【集会の決議事項のうち『管理・変更』の対象行為・判断基準・具体例】

1 共用部分の『管理』の意味と決議要件
2 共用部分の『管理』|具体例
3 共用部分の『管理』|建物構成部分|該当する範囲
4 共用部分の『管理』|『大きな加工』に該当しない|具体例
5 共用部分の『変更』の意味と決議要件
6 共用部分の『変更』|具体例

1 共用部分の『管理』の意味と決議要件

区分所有法の集会(総会)では,決議事項によって決議要件が異なります。
詳しくはこちら|区分所有法の集会・総会|基本|決議要件|管理規約の効力
本記事では『管理』と『変更』に該当する決議事項の内容を説明します。
まずは決議事項のうち『共用部分の管理』の内容をまとめます。

<共用部分の『管理』の意味と決議要件>

あ 基本的解釈

共有部分の使用・修繕・改良など
『保存行為』を除いた一切の行為

い 決議要件

区分所有者・議決権の各過半数
※区分所有法39条1項

2 共用部分の『管理』|具体例

共用部分の『管理』に該当する行為の具体例をまとめます。

<共用部分の『管理』|具体例>

あ 構成部分の変更に関わらない工事

ア 共用部分の排水管の取り替え工事イ 鉄部塗装工事ウ 外壁の補修工事エ 屋上などの防水工事オ 給水管更生・更新(取替え)工事カ 照明設備キ テレビ共聴設備ク エレベーター設備の更新(取替え)工事

い 構成部分の変更に関わる工事

建物の構成部分の材質・性能のグレードアップ
→このうち一定範囲内のものは『管理』にとどまる
範囲については後記する(※1)

3 共用部分の『管理』|建物構成部分|該当する範囲

建物構成部分の工事は,一定範囲で『管理』に該当します。
どの範囲で『管理』に該当するのか,について整理します。

<共用部分の『管理』|建物構成部分(上記※1)>

あ 基本的構成部分の工事×『変更』

建物構成部分の工事が次の範囲内であれば『管理』にとどまる
→工事が大きな加工を伴わない

い 『大きな加工』の判断基準|基本

次のいずれにも該当する場合
ア 建物の躯体部分に相当程度の加工を要するものではないイ 外観を見苦しくない状態に復元できる

う 『大きな加工』の判断基準|外壁・圧力壁

外壁・耐力壁などに工事を加えても『大きな加工』に該当するとは限らない
『い』に該当すれば外壁・圧力壁の工事も『管理』にとどまる

え 『大きな加工』|典型例

建物の基本的構造部分を大きく取り壊す工事

4 共用部分の『管理』|『大きな加工』に該当しない|具体例

建物構成部分の工事は『大きな加工』でなければ『管理』に該当します(前述)。
『大きな加工』の解釈・内容をまとめます。

<共用部分の『管理』|『大きな加工』に該当しない|具体例>

あ バリアフリー化工事

例;階段にスロープを併設する工事

い 手すりの設置工事
う 耐震改修工事

基本的構造部分への加工が小さい工事
・柱や梁に炭素繊維シートや鉄板を巻き付けて補修する工事
・構造躯体に壁や筋かいなどの耐震部材を設置する工事

え 防犯化工事

共用部分の加工の程度が小さい工事
・オートロック設備を設置する際に配線を空き管路内に通す工事
・建物の外周に敷設したりする工事
・防犯カメラ・防犯灯の設置工事

お IT化工事

共用部分の形状に変更を加えない工事
・光ファイバー・ケーブルを既存のパイプスペースを利用して敷設する

か 玄関ドア・サッシ工事

窓枠,窓ガラス,玄関扉などの一斉交換工事

き 撤去工事

既に不要となったダストボックスや高置水槽などの撤去工事

5 共用部分の『変更』の意味と決議要件

区分所有法の集会の決議事項のうち『変更』に該当する工事についてまとめます。

<共用部分の『変更』の意味と決議要件>

あ 基本的解釈

既存建物の外観形状を大きく変化させる工事

い 決議要件

区分所有者・議決権の各4分の3以上
※区分所有法17条1項

6 共用部分の『変更』|具体例

共用部分の『変更』に該当する工事の具体例をまとめます。

<共用部分の『変更』|具体例>

あ 建物の基本構造部分の大規模な加工

ア 戸境壁・スラブの開口イ 既存階段室のエレベーターへの改造

い 付属施設の建替・増築・大規模改造

既存の附属施設の建替・増築・大規模な改造工事
例;集会場・倉庫など

う 敷地表面の利用を大きく変化させる工事

敷地内の広場・公園を廃止し駐車場・駐輪場に変更する工事

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