1 刑法の『財物』『物』の意味
2 財産犯の客体(財物と財産上の利益)
3 財物罪の規定上の客体(財物・物)
4 財物の意義(3つの説)
5 刑法245条の解釈
6 情報の財物性(概要)

1 刑法の『財物』『物』の意味

刑法上の犯罪の中に,『財物』や『物』という用語が登場します。
窃盗や横領などの財産犯の中で使われています。
事案によっては,盗んだものが『財物(物)』に該当するかどうかが問題となることもあります。
本記事では,刑法(財産犯)の『財物・物』の意味や解釈について説明します。

2 財産犯の客体(財物と財産上の利益)

最初に,財産犯の客体を大きく2つに分けると,財物(物)財産上の利益になります。

<財産犯の客体(財物と財産上の利益)>

客体 犯罪の分類
財物 財物罪
財産上の利益 利得罪

※大谷實著『刑法講義各論 新版第4版補訂版』成文堂2015年p182

3 財物罪の規定上の客体(財物・物)

財産犯の中の財物罪の客体として,条文の規定では『財物』と『物』の2種類の表記があります。これらに違いはないという解釈が一般的です。

<財物罪の規定上の客体(財物・物)>

あ 規定上の『財物・物』

財物を客体とする財産犯において
条文上,『財物・物』の2つの表記がある

条文上の表記 条文(刑法)
『財物』 235条,236条1項,246条1項,249条1項
『物』 252条,261条
い 『財物・物』の解釈

『財物』と『物』は同じ意味と解される
※大谷實著『刑法講義各論 新版第4版補訂版』成文堂2015年p183

4 財物の意義(3つの説)

財物(物)の意味については,主に3つの見解があります。
有体物とする解釈が一般的です。それ以外にも,管理可能であれば無体物も財物に含める見解があります。管理可能であるもののうち物質性があるものに限定するという見解もあります。

<財物の意義(3つの説)>

あ 有体性説(通説)

ア 見解の内容
財物とは有体物である
イ 民法上の規定(参考)
民法85条では有体物を『物』とする

い 管理可能性説

ア 見解の内容
管理可能な限り無体物も財物とする
イ 古い判例
電気は管理可能であるから財物である
※大判明治36年5月21日

う 物理的管理可能性説

管理可能なもののうち,物質性を備えたものに限定する
該当する例=電気・熱気・冷気などのエネルギー
該当しない例=牛馬や人の労働力,債権
※大谷實著『刑法講義各論 新版第4版補訂版』成文堂2015年p184

5 刑法245条の解釈

ところで,刑法245条では,電気財物とみなしています。
前記の財物の意味の解釈と関係してきます。有体性説からは,特別に(本来財物に該当しない)電気を財物として扱う趣旨であると説明されます。

<刑法245条の解釈>

あ 条文

この章の罪については、電気は、財物とみなす。
※刑法245条

い 趣旨の解釈

『みなす』というのは,本来該当しないことが前提である
財物を原則として有体物に限定している
その上で,例外的に電気を財物として取り扱うものとした
※大谷實著『刑法講義各論 新版第4版補訂版』成文堂2015年p184

6 情報の財物性(概要)

ところで,企業の秘密のように,価値のある情報を不正に持ち出したようなケースでは,情報財物といえるか,という問題が生じます。
これは以上のどの見解からも財物ではないと判断されます。
これについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|情報の財物性・財産上の利益の内容と情報化体物の財物性