【債権の短期消滅時効の種類・時効期間と民法改正による廃止】
1 債権の短期消滅時効の種類・時効期間と民法改正による廃止
債権の基本的な消滅時効期間は10年と5年があります。
詳しくはこちら|債権の消滅時効の期間(原則(民法)と商事債権・商人性の判断)
債権の種類によっては5年から6か月という比較的短い消滅時効期間が適用されます。これを短期消滅時効といいます。
本記事では、短期消滅時効が適用される債権の種類や、平成29年の民法改正で廃止されるということについて説明します。
2 5年間の短期消滅時効
短期消滅時効のうち、5年の時効期間が適用される債権をまとめます。
5年間の短期消滅時効
※1 最高裁平成26年9月5日
扶養に関する請求権(養育費など)も定期給付債権として扱われている
詳しくはこちら|過去の養育費・婚姻費用の請求の全体像(手続・消滅時効・支払の始期)
ウ 財産管理に関する親子間の債権(民法832条)エ 相続回復請求権(民法884条)オ 金銭給付目的の普通地方公共団体の権利(地方自治法236条)カ 労働者の退職手当(労働基準法115条後段)
3 3年間の短期消滅時効
短期消滅時効のうち、3年の時効期間が適用される債権をまとめます。
3年間の短期消滅時効
※弁護士法63条
エ 不法行為に基づく損害賠償請求権(民法724条後段、製造物責任法5条)オ 為替手形の所持人から引受人に対する請求権(手形法70条1項)カ 約束手形の所持人から振出人に対する請求権(手形法77条1項8号、78条1項参照)
4 2年間の短期消滅時効
短期消滅時効のうち、2年間の時効期間が適用される債権をまとめます。
2年間の短期消滅時効
5 1年間の短期消滅時効
短期消滅時効のうち、1年間の時効期間が適用される債権をまとめます。
1年間の短期消滅時効
6 6か月の短期消滅時効
短期消滅時効のうち、6か月の時効期間が適用される債権をまとめます。
6か月の短期消滅時効
7 短期消滅時効の不合理性と廃止方針
短期消滅時効は債権の回収を大きく制限するものです。しかし、短期消滅時効の趣旨(実質的な理由)として合理的なものはなく、単に中世のヨーロッパの規定が惰性的に承継され、残っているだけであると指摘されています。
そこで、平成29年の民法改正で短期消滅時効の制度自体が廃止されました。とはいっても施行は平成32年なので、それ以前に生じた債権については現行のルールである短期消滅時効が適用されます。
短期消滅時効の不合理性と廃止方針
あ 短期消滅時効の起源
旧民法はフランス法を元にして作られた
パリの慣習やルイ12世の勅令も元になっている
い 不合理性
旧民法の制定時に日本の取引慣習はあまり考慮されていない
→短期消滅時効の合理性には問題がある
※川島武宣『注釈民法(5)総則(5)』有斐閣1967年p332、333
う 短期消滅時効の廃止
平成29年の民法改正において短期消滅時効の規定が廃止された
改正後は一般的な消滅時効期間が適用される
詳しくはこちら|債権の消滅時効の期間(原則(民法)と商事債権・商人性の判断)
8 関連テーマ
(1)不法行為による損害賠償請求権の3年時効の起算点(民法724条)
詳しくはこちら|不法行為による損害賠償請求権の3年時効の起算点(民法724条)(解釈整理ノート)
本記事では短期消滅時効期間について説明しました。
実際には個別的な特殊事情によって消滅時効期間の判断が違ってくることもあります。
実際に消滅時効に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。