理人の引継手続によって権利が移転する
3 財産の種類によって財務省か家庭裁判所が遺産を引き継ぐ
4 『国有財産』は不動産・船舶・有価証券など
5 不動産は財務局長へ引き渡して国が登記申請をする
6 不動産の国庫帰属後の扱い
7 不動産以外の財産の国庫への引継手続
8 動産の国庫帰属後の扱い

1 国庫帰属の引き継ぎ先と権利移転タイミング

相続人が存在しない場合,最終的に遺産は国(国庫)に帰属します。
詳しくはこちら|相続人不存在では遺産は特別縁故者か共有者か国庫に帰属する
実際には,相続財産管理人が遺産を管理し,国へ引き継ぐ業務を行います。
本記事では,相続人不存在のケースにおける国へ遺産を引き継ぐ手続や引き継ぐ具体的な機関について説明をします。
また,国庫への引き継ぎの手続と権利の移転のタイミングは直接関係しています。これも説明します。

2 相続財産管理人の引継手続によって権利が移転する

民法上,相続人が存在しないことにより遺産が国庫に帰属すると規定されています。
実際には相続人が存在しない場合には,最終的な帰属が確定するまでには一定の手続が必要です。
結局,相続財産管理人による一定の手続が完了した時点で国への権利の移転の効果が生じるのです。

<相続人不存在による国庫帰属のタイミング>

あ 手続と権利の変動の関係

相続人が不存在である
民法951条以下の手続が行われていない場合
→相続財産は国庫に帰属しない
※東京簡裁昭和45年6月4日
※財産管理実務研究会編『不在者・相続人不存在財産管理の実務 新訂版』新日本法規出版2005年p304

い 国への権利移転時期

国庫帰属と決まった場合
→相続財産管理人は財産を国庫に引き渡す
引き継ぎが完了した時点において
→相続財産が国庫に帰属する
※最高裁昭和50年10月24日
※谷口知平ほか編『新版 注釈民法(27)相続(2)』有斐閣1989年p739

3 財産の種類によって財務省か家庭裁判所が遺産を引き継ぐ

相続人不存在によって国が遺産を引き継ぎます。
国とはいっても,実際の手続としては財務省か家庭裁判所が担当となります。
財産の種類によって,いずれかが遺産を引き継ぐのです。

<国庫引き継ぎの担当機関>

あ 国有財産法の対象財産

国有財産法2条1項の財産(後記※1)について
=財務省所管の普通財産となる
→相続財産管理人から所管財務部長に引き継ぐ

い その他の財産

『あ』以外の財産について
→相続財産管理人から家庭裁判所に引き継ぐ
※昭和25年3月10日大蔵省管第880号大蔵省管財局長・同省主計局長回答

4 『国有財産』は不動産・船舶・有価証券など

『国有財産』として認められる財産の種類は決められています。
これに該当すると国庫帰属での担当機関は財務省となるのです。

<『国有財産』の種類(概要・※1)>

『ア〜カ』の財産のうち一定のものを『国有財産』とする
ア 不動産
イ 船舶・浮標・浮桟橋・浮ドック・航空機
ウ 『ア・イ』の財産の従物
エ 地上権・地役権・鉱業権・など
オ 特許権・著作権・商標権・実用新案権など
これらは国庫帰属の対象外である
詳しくはこちら|相続人不存在では遺産は特別縁故者か共有者か国庫に帰属する
カ 株式・新株予約権・社債・地方債・信託の受益権・出資による権利など
※国有財産法2条1項
詳しくはこちら|国有財産法の『国有財産』の定義と分類

5 不動産は財務局長へ引き渡して国が登記申請をする

不動産の国庫帰属の手続のうち,引き渡しは相続財産管理人から財務局長に対して行います。
登記については国が申請します。

<不動産の国庫への引継手続>

あ 引き渡し

現地において相続財産管理人が財務局長に引き渡す
※財産管理実務研究会編『不在者・相続人不存在財産管理の実務 新訂版』新日本法規出版2005年p308

い 登記移転

国庫帰属による所有権移転登記を国が申請する
※谷口知平ほか編『新版 注釈民法(27)相続(2)』有斐閣1989年p740

6 不動産の国庫帰属後の扱い

不動産が国庫に帰属した後は,国有財産法によって管理や処分がなされます。
ところで,賃借権が設定されていた不動産については,契約関係が承継されます。
国が賃貸人という状況になるのです。

<不動産の国庫帰属後の扱い>

あ 基本的な管理・処分

国庫帰属により国庫に引き継がれた不動産について
→財務局長などが,管理・処分する
詳しくはこちら|国有財産法の『国有財産』の定義と分類

い 賃借権の負担の承継

国庫帰属前から不動産が権利の目的となっている場合
例=賃借権の目的となっている
→国が前所有者の地位(貸主)を承継する
→以後は国と権利者との間で法的関係(賃貸借)が生じる
※財産管理実務研究会編『不在者・相続人不存在財産管理の実務 新訂版』新日本法規出版2005年p308

う 賃借権の承継における賃貸人の承諾(概要)

(主に不動産を目的とする)賃借権について
法律の規定による承継である
→賃貸人の承諾を要しない
※東京地裁昭和47年8月23日
詳しくはこちら|特別縁故者への財産分与・国庫帰属は賃借権譲渡に該当しない傾向

7 不動産以外の財産の国庫への引継手続

有価証券は『国有財産』に該当するので,財務局長が現物を引継ぎます。
現在では上場株式は原則的に株券が発行されていないので,保管振替の手続で済みます。
また,現金(日本円)や金銭債権は家裁の歳入となる関係で,歳入徴収官が徴収する手続を行います。
外国通貨や動産は物品扱いとなり,家裁の物品出納官が引き継ぎます。

<不動産以外の財産の国庫への引継手続>

あ 有価証券

相続財産管理人が所管財務局長へ有価証券現物を引き渡す
※財産管理実務研究会編『不在者・相続人不存在財産管理の実務 新訂版』新日本法規出版2005年p311

い 現金(内国通貨)

家庭裁判所の歳入徴収官が相続財産管理人に納入告知書を発する
→相続財産管理人は納入告知書に基づいて納付する

う 金銭債権(原則)

家庭裁判所の歳入徴収官が債務者に納入告知書を発する
→債務者は納入告知書に基づいて納付する
※債権管理法11〜13条,債権管理法施行令10,11条
※会計法6条,歳入徴収官事務規程9条1項,2項

え 預貯金(実務)

預貯金やその利息について
相続財産管理人が払い戻しを受けて現金化する
金銭として国庫に納付する
実務ではこのような扱いが多い
※松岡登『相続財産の清算と国庫帰属の手続』/『判例タイムズ688号(1989年4月)』p283

お その他の財産

『あ〜う』以外の財産について
例=外国通貨・動産
→相続財産管理人が家庭裁判所の物品出納官に引き渡す
※財産管理実務研究会編『不在者・相続人不存在財産管理の実務 新訂版』新日本法規出版2005年p313

8 動産の国庫帰属後の扱い

遺産のうち外国通貨や動産などは,相続人不存在により家裁が引き継ぎます。
一般的にはその後,売却して日本円に換価し,歳入となります。

<動産の国庫帰属後の扱い>

国庫帰属により家庭裁判所(国庫)が物品受入をした動産について
→家庭裁判所は,物品の売却・廃棄・借用などの処分を決する
→実施する
詳しくはこちら|国有財産法の『国有財産』の定義と分類
※財産管理実務研究会編『不在者・相続人不存在財産管理の実務 新訂版』新日本法規出版2005年p313
※谷口知平ほか編『新版 注釈民法(27)相続(2)』有斐閣1989年p740