デザインなどの著作権が侵害された場合,どのような手段が取れるのでしょうか。

1 キャッチフレーズは原則として著作物にならない;著作物の定義
2 実用品でも『美的効果』により著作権が認められる
3 Nゲージなどの鉄道模型→『実用品』の特徴が強い→著作物ではない
4 鉄道車両など,『物』にはパブリシティ権は認められない
5 ポスターのデザインを流用すると著作権法違反となる|著作権登録
6 著作権侵害に対しては差止請求損害賠償請求ができる
7 著作権侵害に対して『オフィシャルサイトリンク』を要請する対応もある

1 キャッチフレーズは原則として著作物にならない;著作物の定義

<事例設定>

A社で,商品にキャッチフレーズを付けて売っています
B社が同じキャッチフレーズを使っている

原則として著作権の侵害(違反)とはなりません。

著作物の定義>

『思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの』

商品をアピールするキャッチフレーズは,余程特殊なものでない限り,著作物には該当しないと考えられます。

2 実用品でも『美的効果』により著作権が認められる

著作権法上,著作物の要件として『文芸,学術,美術又は音楽』に属することが必要とされています。
そこで,通常,実用品については,これらに該当せず,著作物には該当しないということになります。

しかし,一般論として,実用品でありつつ,同時に美術(性)もある,ということはありえます。
『美術工芸品』(著作権法2条2項)と呼ばれるカテゴリが,まさに実用かつ美術の両方を兼ね備える,ということになりましょう。
この点,知財高裁(後掲)の解釈は,次のとおりです。

実用性があっても著作物となる要件>

その製品の目的,性質等の諸要素を総合して↓を有する場合に『美術の著作物』とする
『美術工芸品と同視できるような美的な効果』
※知財高裁の裁判例

3 Nゲージなどの鉄道模型→『実用品』の特徴が強い→著作物ではない

新幹線その他の電車のデザインについては,物理的な空力特性を深く考慮して作られています。
もちろん,見た目のクールさ,ということも考慮されていますが,空力特性の方が優先でしょう。
そこで,『美術工芸品と同視できるような美的な効果』とまでは認められない可能性が高いと思われます。
そうすると,電車の車両デザイン自体には著作権はない,ということになります。

実際に,電車のミニチュア(Nゲージ,プラレールなど)については,作成者=JRなどの鉄道会社,の許諾なしに販売されています。

なお,仮に美術工芸品に該当したとしても,次の解釈として適法とされることもあります。

<例外規定による鉄道模型の適法解釈>

屋外設置物の権利制限の規定の拡張ないし類推解釈により,複製等の行為が適法となる
著作権;屋外設置物の利用制限;乗り物,建物

4 鉄道車両など,『物』にはパブリシティ権は認められない

著名人の画像・動画については『パブリシティ権』として保護されることが有ります。
『顧客吸引力』の無断利用について違法とするものです。
この点,新幹線や特急電車の車両を撮影した動画を投稿することも,同じように考えられそうです。
しかし,人物以外=物・動物についての撮影については『パブリシティ権』が否定されています。
別項目|物・動物にはパブリシティ権は認められない
結論として,電車を撮影した動画の投稿は適法,ということになります。

もちろん,過激な撮影方法によって,責任を問われる事例はあります。
鉄道会社や公共の木を切除するとか,一定の範囲内への侵入などです。
特に新幹線の場合,専用の法律でルールが作られています。
新幹線特例法によって,軌道中心線から3メートル以内に立ち入ること自体が違法となります(新幹線特例法3条2号)。

5 ポスターのデザインを流用すると著作権法違反となる|著作権登録

<事例設定>

良いデザインのポスターをA社が販売している
B社の会社紹介パンフレットに,これと同じようなデザインが使われている

この場合,デザインの作成過程によって,法的な扱いが異なります。

(1)A社が作成,または購入したデザインをB社が流用した場合

違法な『複製』になります。
A社の著作権を侵害しています。
A社はB社に対して,損害賠償請求使用の差止請求ができます。

(2)B社が作成したら,たまたま似たデザインになった場合

何ら違法ではありません。
何も請求はできません。

(3)最初にデザインを作ったデザイナーがA社,B社に2重に販売していた場合

著作権は無体財産権です。
つまり,『物理的な物』があるわけではないので,簡単に複数に販売できてしまうのです。
そこで,『著作権譲渡の登録』という制度があります。
『著作権譲渡の登録』を先にした方が優先する,というルールです。
文化庁で登録事務を行っています。
登録が優先した方は,他方に対し,使用差止を請求できます。
なお,当然,1番悪いのは2重に販売したデザイナーです。
使用できなくなった方の購入者は損賠賠償請求をすることが可能となります。

6 著作権侵害に対しては差止請求損害賠償請求ができる

<事例設定>

A社は,キャラクターをデザイン,作成し,各種の商品として販売している
映像(動画)の販売もしている
あるブログで,A社作成の動画の一部が掲載(アップロード)されていた

法的には,著作権の侵害となります。
程度によって,差止(削除)の請求損害賠償請求などができることになります。

7 著作権侵害に対して『オフィシャルサイトリンク』を要請する対応もある

<事例設定>

A社のキャラクターの登場する映像の一部が不正にアップロードされていた
差止や損害賠償請求以外で対応したい

法的,正式な請求を行う場合は,相手方の正確な特定が必要です。
この特定に手間取ったり,さらに別のサイトにアップロードされる,ということもあります。
そこで,剛から柔に切り換え,別の提案をする方法も最近は多くなっています。

<著作権侵害に対する法的手段以外の対応>

『掲載を許可する条件として,(オフィシャルサイトの)紹介文やリンクを付記する』という提案

不正からプロモーションの一環に転じてしまう,という方法です。

条文

[新幹線鉄道における列車運行の安全を妨げる行為の処罰に関する特例法]
(線路上に物件を置く等の罪)
第三条  次の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
一  列車の運行の妨害となるような方法で、みだりに、物件を新幹線鉄道の線路(軌道及びこれに附属する保線用通路その他の施設であつて、軌道の中心線の両側について幅三メートル以内の場所にあるものをいう。次号において同じ。)上に置き、又はこれに類する行為をした者
二  新幹線鉄道の線路内にみだりに立ち入つた者

判例・参考情報

(判例1ギャロップレーサー上告事件)
[最高裁判所第2小法廷平成13年(受)第866号、平成13年(受)第867号製作販売差止等請求事件平成16年2月13日]
(要旨)上記各法律の趣旨,目的にかんがみると,競走馬の名称等が顧客吸引力を有するとしても,物の無体物としての面の利用の一態様である競走馬の名称等の使用につき,法令等の根拠もなく競走馬の所有者に対し排他的な使用権等を認めることは相当ではなく,また,競走馬の名称等の無断利用行為に関する不法行為の成否については,違法とされる行為の範囲,態様等が法令等により明確になっているとはいえない現時点において,これを肯定することはできないものというべきである。したがって,本件において,差止め又は不法行為の成立を肯定することはできない。