1 権利金や更新料なしのケースの賃料算定(総論)
2 権利金や更新料がないことによる公租公課倍率の上昇
3 税務上の『相当の地代』(概要)
4 『相当の地代』と実際の賃料の改定(裁判例)

1 権利金や更新料なしのケースの賃料算定(総論)

現在では,借地において権利金の支払が行われるのは一般的なことです。
しかし,古い時代には,権利意識が低く,知人との間で権利金なしで借地が始まっているケースも多いです。
『自然発生借地権』と呼ぶこともあります。
さらに,更新料もエリアによっては支払うことが一般的であることがあります。
詳しくはこちら|借地の更新料の基本(更新料の意味と支払の実情)
一方,法律上は一律に支払う義務があるわけではありません。
詳しくはこちら|借地の更新料の支払義務(全体・更新料特約なし)
実際に更新料の支払がなされていないケースもあります。
このように,権利金や更新料の支払がない場合は,改定賃料の算定において,これが考慮されます。
どのように影響するのか,については,不動産鑑定評価基準に明確な計算式があるわけではありません。
詳しくはこちら|改定(継続)賃料に関する不動産鑑定評価基準の規定内容
一方,公租公課の倍率として権利金や更新料がないことを反映させた裁判例があります。
また,税務上の扱いとして,権利金がないことを地代の金額の目安を示したものがあります。
本記事ではこのような扱いについて説明します。

2 権利金や更新料がないことによる公租公課倍率の上昇

地代の算定手法の1つに公租公課倍率法があります。実務ではよく使われるものです。
詳しくはこちら|公租公課倍率法の基本(裁判例・倍率の実情データ)
権利金や更新料がないという特殊事情があると,公租公課倍率の相場が大きく上がる傾向があります。

<権利金や更新料がないことによる公租公課倍率の上昇>

あ 特殊事情の例

ア 権利金の授受がない
イ 更新料の授受がない

い 倍率の相場

『あ』の事情がある場合
公租公課の倍率の相場=固定資産税・都市計画税の5~6倍

う 倍率を判断した裁判例

『あ』の事情があるケースについて
地代を固定資産税・都市計画税の6.5倍とした
※東京高裁平成12年7月18日

3 税務上の『相当の地代』(概要)

税務上の通達に『相当の地代』という目安があります。
権利金がない借地の地代の目安を示すものです。金額としては更地価格の6%を賃料の年額としています。
ただし,実際の改定賃料の算定でそのまま使われるわけではありません。

<税務上の『相当の地代』(概要)>

あ 相当の地代(概要)

権利金の授受がない借地について
→税務上,相当とされる地代の算定方法がある
『相当の地代』の目安=更地価格×6%
※国税庁通達・課資2-58(例規)直評9昭和60年6月5日
詳しくはこちら|認定課税|相当の地代・無償返還の届出書|権利金の授受なしの借地→贈与税

い 参考としての活用

地主と借地人との交渉や訴訟において
『相当の地代』が参考として活用されることがある
しかしあくまでも『相続税法上の解釈の方針』である
→改定賃料の算定としてそのまま用いるとは限らない

4 『相当の地代』と実際の賃料の改定(裁判例)

『相当の地代』が,賃料の改定に関して判断された裁判例があります。
この裁判例の内容を元にして説明します。

<『相当の地代』と実際の賃料の改定(裁判例)>

あ 事案と裁判所の判断

借地の開始時に権利金の授受がなかった
改定賃料として『相当の地代』をそのまま使うことは否定した
改定賃料を収益性を基礎として算定した
適正な借入金利として7%を採用した
改定賃料の金額は公租公課の6.5倍であった
※東京高裁平成12年7月18日

い 裁判例の評価

『あ』の裁判例の判断について
改定賃料の算定のプロセスに関する批判が多い
例;借入金利を7%と設定するなど
→この算定方法は主流ではないといえる
=再現可能性が低い