1 借地条件変更・増改築許可への残存期間の影響(総論)
2 認容決定による短い残存期間の影響
3 短い残存期間と棄却決定の傾向
4 朽廃による残存期間の考慮
5 借地権譲渡許可における残存期間の考慮(参考)

1 借地条件変更・増改築許可への残存期間の影響(総論)

借地条件変更・増改築の許可の審理においては借地の残存期間も必ず考慮すべき事情として規定されています。
詳しくはこちら|借地条件変更・増改築許可の審理における考慮事項と鑑定委員会の関与
本記事では,残存期間がどのように審理結果に影響するか,について説明します。

2 認容決定による短い残存期間の影響

借地条件変更や増改築の許可を認容すると,更新に関する影響が生じます。
これは一般的にいえることで,承諾料(財産上の給付)でカバーする関係にあります。
詳しくはこちら|借地条件変更の承諾料の相場(財産上の給付の金額)
詳しくはこちら|借地上の建物の増改築許可の承諾料の相場(財産上の給付の金額)借地の残存期間が短い場合は,更新(期間満了)が近いです。
そのため,更新に関する影響が特に強く生じます。

<認容決定による短い残存期間の影響(※1)>

あ 認容決定の影響

残存期間がわずかである場合
借地条件変更・増改築許可の認容決定により
『い・う』の影響が特に強く生じる

い 更新請求の可能性アップ

更新拒絶の正当事由が認められにくくなる
→法定更新が認められる可能性が増大する
※借地借家法5条,6条

う 建物買取額のアップ

建物買取請求権の行使による買取金額が上がる
※借地借家法13条

3 短い残存期間と棄却決定の傾向

借地の残存期間が短い場合,更新に関する影響が特に強く生じます(前記)。
この影響の内容は地主に不利益なものです。
そこで,残存期間が短い場合は,棄却されるのが原則です。
ただし,事情によって例外的に認容決定となることもあります。

<短い残存期間と棄却決定の傾向>

あ 原則

残存期間が短い場合の前記※1の結果(影響)について
→地主の不利益が大きい
→原則的に棄却決定となる
※水本浩ほか『基本法コンメンタール 借地借家法 第2版増補版』日本評論社2009年p59
※稲本洋之助ほか『コンメンタール借地借家法 第2版』日本評論社2003年p124
※澤野順彦『実務解説 借地借家法 改訂版』青林書院2013年p218,219

い 例外

一般的な要件以外に『ア・イ』の両方に該当する場合
→認容決定をすることができる
ア 更新見込み
契約更新の見込みが確実である
イ 緊急性
当該時点において申立を認容するための緊急の必要がある
※東京高裁平成元年11月10日
※東京高裁平成5年5月14日;旧借地法の借地条件変更
※澤野順彦『実務解説 借地借家法 改訂版』青林書院2013年p219

う 正当事由充足に関する立証責任

『正当事由充足の見込み』(い)の立証責任について
裁判例では借地人が負担する
反対説もある
※澤野順彦『実務解説 借地借家法 改訂版』青林書院2013年p220;反対説

4 朽廃による残存期間の考慮

旧借地法の規定では,期間が満了しなくても,建物の朽廃によって借地が終了(借地権消滅)します。
朽廃による終了は,期間満了と違って法定更新が適用されません。
ということは,確実に借地が終了するということです。
そこで,地主にとって,借地権という強い負担がなくなる期待が生じている状態といえます。
この期待は正答なものです。
期待を保護するため,借地条件変更や増改築許可は一般的に棄却されます。

<朽廃による残存期間の考慮>

あ 朽廃による借地権消滅(前提)

旧借地法が適用される借地において
法的期間が適用されている場合
→建物の朽廃によって借地が終了する
※借地法2条1項但書
詳しくはこちら|旧借地法における建物の朽廃による借地の終了(借地権消滅)

い 朽廃間近の建物

借地上の建物が朽廃に近い場合
→借地が終了することが期待される状況である

う 棄却決定の傾向

『い』の場合
許可決定は,地主の正当な期待を奪うことになる
→棄却される
※水本浩ほか『基本法コンメンタール 借地借家法 第2版増補版』日本評論社2009年p60
※澤野順彦『実務解説 借地借家法 改訂版』青林書院2013年p219

5 借地権譲渡許可における残存期間の考慮(参考)

借地非訟手続には,借地条件の変更以外のものもあります。
その1つが借地権の譲渡の許可です。
借地権譲渡許可の審理においても借地の残存期間は考慮する事情です。
残存期間が短いと許可しない傾向は借地条件変更と同じです。
ただ,残存期間が短いことが影響される程度は借地権譲渡許可の方が大きいです。
詳しくはこちら|借地権譲渡許可の審理における残存期間・従前の経緯の考慮