【借地借家法の適用がない賃貸借における賃料増減額請求】

1 借地借家法の適用がない賃貸借における賃料増減額請求

借地や借家(建物賃貸借)で、賃料が相場から外れた場合、賃料増減額請求をすることできます。
詳しくはこちら|賃料増減額請求(変更・改定)の基本
この賃料増減額請求借地借家法に定められています。そこで、借地借家法の適用がない賃貸借では使うことができません。ただ、相場から外れた賃料を強制するのも妥当ではありません。そこで結論として賃料増減額請求が認められる可能性もあります。本記事ではこのことを説明します。

2 借地借家法の適用がない賃貸借

(1)賃貸借のうち借地借家法適用なしのもの

借地借家法が適用されない賃貸借とはどんなものがあるでしょうか。
土地の賃貸借については、建物所有が目的である場合に借地借家法が適用されるので、それ以外のものが借地借家法適用なしとなります。たとえば駐車場や資材置き場、太陽光パネル用地などの用途での賃貸借が挙げられます。
建物の賃貸借については(特殊な例外以外は)すべて借地借家法が適用されます。
土地、建物以外を対象とする賃貸借はもちろん、借地借家法の適用はありません。典型は動産の賃貸借です。

(2)「物」以外の賃貸借(に準じる契約)

それ以外に、(所有権以外の)権利の賃貸借も挙げられます。たとえば漁業権、電話加入権、企業、事業(営業)などの賃貸借が実例です。
なお、「賃貸借」の対象は「物」だけなので権利については正確には「賃貸借に準じる関係」ということになります。
詳しくはこちら|賃貸借の対象物(目的たる物)
この点「共有持分」についてはさらに理論が複雑になります(後述)。

3 慣習による賃料増減額請求

ところで、借地や借家については、借地借家法も、その前身である借地法・借家法もない時代から判例は賃料増減額請求は認めていました。その根拠は慣習でした。正確には民法92条または法例2条(現在の法適用通則法3条)によって認めていたのです。
詳しくはこちら|借地法・借家法の立法前の賃料増減額請求(慣習・事情変更の原則)
そこで現在でも、賃貸借のうち借地借家法の適用がないものについて、慣習による賃料増減額請求が使える(これを使うしかない)という発想もあります。
ただ、この点、慣習となっているものはすでに法規となっている、といえるかもしれません。そうだとすると、それを裏返して、法規になっていないものは慣習といえるほど広まってない、ということになります。慣習として認められない可能性も十分にあります。

4 事情変更の原則による賃料増減額請求

借地や借家の賃料増減額請求について、その実質事情変更の原則といえます。
詳しくはこちら|借地法・借家法の立法前の賃料増減額請求(慣習・事情変更の原則)
事情変更の原則とは、民法1条2項の信義誠実の原則の1つであり、契約締結の後で想定外の事情が生じたときに、契約内容の変更や契約の解消を認める理論です。
詳しくはこちら|事情変更の原則(契約後の想定外の事情による変更・解除)
借地借家法の適用がない賃貸借について、事情変更の原則により賃料増減額請求を認めるという解釈は十分あり得ます。

5 借地借家法の類推適用による賃料増減額請求

借地借家法の適用がない賃貸借について、賃料増減額請求を認めるとした場合、前述のような一般条項を使うくらいだったら、借地借家法の賃料増減額の規定を類推適用する、という発想もあります。動産の賃貸借だと借地借家法から遠い感じがしますが、土地の賃貸借であれば借地借家法から近いとも考えられるので類推適用が認められる可能性は十分にあると思います。
借地借家法の類推適用を認める場合、民事調停法24条の2の調停前置も適用することになると思います。

6 共有者間で合意した使用対価の増減額請求

ところで共有者間で毎月の使用対価(金額)を決めることがよくあります。この合意の法的性質は賃貸借そのものではありません。賃貸借に準じる関係のようにみえますが、混同が関係するので理論的には複雑になります。
このような実際のケースで、裁判所が特に理論を示すことなく、「共有持分の賃貸借」を認めた上で、借地借家法の賃料減額請求を適用した、おかしみのある裁判例もあります。
詳しくはこちら|共有者間で合意した使用対価(償還義務)の増減額請求

本記事では、借地借家法の適用がない賃貸借における賃料増減額請求について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に現在の賃料の金額の改定に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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