【借地の更新拒絶(異議)の『遅滞なく』の判断(旧法・新法共通)】

1 借地の更新拒絶(異議)の『遅滞なく』の判断
2 異議の『遅滞なく』の判断の枠組み
3 異議の『遅滞なく』を判断した裁判例(集約)
4 満了後3か月を遅滞ありと判断した判例
5 満了後1年半を遅滞なしと判断した判例

1 借地の更新拒絶(異議)の『遅滞なく』の判断

借地契約の期間が満了した際(後)に,地主が『遅滞なく』異議を述べないと,法定更新となります。これは旧借地法,借地借家法で共通しています。実務ではこの異議のことを更新拒絶と呼ぶことも多いです。
詳しくはこちら|借地の更新拒絶(異議)の方法と時期の基本(旧法・新法共通)
地主が述べた異議が『遅滞なく』といえるかどうかが問題となることがあります。
本記事では,この異議の『遅滞なく』の判断について説明します。

2 異議の『遅滞なく』の判断の枠組み

地主が異議(更新拒絶)を述べるタイミングは,契約満了のであり,かつ,遅滞ない(遅滞なく述べる)ことが要求されています。
期間満了から何か月後までかというような明確な期間が規定されているわけではないのです。個別的な事情によって判断されるのです。
大雑把にいうと,期間満了後に地主から何も言われない借地人にとって不意打ちといえるかどうかで決まるといえます。

<異議の『遅滞なく』の判断の枠組み>

あ 基本

異議遅滞なく述べなくてはならない
どの程度の期間内に異議を述べれば遅滞なく述べたといえるか
→具体的事案の諸事情に応じて認定(判断)する
※水本浩ほか編『基本法コンメンタール 借地借家法 第2版補訂版』2009年p186
※稲本洋之助ほか編『コンメンタール借地借家法 第3版』日本評論社2010年p31

い 判断の目安

(異議を述べた時期が期間満了の一定の日時を経過した後であっても)
地主が期間満了の際直ちに異議を述べることが容易に期待できず,借地人もまたその時期にはこれを予期していないような特段の事情がある場合
遅滞なく述べられた異議にあたる
※最高裁昭和39年10月16日

3 異議の『遅滞なく』を判断した裁判例(集約)

地主の異議が『遅滞なく(遅滞なし)』といえるかどうかを判断した裁判例を紹介します。
平均的には,期間満了から半年程度後までが遅滞なしと判断される傾向があります。
中には3か月後で,すでに遅滞ありであると判断した判例があります。逆に1年半後でも,まだ遅滞なしであると判断した判例もあります。ただ,これらは特殊事情が反映したものです。これらの特殊な事情を反映した事例については後述します。

<異議の『遅滞なく』を判断した裁判例(集約)>

異議を述べた時期 判断結果 判例
契約期間満了の2か月後 遅滞なし 東京地裁平成7年2月24日
契約期間満了の3か月後 遅滞あり 大判昭和3年10月31日(後記※2
契約期間満了の7か月後 遅滞なし 横浜地裁昭和57年12月24日
契約期間満了の1年半後 遅滞なし 最高裁昭和39年10月16日(後記※3
契約期間満了の1年10か月後 遅滞あり 東京高裁平成元年10月30日
契約期間満了の2年後 遅滞あり 東京高裁平成6年3月28日

4 満了後3か月を遅滞ありと判断した判例

期間満了から3か月後に地主が明渡請求訴訟を提起した判例の内容を説明します。
借地人は地主に対して借地契約の継続を懇願していました。しかし地主は,継続を認めるとも認めない(更新拒絶)とも回答しませんでした。
このような事情があったので,その後の明渡訴訟提起は借地人にとって不意打ちといえるものでした。
結局,最高裁は遅滞なしとはいえないとして,更新拒絶を認めない,つまり,法定更新を認めました。

<満了後3か月を遅滞ありと判断した判例(※2)

あ 事案

期間満了後,借地人が地主に対して賃借を継続することを懇願した
これに対して地主は回答しなかった
期間満了から3か月が経過した時点で,地主は明渡請求訴訟を提起した

い 裁判所の判断

遅滞なく異議を述べたとはいえない
※大判昭和3年10月31日

5 満了後1年半を遅滞なしと判断した判例

期間満了から1年半後の地主の異議を,遅滞なしと認めた判例の内容を説明します。
1年半という期間だけをみると,遅い(遅滞あり)と思えます。しかし,満了時期自体がはっきりと分からない状況でした。そこで,裁判所は救済的にこの異議を遅滞なしと認めたのです。

<満了後1年半を遅滞なしと判断した判例(※3)

あ 事案

借地契約の成立が約40年前であった
契約を証する書面は残っていなかった
契約当初の関係者がほとんど死亡していた

い 裁判所の判断

地主・借地人ともに借地契約の始期を明確に知りがたい事情があった
→期間満了の際に地主が直ちに異議を述べることは容易に期待できなかった
→遅滞なく異議を述べたといえる
※最高裁昭和39年10月16日

本記事では,借地の更新拒絶(異議)が期間満了からどの程度経過するまで『遅滞なし』といえるかということを説明しました。
実際には,細かい事情や,主張・立証のやり方次第で結論は違ってきます。
実際に借地の更新や終了(更新拒絶)に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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