1 発信者情報開示請求×裁判管轄|遠隔地となることがある
2 弁護士費用の『加害者負担』|例外的に認められることもある
3 発信者情報開示請求の手続の特徴・所要期間

1 発信者情報開示請求×裁判管轄|遠隔地となることがある

以上の説明のとおり,発信者情報開示請求の手続では複数回,裁判所を利用することがあります。
ここで,裁判所の管轄,が問題になることがあります。

<発信者情報開示請求×裁判手続の管轄>

あ 裁判管轄の大原則

被告(相手方)住所地

い よく生じる問題

『経由プロバイダ』の本店所在地が東京
→加害者・被害者が地方在住,という場合に『遠い裁判所』を利用せざるを得ない

う 例外

『併合請求』の管轄を流用する

え 併合請求の活用|典型例

『経由プロバイダ』の対応に不備がある
→不法行為による損害賠償請求も併合(追加)
→『原告住所地』が管轄となる
※大阪高裁平成16年6月7日

裁判手続の管轄が大原則は『東京(地方裁判所)』となることが多いのです。
地方在住の当事者にとっては無意味にコストが上がってしまいます。
また,twitterについては,運営会社の本社が米国カリフォルニア州にあります。
原則的に米国の裁判所を利用することになります。
手続を遂行する上での大きなハードルとなっています。
例外として『原告住所地』の裁判所を使える判例もあります。
ただし,必ず認められるというわけではありません。

2 弁護士費用の『加害者負担』|例外的に認められることもある

一般的に『不法行為』については,弁護士費用を加害者が負担する義務が認められます。
しかし,その金額は『実際に要した金額全額』ではなく『損害の1割』程度に『制限される』ことが通常です。
詳しくはこちら|判決で加算される弁護士費用は『請求額の10%』が相場|『実際の金額の全部』ではない
この原則論では,発信者情報開示請求の手続では不合理となります。
『損害賠償の請求額』はそれほど高くない一方で,複数回の裁判手続を要し『業務量』が比較的多くなるのです。
結局『弁護士費用』は『損害額』との比較において(相対的に)高くなる傾向があるのです。
そこで『原則論』を使わず『実際の弁護士費用全額』を『損害』として認める判例も現れています。

<『実際の弁護士費用全額』を『損害』として認めた判例>

次の手続のために要した弁護士費用実額全額を『損害』として認めた
ア IPアドレスの発信者情報開示仮処分
イ 住所氏名の発信者情報開示請求訴訟+削除仮処分+ログ保存仮処分
※東京高裁平成24年6月28日

3 発信者情報開示請求の手続の特徴・所要期間

前述のように,発信者情報開示請求の法的手続は,通常『2つの裁判』が必要です。
所要時間もある程度長くなります。

<発信者情報開示請求×所要期間>

あ 平均的な手続の期間

半年以上かかるのが通常

い 『所要時間』の注意

物理的・システム的な時間制限
→サーバー側の情報保管期間=3か月程度(目安)

裁判に時間がかかる一方でサーバー側の情報保管期間が短めです。
前述のとおり,仮処分を併用するなどの対応によりカバーすることになります。
また,twitter,Facebook,Googleは外国法人です。
日本国内とは異なる,手続上の特有の特徴があります。
そこで,発信者情報開示請求の手続は,ノウハウを持つ弁護士に依頼するとベターです。