【賃貸事例比較法の基本(個別事情による修正や不採用)】
1 賃貸事例比較法の基本(考え方と算定式)
2 賃貸事例比較法の基本
3 個別事情と地上建物の反映
4 時点修正・地点修正(概要)
5 当事者の重複や情報収集不能による不採用
6 鑑定評価基準の引用
7 建物賃貸借における賃貸事例比較法(概要)
1 賃貸事例比較法の基本(考え方と算定式)
継続賃料の算定は複数の算定手法を組み合わせた総合方式を用いられています。
詳しくはこちら|改定賃料算定の総合方式(一般的な比重配分の傾向や目安)
本記事では,算定手法の1つである賃貸事例比較法について説明します。
2 賃貸事例比較法の基本
賃貸事例比較法の基本は,類似する賃貸事例における賃料を参考にするというものです。
<賃貸事例比較法の基本>
あ 基本的手法
対象不動産と類似の借地契約の事例について
賃料の情報を収集する
必要に応じて事情補正,時点修正を施す
地域的要因,個別的要因の比較をする
求められたいくつかの賃料を比較考量する
→当該土地の相当賃料(比準賃料)を求める
※不動産鑑定評価基準p35(第7章第2節Ⅲ4)(後記※2)
い 特徴
本来は『新規賃料』の算定に適した方法である
賃貸事例の情報を取得できないことが多い
→採用できないこともある(後記※1)
3 個別事情と地上建物の反映
個々の類似する賃貸事例は,対象となる賃貸借の賃料に参考となる程度が異なります。
賃貸借の内容に違いがあるはずなので,これを反映させないと不合理な試算となってしまいます。
<個別事情と地上建物の反映>
あ 個別事情の反映(全体)
『ア〜ウ』の事情の異同を踏まえて判断するべきである
ア 事例の土地と対象土地の状況
例;店舗地・宅地の種別など
イ 事例の土地の賃料決定時点と対象土地の価格時点ウ その他の事例土地・対象土地の個別的諸要因
※東京高裁昭和51年5月27日
い 地上建物の反映
地上建物が非堅固建物/堅固建物とで地代水準は大きく異なる
→地上建物の種類を比較において反映させる
※東京高裁昭和53年1月30日
4 時点修正・地点修正(概要)
類似の賃貸事例と比較する際は,異なる条件を反映させます。
異なる条件としての典型は基準の時点と地点です。
ほぼすべての試算において,これらの修正が必要となります。
<時点修正・地点修正(概要)>
試算対象の賃貸借と類似する賃貸事例について
基準時点と場所(地点)が異なる
→調整する必要がある
→時点修正・地点修正を行う
詳しくはこちら|時点修正・地点修正の算定の方法と典型例
5 当事者の重複や情報収集不能による不採用
賃貸事例比較法による試算自体を採用しないということもあります。
<当事者の重複や情報収集不能による不採用(※1)>
あ 類似事案の当事者の同一性と不採用
借主/貸主の一方が同一の類似事例について
→事例には規範性が認められない
→一般的に類似事案として採用しない
※甲府地裁平成16年4月27日;借家について
詳しくはこちら|改定賃料の算定事例(利回り法の利回り率の修正・比重の工夫)
い 事例の収集不能と試算の不採用
他に類似の賃貸事例を収集できない場合
例;対象借地と類似の借地事例が少ない地域
→賃貸事例比較法は採用しない
※藤田耕三ほか『不動産訴訟の実務 7訂版』新日本法規出版2010年p762
詳しくはこちら|改定賃料算定の総合方式(一般的な比重配分の傾向や目安)
6 鑑定評価基準の引用
賃貸事例比較法は不動産鑑定評価基準として採用されています。
鑑定評価基準の中の賃貸事例比較法の規定を引用しておきます。
<鑑定評価基準の引用(※2)>
4.賃貸事例比較法
賃貸事例比較法は、新規賃料に係る賃貸事例比較法に準じて試算賃料を求める手法である。
試算賃料を求めるに当たっては、継続賃料固有の価格形成要因の比較を適切に行うことに留意しなければならない。
※不動産鑑定評価基準p35(第7章第2節Ⅲ4)
詳しくはこちら|改定(継続)賃料に関する不動産鑑定評価基準の規定内容
7 建物賃貸借における賃貸事例比較法(概要)
以上の説明は,借地と建物賃貸借に共通する賃貸事例比較法の算定についてのものでした。この点,賃貸事例比較法の算定の中で,建物賃貸借に特有のものについては,別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|建物賃貸借の相当賃料算定における差額配分法と賃貸事例比較法
本記事では,継続賃料の算定の手法のうち,賃貸事例比較法の基本的な考え方や具体的な算定方法(式)を説明しました。
実際には,細かい事情や主張・立証のやり方次第で結論が違ってきます。
実際に賃料(地代・家賃)の増減額の問題に直面されている方はみずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。
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