1 相続人なのに戸籍に載っていない,というケースもある|藁の上の子・死後認知
2 『身分関係』が戸籍にない→相続権を回復する方法|身分関係or相続権確認訴訟
3 2種類の手続の違いは『相続人不存在』の時に生じる
4 『相続財産管理人』が『相続人であること』を認めることもある|判決・審判がある場合

1 相続人なのに戸籍に載っていない,というケースもある|藁の上の子・死後認知

現実には『親子』『兄弟』などの相続人なのに,戸籍に載っていない,というケースもあります。

<相続人なのに『戸籍にない』例>

あ 意図的に『親子』を表にしない

ア 婚外子
敢えて戸籍上『父』を空欄にしておいた
→死後認知・遺言認知により後から戸籍に載せる
詳しくはこちら|死後の認知|全体|認知を回避or遅らせる背景事情
イ 嫡出推定を避けるため;民法772条の無戸籍児
戸籍上『前の夫の子』という誤った状態になってしまうので出生届をしなかった
詳しくはこちら|嫡出推定・誤作動|無戸籍児|基本|提出義務・罰則×正当な理由
ウ 『真実ではない親』の子として出生届;藁の上の子
上記のような事情があったので,『別人』を親とする出生届を提出した

い 蒸発した人が戻ってきた

失踪宣告により『死亡の扱い』となった後に『生存が明らか』となった
詳しくはこちら|長期間行方不明の方を死亡したものとみなす手続がある;失踪宣告

う 役所のミス

古い戸籍の場合,管理上のミスで『記録が消失』することがある
オンライン化された時の『引き継ぎ(移記)そびれ』など

2 『身分関係』が戸籍にない→相続権を回復する方法|身分関係or相続権確認訴訟

(1)戸籍に載っていない相続人に関する法的手続のまとめ

<戸籍に載っていないが相続人である場合の手続>

前提=『被相続人の子』であることを確認する

訴訟の種類 身分関係確認訴訟 相続権(不存在)確認訴訟
カテゴリ 人事訴訟 通常訴訟
裁判所 家庭裁判所 地方裁判所
被告(他の相続人がいる場合) 他の相続人全員 他の相続人全員
被告(『相続人不存在』の場合) 検察官 相続財産法人(管理人)
戸籍の訂正 訂正される 訂正されない

(2)身分関係確認訴訟は原則的な方法

『身分関係確認訴訟』とは,『親子・兄弟であることの確認』を求めるものです。
要するに『戸籍の訂正』をストレートに実現する,という方向性の手続です。

(3)相続権確認訴訟も判例で認められている

『相続権確認訴訟』『相続権不存在確認訴訟』は,『相続権』の有無の認定を裁判所に求めるものです。
『戸籍の訂正』は除外して,純粋に『相続権』の獲得or否定だけを目的とする手続です。
実質的には,『同じ』ようなものです。
重複する手続であり,認められないという考えもありました。
しかし,法的な性質からいくつかの違いが生じます。
『重複するから無駄』ということはないのです。
実際に,判例上認められるに至っています。

<相続権確認請求訴訟の判例>

最高裁平成16年7月6日(相続権不存在確認訴訟)
大阪高裁昭和51年11月24日(相続権確認訴訟)

3 2種類の手続の違いは『相続人不存在』の時に生じる

2種類の裁判の種類について,他に戸籍上の相続人がいる場合はあまり違いはありません。
ところが,戸籍上の相続人が1人もいない,という場合には違いが生じます。

<『相続人不存在』の場合の2つの手続の違い|被告は誰か>

あ 身分関係確認訴訟の被告

『検察官』

い 相続権確認訴訟の被告

『相続財産法人』
※人事訴訟法12条3項,民法951条

被告が相続財産法人となる場合は,具体的手続は『相続財産管理人』が行ないます(民法952条)。
通常は弁護士や司法書士が家庭裁判所から選任されています。
『検察官』の場合,ちょっと大げさな感じになります。

<参考情報>

月報司法書士14年10月p77〜

4 『相続財産管理人』が『相続人であること』を認めることもある|判決・審判がある場合

『相続人不存在』の場合に,上記の『確認訴訟』を行わなくても『相続人』として認められることがあります。
申出人に対して,相続財産管理人の判断により認定された場合です。
ところで,相続財産管理人の権限は『保存・管理』という範囲とされています。
要するに『相続人であることが明確な場合』にだけ相続財産管理人が認定する,ということです。
そうでない場合は相続財産管理人として認定する,ということはできません。
なお,『家庭裁判所の許可』によって認める規定もありますが,通常許可はなされません。
上記のとおり2種類の確認訴訟のどちらかを提起する必要があるのです。

<相続財産管理人による『相続人』の認定>

あ 認定できる範囲

ア 相続財産管理人の単独での判断
『保存・管理』に該当するもの
イ 家庭裁判所の許可を得た上での判断
『ア』以外
※民法953条,28条,103条

い 実務上相続財産管理人が認定できる類型

次のような裁判所の『審判』『調停』がなされた場合
ア 死後認知・遺言認知
イ 失踪宣告の取消

<参考情報>

相続人不存在の実務と書式 補訂版 民事法研究会p183