【鉱業権・漁業権の準共有|抵当権設定・分割請求は制限される】

1 鉱業権・漁業権の準共有|基本
2 鉱業権の準共有者間の組合の成立(概要)
3 鉱業権の準共有×抵当権設定
4 漁業権の準共有×分割請求

1 鉱業権・漁業権の準共有|基本

所有権以外についての共有も認められます。
『準共有』と呼びます。
詳しくはこちら|準共有の基本(具体例・民法と特別法の規定の適用関係)
本記事では鉱業権・漁業権の準共有について説明します。
まずは基本的事項をまとめます。

<鉱業権・漁業権の準共有|基本>

あ 基本

特別法上の物権についても準共有が認められる
※民法264条
→『い・う』の権利についても準共有が認められる

い 鉱業権

特別法において物権とみなされている
→準共有が認められている
民法上の共有とは異なる扱いもある(後記※1
※鉱業法12条,43条

う 漁業権

特別法において物権とみなされている
→準共有が認められている
民法上の共有とは異なる扱いもある(後記※2
※漁業法23条1項,32条

2 鉱業権の準共有者間の組合の成立(概要)

鉱業権が準共有となっている場合,鉱業法の規定により,当然に民法上の組合が成立します。特殊な法的扱いとして押さえておきます。

<鉱業権の準共有者間の組合の成立(概要・※3)>

鉱業権の準共有者間では人的信頼関係で結びつく
→当然に(合意がなくても)組合が成立する
※鉱業法43条5項
※最高裁昭和37年6月22日
詳しくはこちら|民法上の組合の成立要件(当事者・出資・共同事業・合意)の全体像

3 鉱業権の準共有×抵当権設定

鉱業権の準共有持分への抵当権設定は否定されています。
判例の内容を整理します。

<鉱業権の準共有×抵当権設定(※2)

あ 法令の欠如

鉱業権持分に抵当権設定を予想した法令の規定がない

い 信頼関係・本質との不整合

持分の競落人は組合員となることが強制されてしまう
→人的信頼関係という本質(前記※3)に反することになる

う 結論

『あ・い』の理由により
→鉱業権の準共有持分に抵当権を設定できない
※最高裁昭和37年6月22日

4 漁業権の準共有×分割請求

準共有の漁業権について共有物分割が問題となりました。
裁判例の解釈論をまとめます。

<漁業権の準共有×分割請求(※2)

あ 性質論

漁業権の準共有持分について
→次の性質がある
ア 共同性が強いイ 単一的行為が要請される

い 規定への反映|分割の制限

準共有の漁業権の分割について
→都道府県知事の免許が必要である
※漁業法22条

う 裁判所の判断

漁業権の準共有持分の共有物分割について
→分割に関する制限(『い』)がある
→この規定が優先される
→分割請求はできない
※宮崎地裁延岡支部平成4年3月25日

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