1 区画整理による借地上の建物の移動の影響(地主の承諾の要否)
2 区画整理(換地)の際の建物の移動の必要性(前提)
3 借地上の建物の再築(滅失)による影響(前提)
4 曳行移転による借地関係への影響
5 移築(解体移転)による借地関係への影響
6 (純粋な)新築による借地関係への影響

1 区画整理による借地上の建物の移動の影響(地主の承諾の要否)

土地の区画整理があると、建物を従前地(従前の土地)から新たに与えられる土地((仮)換地)に移動する必要がでてきます。
建物を移動すると、建物の権利がどうなるか、という問題があります。
詳しくはこちら|区画整理の際の建物移動における建物の権利の扱い
さらに、もともとの土地(従前地)が借地となっていた場合には、また別の問題が発生します。それは、建物の移動について、地主の承諾や承諾料の支払が必要かどうか、という問題です。本記事ではこのことについて説明します。

2 区画整理(換地)の際の建物の移動の必要性(前提)

区画整理で行われることを簡単にいうと、従前地が取り上げられ、その代わりに換地を与えられる、ということになります。そこで、従前地の上に存在した建物を収去(解体)して、換地に建てる(移動する)必要があるのです。
詳しくはこちら|区画整理の際の建物移動における建物の権利の扱い

3 借地上の建物の再築(滅失)による影響(前提)

区画整理の説明に入る前に、一般論として、借地上の建物を再築(建て替える)ことに関する基本的なルールを押さえておきます。
なんとなく、地主の承諾が必要で、承諾してもらうには承諾料を支払うことになると思う方も多いでしょう。大体合っていますが、不正確なところがあります。
正確には、増改築禁止特約がある場合に、地主の承諾が必要になります。この場合に承諾なしで再築すると、借地契約を解除されることがあります。
一方、増改築禁止特約がない場合には、再築の際、地主の承諾は必要ありません。ただし、平成4年8月以後に始まった借地であり、かつ、最初の更新よりも後(どんなに早くでも令和4年8月)であれば、増改築禁止特約がなくても地主の承諾は必要になります。
増改築禁止特約があってもなくても、地主の承諾があれば、借地期間が延長します。
また、通常、地主が再築を承諾する場合、承諾料が必要になり、その相場は更地価格の3%程度となっています。
詳しくはこちら|借地上の建物の増改築許可の承諾料の相場(財産上の給付の金額)
問題は、建物の移動が「再築」にあたるかどうか、です。正確には、「建物を滅失させて新たに築造する」

借地上の建物の再築(滅失)による影響(前提)

あ 解除・解約

ア 増改築禁止特約あり 増改築禁止特約がある場合、借地上の建物の「増改築」には地主の承諾またはこれに代わる裁判所の許可が必要である
地主に無断で「増改築」をした場合、借地契約を解除されることがある
イ 増改築禁止特約なし 増改築禁止特約がなければ承諾なしの再築でも解除されることはない
(新法時代の借地で、かつ、更新後の再築(滅失+築造)であれば解約される)

い 承諾による借地期間延長

(増改築禁止特約の有無に関わらず)
地主の承諾を得て建物が再築(滅失+築造)された場合、借地期間が延長する
詳しくはこちら|借地上の建物の滅失や再築による影響のまとめ(新旧法全体)

4 曳行移転による借地関係への影響

では、区画整理に伴う建物の移動が、再築(増改築)にあたるかどうか、ということを以下、説明します。
その判定は建物を移動する方法によって違ってきます。
まず、建物を解体せずに物理的にそのまま移動させる方法(曳行移転)については、建物そのものには手を付けていないので、再築(増改築)には当たらないといえます。
そこで、増改築禁止特約がある場合でも、地主の承諾や承諾料の支払は必要ない、ということになります。

曳行移転による借地関係への影響

あ 再築の判定

建物の滅失もなく、建物の同一性も維持されている
詳しくはこちら|建物の移動(移築・再築・曳行)における建物の同一性・「滅失」該当性
→再築(増改築)があったことにならない

い 結論

曳行移転をしても、(増改築禁止特約がある場合でも)地主の承諾(承諾料)や裁判所の許可が必要にはならない

5 移築(解体移転)による借地関係への影響

次に、移築を考えてみましょう。
いったんは建物を解体(滅失)しています。このことから、登記上は移動前の建物と移動後の建物は別の建物として扱います。しかしこれは登記上だけの話しです。
「増改築」にあたるかどうかでは、同一の建物として解釈する傾向があります。同一の建物なのだから「増改築」ではない、と考えれば、(増改築禁止特約があっても)地主の承諾や承諾料の支払は必要ありません。
ただし、形式的には「移築」も「増改築」に含むといえます。仮にこのように考えると、承諾なしで移築した場合は解除されることになりますが、移築の理由が区画整理であれば解除は否定される傾向が強いと思います。

移築(解体移転)による借地関係への影響

あ 滅失・建物の同一性の判定

建物はいったん滅失している
しかし、(実体法上の)建物の同一性は維持されているともいえる
(登記手続上の建物の同一性はない)
詳しくはこちら|建物の移動(移築・再築・曳行)における建物の同一性・「滅失」該当性

い 「増改築」の意味

借地借家法上の「増改築」は、建物を解体した上で同様の建築物をつくる、という広い意味を持つ
詳しくはこちら|増改築禁止特約における『増改築』の意味と解釈

う 結論

ア 「増改築」該当性 移築は「増改築」に該当する可能性も否定される可能性もある
「増改築」に該当するとすれば、(増改築禁止特約がある場合)地主の承諾(承諾料)や裁判所の許可が必要になる
イ 解除の制限 移築が「増改築」にあたることを前提として、承諾なしで移築した場合でも、借地人による自主的・積極的な建物の滅失(解体)ではない、という特殊性から、自然災害による建物滅失の後の再築と同じように、解除が否定される可能性は十分にある
詳しくはこちら|増改築禁止特約における『増改築』の意味と解釈

6 (純粋な)新築による借地関係への影響

最後に、建物を移動するというよりも、この機会に、まったく新しい材料を使って新築建物を建てる、というケースを考えてみます。というより、考えるまでもなく、再築(増改築)そのものです。増改築禁止特約がある場合には地主の承諾が必要になるはずです。仮に承諾なく新築した場合は、地主が借地契約を解除できることになりますが、実は解除は制限される傾向が強いです。区画整理の際には、借地人が自主的に建物を新しくしようと判断したわけではなく、少なくとも場所を移ることは強制されたといえます。そこで、信頼関係破壊がないという理由で解除は認められない、ということもあり得ます。
ところで実際には、移築と新築の中間形態もあります。旧建物を解体した材料のうち一部と、新たな材料の両方を使って建て直した、というようなケースです。この場合は、材料の割合も含めて考慮して判断することになります。

(純粋な)新築による借地関係への影響

あ 再築の判定

純粋な新築は、再築(増改築)そのものである

い 結論

純粋な新築は、再築(増改築)に該当するので、(増改築禁止特約がある場合)地主の承諾(承諾料)や裁判所の許可が必要になる
ただし、借地人による自主的・積極的な建物の滅失(解体)ではない、という特殊性から、解除できない、という解釈もあり得る

本記事では、区画整理による借地上の建物の移動が、借地関係にどのような影響を与えるか、ということを説明しました。
実際には、個別的な事情によって、法的判断や最適な対応方法は違ってきます。
実際に、借地が区画整理で移動することに関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。