【形式的競売における差引納付の適用(否定)・融資による代金納付(担保権設定)】

1 形式的競売における差引納付の適用・融資による代金納付

共有物分割訴訟の換価分割の判決によって行われる競売(形式的競売)は、共有者自身が入札(買受申出)をすることがよくあります。
詳しくはこちら|形式的競売における共有者の入札(買受申出)の可否
共有者が落札した場合、次の代金納付のプロセスで、差引納付を使えるかという問題が出てきます。また、当該不動産を担保とした融資を受けて納付する代金を調達するという方法もあります。
本記事では、これらについて説明します。

2 形式的競売の共有者の入札における差引納付の発想

形式的競売において共有者が入札し、落札できた場合の代金納付の場面では、共有者が納付した代金のうち一部は後からその共有者に交付されます(戻ってきます)。そこで、戻ってくる金額分を差し引いた額を納付する、という発想が生じます。

形式的競売の共有者の入札における差引納付の発想

共有物分割訴訟の結果、換価分割の判決が下され、確定した
競売をすることになった
共有者Aは3分の2の持分割合である
共有者Aが落札できた
落札額のうち差額である3分の1だけの納付で済ませたい

3 落札した共有者による差引納付(否定)

ところで、一般的な競売手続で、債権者が落札した場合、納付する代金は、債権額を控除するということが可能です。そこで、形式的競売での共有者の落札のケースでも、交付予定額を控除するという発想があるのです(前述)。しかし、これは認められません。いったん全額を納付する必要があります。

落札した共有者による差引納付(否定)

あ 一般的な競売における差引納付(前提)

通常の担保権実行としての競売が実行された
債権者が落札した場合
→実際に納付する代金額は配当予定の債権額を控除できる
※民事執行法78条4項
詳しくはこちら|差引納付の申出|債権者が落札した→代金納付は『差額』で良い

い 形式的競売における差引納付

ア 剰余金の交付 競売手続の最後に共有者剰余金の交付を受けることになる
(オーバーローンの場合は剰余金は生じない)
イ 発想 共有者が落札した場合の代金納付では剰余金分を控除する
=差引納付と同様の方法
ウ 解釈論 差引納付は配当金・弁済金を受領する債権者だけが規定されている
共有者剰余金の控除、という扱いはされていない

4 競売の代金納付と同時の担保権設定

前述のように、形式的競売で落札した共有者はいったん代金の全額を納付する必要があります。この点、当該不動産を担保とした融資によって納付する代金を調達することが可能です。これは形式的競売に限らず、一般的な競売についてあてはまることです。

競売の代金納付と同時の担保権設定

あ 代金納付における担保設定

競売における代金納付と同時に担保設定ができる
平成10年民事執行法改正により可能とされた

い つなぎ融資の利用

落札者は金融機関のつなぎ融資を利用することができる
※民事執行法82条2項

本記事では、形式的競売におけて共有者が落札した場合の差引納付の問題や代金納付に伴う担保権設定について説明しました。
実際には個別的な事情により、法的扱いや最適な手法が異なります。
実際に共有物(共有不動産)や競売に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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【債務者の入札は禁止だが(物上)保証人は除外される】
【宅建業者の不動産評価額(評価根拠)の調査・説明義務】

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