1 借地の更新拒絶(異議)の方法と時期の基本
2 地主の更新拒絶における『異議』の意味と方法
3 『異議』の意味と方法
4 契約満了前の異議
5 黙示的な異議を認めた判例の特殊事情
6 異議の『遅滞なく』の判断(概要)
7 借地の更新拒絶における正当事由(概要)

1 借地の更新拒絶(異議)の方法と時期の基本

借地契約が満了する時に,地主が異議を述べないと法定更新となってしまいます。これについては旧借地法・借地借家法で共通しています。
詳しくはこちら|借地契約の法定更新|基本|更新拒絶・更新異議・更新請求
つまり,契約を終了させるためには地主が異議を述べる必要があるのです。この異議のことを実務では更新拒絶(の意思表示)と呼ぶことが多いです。
本記事では,更新拒絶(異議)の方法や時期について説明します。

2 地主の更新拒絶における『異議』の意味と方法

まず最初に,異議を定める旧借地法と借地借家法の条文規定を押さえておきます。
規定の文言(文章)は多少違いますが,実質的には同じ内容です。

<地主の更新拒絶(異議)を定める条文>

あ 旧借地法

借地権者借地権ノ消滅後土地ノ使用ヲ継続スル場合ニ於テ土地所有者カ遅滞ナク異議ヲ述ヘサリシトキハ前契約ト同一ノ条件ヲ以テ更ニ借地権ヲ設定シタルモノト看做ス此ノ場合ニ於テハ前条第一項ノ規定ヲ準用ス
※借地法6条1項(原文はカナ)

い 借地借家法

第5条 借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、前条の規定によるもののほか、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りでない。
2 借地権の存続期間が満了した後、借地権者が土地の使用を継続するときも、建物がある場合に限り、前項と同様とする。
※借地借家法5条(1項),2項

3 『異議』の意味と方法

地主が異議を述べる具体的な方法には決まりはありません。契約を更新したくないという意思が読み取れるメッセージであれば足ります。
実務では明確に更新を拒絶するということを内容証明郵便で通知して証拠(記録)にする方法を用います。

<『異議』の意味と方法>

あ 『異議』の基本的な意味

旧借地法6条1項,借地借家法5条2項の地主の『異議』とは
借地権の消滅,借地人が土地使用を継続することによりそれが適法化されることに対し,反対の意思を表示することである

う 異議を述べる方法(基本)

方法に制限はない
地主において契約の更新を欲しない意思がある趣旨が,借地人に汲み取れればよい
※水本浩ほか編『基本法コンメンタール 借地借家法 第2版補訂版』2009年p186
※稲本洋之助ほか編『コンメンタール借地借家法 第3版』日本評論社2010年p30

え 異議を述べる方法の具体例

更新を拒絶すると伝える
明渡を請求する
地代の受領を拒否する
※稲本洋之助ほか編『コンメンタール借地借家法 第3版』日本評論社2010年p30,31
※『判例タイムズ440号』p89

4 契約満了前の異議

条文上,借地人が借地権の消滅後(契約満了後)に土地の使用を継続していることが異議の前提となっています。そこで,異議を述べる時期は,契約満了のである必要があります。
つまり,契約満了よりもに異議を述べても,形式的には有効ではないということになります。とはいっても,状況によっては契約満了のにも更新に反対する暗黙の意思表示が続いていると認められることもあります。

<契約満了前の異議>

あ 基本

地主が借地契約の満了に借地人に対して,消滅後は直ちに土地を返還すべき旨を申し入れた
→地主の『異議』にあたらない
※水本浩ほか編『基本法コンメンタール 借地借家法 第2版補訂版』2009年p186

い 黙示的な異議の意思表示

借地契約満了更新しない旨の意思表示をした場合
→状況によっては借地契約満了黙示的に異議を述べたと認められることもある

う 黙示的な異議が認められた事例(概要)

期間満了前に異議を述べた+明渡請求訴訟を提起した
明渡請求訴訟の係属中に期間満了日が到来した
→期間満了後の土地使用継続に対して黙示的に述べたものとした(後記※1)
※最高裁昭和56年3月13日

5 黙示的な異議を認めた判例の特殊事情

借地期間満了のには,地主が明確に異議を述べてはいないケースで,黙示的に異議を述べたと認められた判例(前記)の詳しい内容を説明します。
借地法の施行の時期が,エリアによっては例外的に遅らせられていたのです。その結果,原則的な施行時期と比べて10年間のずれが生じたのです。
結果的には期間満了の10年前に異議を述べた状態になっていました。しかし,裁判所は裁判が係属中は黙示的に異議を述べ続けていたのと同じ扱いをしたのです。

<黙示的な異議を認めた判例の特殊事情(※1)>

あ 異議を述べた時期

借地契約の成立後30年の時点で地主が異議を述べた(更新拒絶)
しかし,この地域は借地契約の成立時点では旧借地法が施行されていなかった

い 借地法の施行日と施行地区
原則的な借地法の施行日 大正10年5月15日
鹿児島市の借地法の施行日 昭和15年9月26日

※借地法附則15条(施行期日),16条(施行地区),大正10年5月勅令207号

う 借地期間の規定の適用結果

借地契約の期間としては20年(民法604条)が適用される
借地契約の成立後40年の時点が(2回目の)期間満了であった

え 異議のタイミング

地主が異議を述べたのは期間満了の10年前であった
期間満了(借地契約の成立後40年)の時点でも,まだ明渡請求訴訟が係属していた

お 裁判所の判断

期間満了後の土地使用継続に対して地主が黙示的に異議を述べたものとした
※最高裁昭和56年3月13日

6 異議の『遅滞なく』の判断(概要)

以上のように,条文上,異議を述べるタイミングは,契約満了のであり,かつ,遅滞ない(遅滞なく述べる)ことが要求されています。
では,期間満了からどの程度の期間が経過するまでが『遅滞なく』といえるかどうか,という問題があります。個別的な事情によって違いますが,大雑把にいうと期間満了から半年程度後までといえます。
これについては別の記事で説明ています。
詳しくはこちら|借地の更新拒絶(異議)の『遅滞なく』の判断(旧法・新法共通)

7 借地の更新拒絶における正当事由(概要)

以上で説明した地主の異議(更新拒絶)があればストレートに借地契約が終了する(更新しない)というわけではありません。
正当事由が認められて初めて契約は終了するのです。
正当事由の内容にはいろいろなものがありますが,主なものは地主と借地人が対象の土地を使用する必要性と明渡料(立退料)です。これについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|借地の更新拒絶・終了における『正当事由』・4つの判断要素の整理

本記事では,借地の更新拒絶(異議)の方法や時期の基本的な内容を説明しました。
実際には,細かい事情や,主張・立証のやり方次第で結論は違ってきます。
実際に借地の更新や終了(更新拒絶)に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。