1 『紙の意思表示・伝達=信書』は郵便が独占
2 『信書』のリプレイス|意思表示は法律上『紙』に限定されていない
3 隔地者に対する意思表示|判例の基準では『紙』は要求されていない
4 意思表示の記録化・証拠化→『紙+内容証明』の独占市場
5 意思表示における『信書』の機能=『伝達内容+到達』の記録化
6 オンライン意思表示でも『記録化』は現在既に達成されている
7 情報の不正な取得×刑事責任|信書開披罪/不正アクセス防止法違反

本記事では『信書』をブロックチェーンでリプレイスする期待に関して説明します。
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1 『紙の意思表示・伝達=信書』は郵便が独占

法的な意思表示を書面で伝達するものを『信書』と言います。
『信書』の詳しい定義は別記事でまとめています(リンクは冒頭記載)。
『信書』を郵便以外で送付すると違法となることがあります。
本記事では『新しいテクノロジーを使った意思表示・伝達』について説明します。
まずは『信書』サービスの機能から整理します。
法律事務でも頻繁に利用する機能・プロセスです。

2 『信書』のリプレイス|意思表示は法律上『紙』に限定されていない

いろいろな契約の解除や,損害金の発生などのトリガーが『意思表示』とされているものは多いです。
このような時に『内容証明郵便』や,一般の『郵便』が使われています。
まさに『信書』に該当するものです。
ところで,このような『意思表示』は書面で行う限り『信書』に該当してしまいます。
法的な意思表示は郵便を使うしかない,という発想になりがちです。
しかし条文その他のルールで『書面でないと無効』ということはありません。
理論的には口頭でもメッセンジャーでも狼煙でも良いのです。

3 隔地者に対する意思表示|判例の基準では『紙』は要求されていない

『隔地者に対する意思表示』という古めかしいタイトルの条文と判例を紹介します。

<意思表示(通知)の『到達』の概念と判断基準>

あ 条文|民法97条1項

隔地者に対する意思表示は,その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。

い 『到達』の解釈

了知可能な状態に置かれること
※最高裁昭和36年4月20日

このように基準の中に『紙』という限定はないのです。

4 意思表示の記録化・証拠化→『紙+内容証明』の独占市場

このように『文書』という限定は一切ないのです。
ただ,過去の実務上は『立証』の面から,内容証明郵便が独占的地位を構築していたのです。
構築というか,法律で参入障壁が作られて守られていた,と言うべきでしょう。
逆に言えば,『立証』の部分がテクノロジーでカバーされれば,現行法のまま=法改正なしで,古い作法をリプレイスできるのです。

5 意思表示における『信書』の機能=『伝達内容+到達』の記録化

法律実務の現場からは,是非『オンラインでの通知』でレガシー方式をリプレイスしたいと強く思います。
このニーズは,そのまま,新たに開発されるべきテクノロジー提供のマーケット,ということになります。
是非,開発するベンチャーにはターゲットにしていただきたいと思います。
オンライン『意思表示』の伝達の『証拠化』に必要な機能をまとめます。
要するに,レガシー方式での『内容証明郵便』が担っていた機能のことです。

<意思表示の伝達で必要な機能|整理>

記録・証拠化の対象 参考;レガシー=内容証明郵便
伝達内容の記録 郵便局が複製のうち1部を保管する
メッセージ『到達』の記録 郵便局員が配達先玄関で受領印をもらう

詳しくはこちら|通知書は内容証明郵便が確実|意思表示・通知の分類・内容証明の特徴

6 オンライン意思表示でも『記録化』は現在既に達成されている

意思表示(通知)で必要な機能は『伝達内容の記録』と『到達したことの記録』ということです。
これをオンラインでのメッセージで実現することが開発すべきテクノロジーとなります。
実は現在普及しているサービスで,この2つを含むものはあります。
メッセンジャーアプリのうち代表的なLINE,カカオトーク,Facebookのメッセンジャーなどです。
送信済のメッセージ内容は運営事業者のサーバーor端末に記録されています。
そして,受信者が閲覧(クエリー)した履歴も記録になります。
いわゆる『既読』という機能です。
もちろん『情報の記録としての実用化』のためには『信用性』が必須条件です。
これについてもテクノロジー自体は,実用可能なレベルになっていると言えましょう(前述)。

7 情報の不正な取得×刑事責任|信書開披罪/不正アクセス防止法違反

(1)『信書=紙の意思表示』の法的な保護

『信書』と『ブロックチェーンによる意思表示』を『法的防御』の面で比べてみます。
『信書』のちょっと別の機能として『盗み見る』ことが犯罪となっています(信書開披罪)。
仮に『盗み見られた』場合に,告訴によって『反撃』できるのです。
これが『不正な情報取得』の防御になっています。
『防御』は『信書開披罪』という刑事罰だけではありません。
不正に取得された情報・証拠は『民事訴訟の証拠にならない』という効果が生じることもあります。

(2)『オンライン意思表示・伝達』の法的な保護

オンラインのメッセージ(Eメール含む)は『信書』ではないので信書開披罪の対象ではないです。
しかし,アクセスのために『秘密鍵』が必要です。
パスワードを盗用された場合は『不正アクセス防止法違反』に該当します。
この場合,見られた内容も民事訴訟での証拠にならないのが原則です。
このような付随的機能の点でも差がないと言えます。
詳しくはこちら|メール,手紙を見られたことへの法的救済;犯罪,慰謝料,証拠能力