1 『意思表示』『通知』が使われる場面は多い|取引(契約)・解除・催告など
2 効力の発生は『到達した時』=相手の『支配領域内+了知可能な状態』
3 受領していない・受領拒否の場合でも『到達』が認められることがある
4 意思表示(通知)では『内容証明郵便』が確実|独占状態
5 内容証明郵便を新テクノロジーでリプレイスされること希望|ネオ・ラッダイト

1 『意思表示』『通知』が使われる場面は多い|取引(契約)・解除・催告など

多くの取引その他の場面で『意思表示』や『通知』が使われます。
ここでは『意思表示・通知』について問題になることのある法的理論を説明します。

まず,『意思表示』とは『効果意思の表示』と定義されます。
この定義は現実的には意識しなくても問題ありません。

<意思表示の種類>

あ 単独行為

ア 通知
取消,解除
イ 遺言

い 契約

売買,賃貸借,請負,委任

う 合同行為

社団法人の設立

意思表示のうち『単独行為』,つまり,一方的に表示する,というものを『通知』と呼んでいます。
ところで『通知』については法律的分類としては『意思表示』には含まれないものもあります。
現実的にはこの理論的な分類は意識しなくても問題ありません。

<『意思表示』ではない『通知』>

あ 意思の通知

法律効果の発生しない意思の発表
ア 催告(民法20条,114条)
イ 請求(民法147条1号)
ウ 受領の拒絶(民法493条)

い 観念の通知

一定の事実の通知
ア 代理権授与の表示(民法109条)
イ 債権譲渡の通知(民法467条)
ウ 債務の承認(民法147条3項)

問題となる具体例としては『請求』によって『消滅時効を中断する』というものがあります。
仮に『通知として無効』だとすると『債権が時効消滅』となるので,有効性や到達のタイミングが重要になるのです。

2 効力の発生は『到達した時』=相手の『支配領域内+了知可能な状態』

例えば売買契約など,当事者が揃っている場所で合意→調印,という場合は『タイムラグ』はありません。
しかし,解除の通知,などは書面を送付する,ということが一般的です。
この場合『意思表示が成立したか=到着と言えるか』『到着のタイミング』について問題になることがあります。
民法では『隔地者に対する意思表示』という古めかしいタイトルが付けられています。

<意思表示(通知)の『到達』の概念と判断基準>

あ 条文|民法97条1項

隔地者に対する意思表示は,その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。

い 『到達』の解釈

意思表示が『相手の支配領域内に到達し,相手に了知可能な状態』に置かれること
『受領された』『実際に了知した』ということは不要
※最高裁昭和36年4月20日

3 受領していない・受領拒否の場合でも『到達』が認められることがある

(1)『了知可能な状態』の原則事例

意思表示の『到達』は『了知可能な状態』のことと解釈されます(前述)。

<『了知可能な状態』の典型例>

書面が相手の自宅の郵便ポストに投函された
(相手がそれを開封していない・見ていない場合でも)

このような場合は通常『支配領域内』に届いているし『見ようと思えば見られる』と言えます。
そこで『了知可能な状態』と言えます。
要するに『見ないほうがいけない』というような状態です。

(2)『了知可能な状態』の拡張的解釈

実務では,法的な通知を『受け取らない』ということが発生します。
当然,受け取ると受領者が『時効中断』などの不利益を受けることがあります。
そこで『受領拒否』の発想が生まれるのです。
これに対抗するように,解釈上『了知可能な状態』は広く考えられています。

<『了知可能な状態』の拡張的解釈>

あ 『了知可能な状態』の拡張的解釈

相手が内容を『十分に推知することができた』場合も含む

い 具体的認定の例|判例

考慮する事項(一般論)   個別事案で考慮された事情
相手が差出人を知った 不在票で『差出人の代理人の弁護士』を知ったはず
従前の交渉経緯から内容が推測できる 相続直後→遺留分減殺請求や遺産分割協議の申入と推測できた
容易に書面を受領することが可能であった 郵便局で受け取るor再配達を要請すること

留置期間が満了した時点で『了知可能な状態=到達』と認めた
※最高裁平成10年6月11日

4 意思表示(通知)では『内容証明郵便』が確実|独占状態

(1)内容証明(電子内容証明)の特徴・仕組み

意思表示・通知は,重要な効果と直結することが多いです。
そこで,記録化・証拠化が重要です。
実務上『内容証明郵便』を使うのが一般的です。
なお,現在は『電子内容証明郵便』も普及しています。
これは『発送手続』だけがオンラインで,受領サイドはオフラインです。
郵便局員が宛先にリアルに届ける,という方式です。
言わば『半ライン』というものです。
内容証明郵便の特徴・仕組みをまとめておきます。

<内容証明郵便の特徴・仕組み>

記録の対象 記録方法
伝達内容の記録 郵便局が複製のうち1部を保管する
メッセージ『到達』の記録 郵便局員が配達先玄関で受領印をもらう

この仕組みにより,記録化・証拠化がしっかりとなされるのです。

(2)ノーマルの手紙・オンラインでは立証不足

逆に言うと,通常の手紙やオンラインのメール・メッセージでは『立証不十分』となります。

<通常の手紙・オンライン伝達の『立証不足』|例>

あ 相手が『受け取っていない』と主張した

『受け取った』『到達した』ということの証拠がない

い 相手が『受け取ったけど挨拶だけだった』と主張した

解除・請求などの法的効果につながる事項が書いてあった,という証拠がない

このように,内容証明郵便と比べると,立証には役立たない,ということになるのです。
そこで実務上は重要な内容の通知をする場合は,内容証明郵便を使うのが大原則となります。

5 内容証明郵便を新テクノロジーでリプレイスされること希望|ネオ・ラッダイト

逆に言えば,理論的には『内容証明郵便ではないと無効』というルールはありません。
立証の点さえクリアすればオンラインでも実用化可能です。
ブロックチェーン・プロトコルなどの最新テクノロジーでレガシーサービスをリプレイスすることが期待されます。
なお,法規制で既得権益が守られる状態のことを『ネオラッダイト』と言います。
詳しくはこちら|『意思表示』を『信書』から新テクノロジーでリプレイスする時が来た
詳しくはこちら|マーケットの既得権者が全体最適妨害|元祖ラッダイト→ネオ・ラッダイト