1 建物賃貸借の更新料の意味と普及エリア
2 建物賃貸借の更新料の性格
3 更新料の合意と支払義務
4 更新料の合意の有効性判断基準(概要)
5 法定更新における更新料(概要)
6 借地と借家の更新料の違い(概要)

1 建物賃貸借の更新料の意味と普及エリア

エリアによっては,建物賃貸借契約で更新料が決められていることが多いです。
まずは基本的な更新料の意味と更新料の慣行のあるエリアについてまとめます。

<建物賃貸借の更新料の意味と普及エリア>

あ 更新料の意味

期間が満了し,賃貸借契約を更新する際に,賃借人が賃貸人に支払う金銭
※新田孝二『賃貸借契約における更新料の支払義務(1)』/『判例時報825号』p137

い 更新料の慣行のある主要エリア

関東・京都府・滋賀県
※『自由と正義2012年7月』日本弁護士連合会p58〜

2 建物賃貸借の更新料の性格

更新料の性格・位置付けについてはいろいろな見解があります。これ自体がトラブルになるわけではありません。しかし,更新料の有効性などの判断に関係します。

<建物賃貸借の更新料の性格>

あ 更新料の法的性格

次の趣旨の複合的なものである
ア 更新拒絶権放棄の対価
イ 賃借権強化の対価
ウ 賃貸借契約を継続する対価
エ 賃料の補充or前払
※最高裁平成23年7月15日
※下級審裁判例多数

い 判例の変遷

下級審裁判例は見解が分かれていた
『あ』の最高裁判例で複合的性格が認められた

3 更新料の合意と支払義務

更新料は,一般的に支払義務がある,という誤解もあるようです。実際には,合意(条項・特約)がある時に限って発生するものです。

<更新料の合意と支払義務>

あ 基本的事項

更新料の支払義務は合意により発生する
→条項(特約)がある場合に発生する
一定の基準により有効性が判断される(後記※1)

い 合意なし

更新料の合意(条項)がない場合
→更新料支払義務はない

4 更新料の合意の有効性判断基準(概要)

更新料の条項があっても,有効であるとは限りません(前記)。以前は,有効性の判断の見解は大きく分かれていました。平成23年の最高裁判例で基準が統一されました。

<更新料の合意の有効性判断基準(概要;※1)>

『ア・イ』のいずれにも該当する場合
→更新料の合意は有効である
ア 賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載されている
イ 更新料の額が高額過ぎるものではない
※最高裁平成23年7月15日
詳しくはこちら|建物賃貸借の一般的な更新料の合意の有効性判断基準(平成23年判例)

5 法定更新における更新料(概要)

以上の更新料の判断は,約定更新が前提となっていました。そこで,法定更新であれば更新料は適用されない,という見解もありました。
約定更新における更新料の適用はちょっと複雑です。
結論として,最近主流となっている条項では,法定更新でも適用される傾向が強いです。

<法定更新における更新料(概要)>

あ 旧タイプの更新料条項

ア 前提事情
『約定更新』の際の更新料だけが規定されている
イ 解釈の傾向
法定更新における更新料支払義務の有無について
→見解が分かれている

い 新タイプの更新料条項(※2)

ア 前提事情
更新一般について更新料の支払が規定されている
イ 解釈の傾向
法定更新でも更新料支払義務を認める傾向がある
※東京地裁平成22年8月26日
詳しくはこちら|建物賃貸借の更新料の合意の法定更新への適用

6 借地と借家の更新料の違い(概要)

以上の説明は借家の更新料に関するものでした。
この点借地の更新料については,解釈・扱いが大きく異なります。

<借地と借家の更新料の違い(概要)>

あ 借地の更新料(概要)

一般的な更新料支払義務は存在しない
詳しくはこちら|借地の更新料の支払義務(全体・更新料特約なし)
更新料の特約があっても
法定更新については更新料支払義務が否定される傾向がある
詳しくはこちら|更新料特約の法定更新への適用(更新料支払義務)の有無

い 借家の更新料

更新料を支払う合意(特約)がある場合
→更新料を支払う義務がある
法定更新でも支払義務が適用される特約も有効である(前記※2)
※東京地裁平成22年8月26日