1 サブリース→オーナーの収入安定化・ファンドの投資スキーム
2 サブリースの法的性質は『転貸借』とされている
3 マスターリースは『賃貸借』→対抗要件・賃料増減額請求の適用
4 サブリース×賃料減額請求|立場による利害対立が熾烈である
5 サブリース×賃料減額請求|最高裁判例の影響
6 サブリース×賃料減額排除特約→無効|強行法規性
7 マスターリースの賃料減額請求|『賃料保証の趣旨』が考慮される
8 サブリース×賃料減額排除特約|定期借家の場合は設定できる
9 賃料減額請求制度×建物評価・賃料鑑定|減額リスクが反映される

1 サブリース→オーナーの収入安定化・ファンドの投資スキーム

サブリース契約は多くの場面で活用されています。
基本的な仕組みと活用されるシーンについてまとめます。

<サブリース契約・賃料保証>

あ 概要

サブリース会社が賃貸住宅・オフィスを一括して借り上げる
サブリース会社は入居候補者=エンドユーザーを探して転貸する
自ら入居するわけではない

い オーナーの立場|メリット

賃料収入が一定になり安定する
『賃料が保証された』状態となる

う サブリース会社の立場

ア 業務としての整理
管理・維持のノウハウを活用する
転貸による収入を確保するよう努力する
イ 経済的な整理
『空室リスク負担』と『転貸利益』の両方を得る

え サブリース活用|典型例

ファンドの投資対象とする(前提として設定する)

2 サブリースの法的性質は『転貸借』とされている

サブリースの法的性質については,以前は統一的な解釈がありませんでした。
しかし,最高裁の判例により,解釈が統一されるに至りました。

<サブリース×契約の解釈論>

あ 従前

『賃貸借契約/賃料の保証契約』の分類に統一的見解がなかった
賃貸事業に関する『共同事業』・パートナーシップという見解もあった
→この場合,民法・借地借家法が適用されなくなる

い 平成15年最高裁判例

次のように法解釈・見解が統一された

関係 契約の俗称 法的な契約の種類
オーナー・サブリース会社間 マスターリース;原賃貸借 賃貸借契約
サブリース会社・エンドユーザー(居住者)間 サブリース 転貸借契約

※最高裁平成15年10月21日

3 マスターリースは『賃貸借』→対抗要件・賃料増減額請求の適用

サブリースは2つの賃貸借(転貸借も賃貸借の1つ)の組み合わせと解釈されています。
重要なのはマスターリースの部分です。
これが『賃貸借契約』であるため,次のようなルールが適用されます。

<マスターリースに適用されるルール>

あ 対抗要件

典型例=建物に設定された抵当権が実行された場合の優劣関係
※民法605条,借地借家法31条1項

い 賃料増減額請求

『建物賃貸借』については賃料増減額請求が認められている
しかしサブリースシステムの根幹部分は『賃料保証』である
→『賃料減額請求』はこの根幹部分を覆すことになる
熾烈な解釈論の争いがある(後記)
※借地借家法32条1項

4 サブリース×賃料減額請求|立場による利害対立が熾烈である

サブリースにおける『賃料減額』の解釈論は利害が熾烈に衝突します。

<サブリース×賃料減額請求|対立構造>

あ サブリースシステムの根幹

『サブリースシステム』を利用する理由
=『賃料収入が保障される』こと

い 賃料減額×オーナーの立場

『賃料減額=根本的な約束を破られた状態』と言える
マンションの建築代金を借入金によって賄っている場合
→保証された賃料収入は返済金の原資となっている
→『賃料減額』により,借入金の返済にも支障が生じる

う 賃料減額×サブリース会社の立場

『契約当初は想定できなかった社会情勢の変動』が生じた場合
→利益を確保できない状態となる
→これを解消する手段は『賃料減額』しかない

5 サブリース×賃料減額請求|最高裁判例の影響

サブリース契約の性質は『賃貸借』と統一されました(前述)。
その結果として『賃料減額請求』は『可能』という解釈になります。

<サブリース×賃料減額請求|最高裁判例の影響>

あ サブリース契約の解釈論|最高裁判例

サブリース契約(マスターリース契約)は『賃貸借契約』と認められた
※最高裁平成16年11月8日
※最高裁平成15年10月21日

い 最高裁判例の効果

『賃貸借』である
→賃料減額請求が適用される
※借地借家法32条

6 サブリース×賃料減額排除特約→無効|強行法規性

サブリース契約では『賃料が減額されない』ことに重要な意義があります。
そこで『賃料を減額しない』という特約を設定するニーズが大きいです。
この特約の解釈論をまとめます。

<サブリース×賃料減額請求|強行法規性>

あ 賃料減額請求×強行法規性

賃料減額請求を排除する特約の効力
→無効となる
※借地借家法32条1項但書;反対解釈

い 契約のタイトルは無関係

条項・特約の名称・タイトルと効果に関わりはない
例;『賃料保証特約』『賃料自動増額特約』など
→『賃料減額請求』は排除できない

7 マスターリースの賃料減額請求|『賃料保証の趣旨』が考慮される

サブリース会社から賃料減額請求が行うことは可能です(前述)。
ただし,この際,賃料減額自体が認められるかどうかは別です。

<サブリース×賃料減額請求|判断事情>

あ 賃料減額請求における判断事項

ア 賃料減額を認めるか否か
イ 認める場合の減額幅

い 考慮する事情

『賃料保証特約』は重要な事情として十分に考慮される
→極力減額は認められない方向性となる
※最高裁平成16年11月8日

要は,オーナーとしては,収入が安定化・一定化するからこそ,サブリースを利用しているわけです。
この期待への裏切りとなるような賃料減額は容易には認められないということです。

8 サブリース×賃料減額排除特約|定期借家の場合は設定できる

サブリースにおける契約が『定期借家』である場合は,扱いが異なります。
まず一般的に『賃料減額請求』は認められます。
これは通常(普通借家)の場合と変わりはありません。
しかし『賃料減額排除特約』の有効性は異なります。

<サブリース×賃料減額請求|定期借家>

定期借家契約の場合
→賃料減額請求を排除する特約(=賃料保証特約など)は無効とされない
※借地借家法38条7項

定期借家が創設される前は,サブリースにおける賃料減額請求が,オーナーにとっての不確定リスクとして残る状態でした。
現在は,サブリースにおいては,不確定リスクを排除できる定期借家が積極的に用いられるようになっています。

9 賃料減額請求制度×建物評価・賃料鑑定|減額リスクが反映される

建物賃貸借においては一般的に『賃料減額リスク』があります(前述)。
これが『建物の評価額』『賃料額の鑑定』に影響を生じます。

<賃料減額請求制度×建物評価・賃料鑑定>

あ 建物の評価額

サブリースを利用している収益建物の評価額算定
→『賃料変動可能性』が反映される
賃料が減額される一定のリスクを考慮に入れる

い 賃料額の鑑定

『賃料保証・自動増額』の特約がある場合
→本来であればその条項どおりに賃料を算出すれば良い
→しかし『賃料減額請求』が認められる可能性がある
→継続賃料の鑑定の際に,この可能性を反映させる必要が生じる

ただし,サブリース会社からの賃料減額請求が認められる可能性や減額幅を予想するには,契約締結に至る経緯,当時の社会情勢などを把握する必要があります。
実際の鑑定評価において,どの範囲で事情を調査,考慮に反映させるのか,これ自体が不動産鑑定理論として確立していません。
今後の課題と言えましょう。