1 一般用語の『増改築』の意味(全体)
2 借地借家法の『増改築』の意味
3 建築基準法の建築・新築・増築・移転の意味
4 『再築』の意味
5 自然による建物の滅失・損壊後の修復の法的扱い
6 大修繕の扱い(概要)

1 一般用語の『増改築』の意味(全体)

借地契約において,増改築を制限する特約があることは多いです。
実際にはどのような工事が制限や禁止されるのかが不明確なケースもあります。
本記事では増改築禁止特約における『増改築』の意味(解釈)をまとめます。
最初に『増改築』を『増築』と『改築』に分けます。
さらに,『修繕』も,その内容(規模)によっては『増改築』に該当します。

<一般用語の『増改築』の意味>

あ 増築(概要)

床面積の増加,附属建物の新築のことである(後記※3)

い 改築(概要)

建物の一部建て直しのことである(後記※4)
再築(完全な建替え)を含む

う 大修繕(概要)

『増改築』に含む(後記※5)
※星野英一『法律学全集26 借地・借家法』有斐閣1969年p195
※稲本洋之助ほか『コンメンタール借地借家法 第2版』日本評論社2003年p121,122

2 借地借家法の『増改築』の意味

前記の『増改築』の意味は,一般用語としてのものです。
借地に関する法的な意味での『増改築』はちょっと違う意味になります。
『増築』と『改築』に分けにくいし,また,分ける意味もないのです。
法律上は『増築』と『改築』で別の規定が適用されるということはないのです。

<借地借家法の『増改築』の意味(※1)>

あ 借地借家法の増改築

増改築許可の規定に『増改築』の記載がある
※借地借家法17条2項,借地法8条の2第2項

い 借地借家法の『増改築』の意味

借地借家法の『増改築』(あ)の意味について
→建築基準法の建築・新築・増築・移転の意味(後記※2)のすべてを含む

う 法律による用語の意味の違い

借地借家法と建築基準法において
→用語の定義(意味)は異なることもある

え 『増築・改築』の区別

『増築』『改築』その他を区別することは実際上困難な場合が多い
区別する実益もない
※澤野順彦『実務解説 借地借家法 改訂版』青林書院2013年p223

3 建築基準法の建築・新築・増築・移転の意味

ところで,建築基準法は建築を主な規制対象しています。
そこで,建築や増築・改築などの用語の定義など,細かい規定があります。
同じ用語でも借地借家法とは意味が違うこともあります(前記)。
ただし,解釈や適用で参考になりますので,まとめておきます。

<建築基準法の建築・新築・増築・移転の意味(※2)>

あ 『建築』

建築物を新築し,増築し,改築し,又は移転すること
※建築基準法2条13号

い 『新築』

建築物のない更地に建築物を造ること

う 『増築』(※3)

敷地内にある在来の建築物に,建築面積が床面積,延べ面積を増加させること

え 『改築』(※4)

敷地内にある在来の建築物の一部若しくは全部を除却し,又は災害等によって滅失したのち引き続き従前の建物と,用途,構造,規模の著しく異ならない建築物を造ること

お 『移転』

同一の敷地内における移転をいう
※荒秀ほか『改訂 建築基準法 特別法コンメンタール』第一法規出版1990年p54

4 『再築』の意味

借地借家法では建物の『再築』という用語も出てきます。
いわゆる建物の建替えのことです。
借地借家法には『再築』した時に適用される規定があります。
『増改築』との関係では『再築』は『増改築』に含まれるという関係になります。

<『再築』の意味>

あ 一般用語としての『再築』の意味

『再築』という用語の一般的な意味について
→従前の材料を使用して建築すること(という意味もある)

い 借地借家法の『再築』の意味

建物滅失後に同一の借地上に新たに建物を築造すること
→条文の見出しとして『再築』が使われている
借地借家法の『増改築』の概念(前記※1)に含まれる
※借地借家法7条,18条
※澤野順彦『実務解説 借地借家法 改訂版』青林書院2013年p223

5 自然による建物の滅失・損壊後の修復の法的扱い

実務では,災害などで建物が消滅や損壊することがあります。
当然,借地人としては急いで修復しようと考えます。
これについて増改築禁止特約で禁止される(増改築に該当する)という解釈と,禁止されないという解釈があります。
ただし,どちらの解釈だとしても,結論としては,違反としての解除は認められない方向になります。

<自然による建物の滅失・損壊後の修復の法的扱い>

あ 前提事情

人為的でない原因により建物の全部or一部が滅失した
その後借地人が建物を修復した

い 一般的な実務の扱い

実務では『増改築禁止特約』の対象として扱っている

う 理論的な解釈

『増改築』には該当しないという理論もあり得る
→『増改築禁止特約』の対象ではない
=地主は解除できないという結論になる

え 実際的な結論の同一性

借地人が無断で『あ』の工事を行った場合
『い』の見解を前提にしても
修復or再築に差し迫った事情があるといえることが多い
→無断増改築には背信性がない
→地主の解除は効力を生じない方向性となる
※名古屋高裁昭和54年6月27日
※澤野順彦『実務解説 借地借家法 改訂版』青林書院2013年p226

6 大修繕の扱い(概要)

建物の修繕は,その規模によっては『増改築』に含まれます(前記)。
実際に,増改築禁止特約で禁止される工事か,そうでない工事か,という見解の対立が生じるケースは多いです。

<大修繕の扱い(概要;※5)>

一定の規模の大きさに至る『修繕』について
→『増改築』として扱う
詳しくはこちら|借地上の建物の『修繕』の意味と修繕禁止特約の有効性