【共有不動産の賃貸借|典型例|契約締結】

1 共有不動産の賃貸借|締結|管理|実例
2 共有不動産の賃貸借|更新|管理|実例
3 共有不動産の賃貸借|共有者の意思決定方法
4 共有不動産の賃貸借|締結|変更|実例

1 共有不動産の賃貸借|締結|管理|実例

共有不動産を賃貸するというケースはとても多いです。
本記事では,具体例を元に法律的な問題点を説明します。
まずは『貸せるかどうか』という疑問について説明します。

<共有不動産の賃貸借の締結(管理行為分類)の実例(※1)

あ 疑問

兄弟A・B・Cが共有している土地がある
持分は3分の1ずつである
友人Dが貸して欲しいと言っている
資材・機材を置く場所・駐車場として使う目的である
A・Bは賛成しているが,Cが反対している
貸してあげることはできないのか

い 結論

資材置き場は建物所有目的ではない
→借地借家法の適用はない
→短期賃貸借の期間の範囲内であれば『管理』に該当する
→土地なので5年以内であれば『管理』となる
→この範囲ではA・Bだけで持分が過半数に達する
→Cが反対していても賃貸できる

共有不動産の賃貸借契約締結の意思決定の場面です。
分類上、管理・変更行為のいずれかに該当します。
どちらに該当するか,によって,必要な共有者の数が変わってきます。
詳しくはこちら|共有物の賃貸借契約の締結の管理行為・変更行為の分類
この事案では管理行為に該当します。
そこで,A・Bだけで貸すという決定が可能となりました。

2 共有不動産の賃貸借|更新|管理|実例

共有不動産の賃貸借の『更新』の場面の具体例です。

<共有不動産の賃貸借|更新|管理|実例>

あ 疑問

兄弟A・B・Cが共有している土地がある
持分は3分の1ずつである
A・Bの賛成で資材置き場として友人Dに賃貸した
賃貸の期間は5年となっている
そろそろ5年の期間が満了する
それ以上は貸せないのか

い 結論

賃貸借契約の更新は再度の『契約締結』と同じである
→(前記※1)と同様の扱いとなる
→新たな期間5年以下であれば『管理』となる
→この範囲ではA・Bだけで更新できる

賃貸借契約の更新は新規の契約締結と同じ扱いに分類されることもありますが、そうではないこともあります。
詳しくはこちら|共有物の賃貸借の更新(合意更新)の変更行為・管理行為の分類
そこで(前記※1)と同様に持分の過半数で決することが可能です。
A・Bだけで決定できます。
賛成派が持分割合の過半数を持っていれば,延々と賃貸借契約を継続することが可能です。

3 共有不動産の賃貸借|共有者の意思決定方法

以上の事案は『管理』行為に該当するものでした。
持分割合の過半数の賛成で意思決定が可能です(前述)。
具体的な意思決定の方法・プロセスをどうするかという疑問もあります。
これについて説明します。

<共有不動産の賃貸借|共有者の意思決定方法>

あ 疑問

共有の不動産がある
過半数の持分の共有者だけで賃貸借契約を行う予定である
具体的にどのように進めれば良いのか

い 結論

話し合いは必須ではない
持分の過半数の共有者だけで決定できる
状況に応じたトラブル予防措置を取ることが望ましい

共有者全員の協議で円満に合意するのはベストです。しかし,法律上協議は必要とされていません。
全員で集まって話し合いをするという機会は必須ではないのです。事情により協議を避ける方が良いこともあります。
協議を行わない場合は一定の通知をしておくとベターです。
反対する共有者への通知書の内容・サンプルも含めて,別に説明しています。
詳しくはこちら|使用方法の意思決定プロセス|具体例|通知書サンプル・トラブル予防

4 共有不動産の賃貸借|締結|変更|実例

共有不動産の賃貸借の意思決定は『管理』だけとは限りません。
『変更』に該当するものもあります。
具体例を用いて説明します。

<共有不動産の賃貸借|締結|変更|実例>

あ 疑問

兄弟A・B・Cが共有している建物がある
持分は3分の1ずつである
友人Dが居住したいと希望している
A・Bは賃貸することに賛成している
Cは反対している
貸せないのか

い 結論

一般的な建物の賃貸借は借地借家法の適用がある
→賃貸借契約締結は『変更』に該当する
→共有者全員の同意が必要である
→Cが反対している以上は賃貸できない

建物の賃貸借は一部の例外を除いて『借家』となります。
つまり,借地借家法の適用を受けます。
そこで意思決定は『管理』ではなく『変更』となります。
共有者全員の同意が必要ということになります。
一部の反対者を押し切って実行する,という方法は取れません。
実質的な『協議』も必須ということになります。

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