1 意思表示の基本(意思表示・通知の分類・内容証明郵便の特徴)
2 意思表示の分類(種類)
3 意思表示ではない通知(参考)
4 意思表示(通知)の到達の概念と判断基準の要点
5 了知可能な状態の要点・典型例
6 (電子)内容証明郵便の特徴・仕組み
7 通常の手紙・メール・メッセージの立証面の弱点
8 新テクノロジーによる通知システムのリプレイス(参考)

1 意思表示の基本(意思表示・通知の分類・内容証明郵便の特徴)

いろいろな場面で,意思表示(通知)が使われています。実務では,意思表示が届いた(到達した)といえるかどうかについて意見が対立することもよくあります。
本記事では,意思表示や通知の分類や,内容証明郵便の特徴といった,意思表示の基本的な事項を説明します。

2 意思表示の分類(種類)

意思表示は多くの場面で使われます。最初に意思表示の種類を整理しておきます。一方的に伝達するもの(通知や遺言),2者の双方向の伝達(契約),3者以上の伝達(合同行為)というように分類できます。
なお,正確には,意思表示とは効果意思の表示と定義されます。本記事では適宜簡単な用語を使います。

<意思表示の分類(種類)>

あ 単独行為
ア 通知

取消,解除

イ 遺言
い 契約

売買,賃貸借,請負,委任

う 合同行為

社団法人の設立

3 意思表示ではない通知(参考)

意思表示のうち『単独行為』,つまり,一方的に表示する,というものを『通知』と呼んでいます。
ところで『通知』については法律的分類としては『意思表示』には含まれないものもあります。
現実的にはこの理論的な分類は意識しなくても問題ありません。

<意思表示ではない通知(参考)>

あ 意思の通知

法律効果の発生しない意思の発表

ア 催告(民法20条,114条)
イ 請求(民法147条1号)
ウ 受領の拒絶(民法493条)
い 観念の通知

一定の事実の通知

ア 代理権授与の表示(民法109条)
イ 債権譲渡の通知(民法467条)
ウ 債務の承認(民法147条3項)

問題となる具体例としては『請求』によって『消滅時効を中断する』というものがあります。
仮に『通知として無効』だとすると『債権が時効消滅』となるので,有効性や到達のタイミングが重要になるのです。

4 意思表示(通知)の到達の概念と判断基準の要点

例えば売買契約など,当事者が揃っている場所で合意→調印,という場合は『タイムラグ』はありません。
しかし,解除の通知,などは書面を送付する,ということが一般的です。
この場合『意思表示が成立したか=到着と言えるか』『到着のタイミング』について問題になることがあります。
民法では『隔地者に対する意思表示』という古めかしいタイトルが付けられています。

<意思表示(通知)の到達の概念と判断基準の要点>

あ 民法97条1項の条文

隔地者に対する意思表示は,その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。

い 『到達』の解釈の要点

意思表示が相手の支配領域内に到達し,相手に了知可能な状態に置かれること
実際に相手が受領した,了知した(読んだ)ということまでは必須ではない
※最高裁昭和36年4月20日

5 了知可能な状態の要点・典型例

意思表示の到達了知可能な状態のことと解釈されます(前述)。
このような場合は通常,支配領域内に届いているし,見ようと思えば見られると言えます。そこで了知可能な状態と言えます。要するに見ないほうがいけないといえる状態です。
実際にはいろいろなケースで了知可能だったという判断がなされています。

<了知可能な状態の要点・典型例>

あ 典型例

書面が相手の自宅の郵便ポストに投函された
相手がそれを開封していない・見ていない場合でも到達が認められる

い 特殊なケース

書面(自体)が相手の自宅の郵便ポストに投函されていなくても到達が認められることもある
『ア・イ』のような事情から到達を認めた判例もある

ア 相手が送付物の受領を拒否したケース
イ 不在配達通知書が投函されていても無視したケース
詳しくはこちら|意思表示の到達障害のケースにおける到達の成否の判断

6 (電子)内容証明郵便の特徴・仕組み

意思表示・通知は,重要な効果と直結することが多いので,記録化・証拠化が重要です。
実務上,内容証明郵便を使うのが一般的です。現在では電子内容証明郵便も普及しています。
これは発送手続だけがオンラインで,受領サイドはオフラインです。郵便局員が宛先にリアルに届ける,という方式です。到達したことがしっかりと記録(証拠)になる仕組みをまとめておきます。

<(電子)内容証明郵便の特徴・仕組み>

記録の対象 記録方法
伝達内容の記録 郵便局が複製のうち1部を保管する
メッセージ『到達』の記録 郵便局員が配達先玄関で受領印をもらう

7 通常の手紙・メール・メッセージの立証面の弱点

逆に言うと,通常の手紙やオンラインのメール・メッセージでは立証不十分となりやすいです。

<通常の手紙・メール・メッセージの立証面の弱点>

あ 相手が『受け取っていない』と主張した

『受け取った』『到達した』ということの証拠がない

い 相手が『受け取ったけど挨拶だけだった』と主張した

解除・請求などの法的効果につながる事項が書いてあった,という証拠がない

このように,内容証明郵便と比べると,立証には役立たない,ということになるのです。
そこで実務上は重要な内容の通知をする場合は,内容証明郵便を使うのが大原則となります。

8 新テクノロジーによる通知システムのリプレイス(参考)

逆に言えば,理論的には『内容証明郵便ではないと無効』というルールはありません。
立証の点さえクリアすればオンラインでも実用化可能です。
ブロックチェーン・プロトコルなどの最新テクノロジーでレガシーサービスをリプレイスすることが期待されます。
なお,法規制で既得権益が守られる状態のことをネオラッダイトと言います。
詳しくはこちら|『意思表示』を『信書』から新テクノロジーでリプレイスする時が来た
詳しくはこちら|マーケットの既得権者が全体最適妨害|元祖ラッダイト→ネオ・ラッダイト

本記事では,意思表示(通知)の基本的事項を説明しました。
実際には,個別的事情により,法的判断や最適な対応方法が違ってきます。
実際に意思表示(通知や契約)に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。