1 建物賃貸借契約の終了の種類
2 期間の定めあり|更新の種類=合意更新・法定更新
3 賃貸人が更新を阻止する方法
4 賃貸人の異議のタイミング(規定と裁判例)
5 借家人の保護|更新拒絶・解約申入では『正当事由』が必要
6 賃借人からの『解約』については『正当事由』は不要
7 『解約申入』の際は実際には明渡条件について協議する

1 建物賃貸借契約の終了の種類

建物賃貸借=借家契約が『終了』する状況は4つに分類できます。
借家契約の終了事由をまとめます。

<建物賃貸借契約の終了の種類>

あ 合意解除

賃貸人と賃借人が契約の終了について合意する
→契約が将来的に消滅する

い 債務不履行解除

典型例=賃料滞納による債務不履行解除

う 更新拒絶

契約期間満了時に『更新をしない』旨の通知を行う
→『正当事由』があれば契約が終了する

え 解約申入(解約告知)

『ア・イ』のいずれかに該当する場合
→賃貸人or賃借人は解約申入をすることができる(後記※n)
一定期間経過後に契約は終了する
『解約告知』『解除予告』と呼ぶこともある
詳しくはこちら|期間の定めのない建物賃貸借の解約申入・解約予告期間
詳しくはこちら|建物賃貸借の中途解約と解約予告期間(解約権留保特約)

前記の『終了事由』があれば自動的に賃貸借契約が終了するわけではありません。
借家人保護のためのいくつかのルールがあるのです。
後述します。
なお,賃貸借契約一般の終了事由の分類は別記事で説明しています。
詳しくはこちら|賃貸借契約の解除|種類・分類|催告・相当期間・信頼関係破壊理論

2 期間の定めあり|更新の種類=合意更新・法定更新

建物賃貸借では『終了』が大きく制限されています。
逆に言えば『契約の継続=更新』が強く保護されているのです。
まずは『更新』の種類を整理しておきます。

<期間の定めあり|更新の種類>

あ 合意更新

オーナー・賃借人が合意するもの
現実には非常に多い種類である

い 法定更新

次の事情があると『更新されたことになる』という制度
ア 更新拒絶がなされなかった
イ 満了後の使用継続+オーナーが遅滞なく異議を述べない

オーナーが合意更新もせず,また,更新拒絶もしない場合は消去法で『法定更新』となるのです。

3 賃貸人が更新を阻止する方法

仮にオーナーが『更新拒絶』をしても『正当事由』がないと無効(終了しない)となります。
そして『更新拒絶が有効』だとしても,まだ安心できません。
その後賃借人が『建物の使用を継続』していたら『異議』を出さないと結局法定更新になります。

<賃貸人が更新を阻止する方法>

あ 更新拒絶の通知

期間満了の1年前〜6か月前に『更新拒絶の通知』をする
正当事由がないと無効である(後記)
※借地借家法26条1項本文,28条

い 賃借人の使用継続

期間満了後において
賃借人が建物の使用を継続した場合
→そのままでは『法定更新』となる
法定更新となると『期間の定めなし』となる
※借地借家法26条1項但書

う 『異議』の申述

賃借人が使用を継続している(い)状況において
賃貸人はさらに『遅滞なく異議を述べる』
→『契約終了』を維持できる
※借地借家法26条2項

実務では契約満了の前後でしっかりと賃借人に『退去の要請』を書面で通知します。
ここで『遅滞なく』のタイミングについて問題となった判例があるので紹介します。

4 賃貸人の異議のタイミング(規定と裁判例)

建物賃貸借の『更新』時の『異議』についての判例を紹介します。

<賃貸人の異議のタイミング(規定と裁判例)>

あ 条文規定

期間満了時に賃貸人が異議を述べる時期について
『遅滞なく異議を述べる』必要がある
※借地借家法26条2項

い 特殊な事案

賃貸人は継続的に明渡を要求していた
→期間満了から66日後に賃貸人は訴訟を提起した

う 裁判所の判断

賃貸人の『異議』は有効である
※最高裁昭和25年5月2日

この事例では『遅れたのは仕方がない』と評価されたのです。

5 借家人の保護|更新拒絶・解約申入では『正当事由』が必要

更新拒絶・解約申入が認められると賃借人は退去させられます。
この点,政策として『借家人の保護』が非常に強化されています。
更新拒絶・解約申入については,一定のハードルが課せられています。
『正当事由』が必要,という規定です。
これについては別記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら|建物賃貸借終了の正当事由の内容|基本|必要な場面・各要素の比重

6 賃借人からの『解約』については『正当事由』は不要

一方,賃借人からの解約申入の際には,このような前提条件は不要です。
契約を終了させることの制限はオーナーだけに適用されます。
借地借家法自体の趣旨が借主保護なのです。

7 『解約申入』の際は実際には明渡条件について協議する

賃貸人・賃借人,いずれからの『解約申入』についても,相手方の同意は不要です。
実務上は,まずは,双方の納得できる退去時期などの条件を決めるべく協議をトライするのが一般的です。
そして,明渡の条件について合意に達した場合は『合意解除』として書面に調印することが多いです。