1 借地非訟×残存期間
2 借地非訟×残存期間|新・旧借地権共通
3 借地非訟×残存期間|旧借地権
4 借地非訟×借地に関する従前の経過|例
5 譲渡許可申立×残存期間
6 譲渡許可申立×借地に関する従前の経緯

1 借地非訟×残存期間

借地非訟手続では裁判所が許可の判断を行います。
非訟事件一般について,借地の残存期間が大きく影響します。
まずは基本的事項をまとめます。

<借地非訟×残存期間|基本>

あ 一般論

残存期間が短い場合
→許可しない方向に働く

い 残存期間×旧借地権

旧借地権が適用される場合
→残存期間が短いことは特に重視される(後記※1)
※澤野順彦『実務解説借地借家法』青林書院p216

2 借地非訟×残存期間|新・旧借地権共通

残存期間の具体的な判断方法・影響を整理します。

<借地非訟×残存期間|新・旧借地権共通>

あ 基本

存続期間の満了が近い場合
→次の『い・う』の両方の事情がないと不許可となる

い 更新見込・立証

契約が更新される見込みが極めて高い
証拠・資料によって明確である

う 緊急性

借地人の側に次の『ア・イ』の両方の事情がある
ア 緊急性が存在する
訴訟による判断を待つことができない
イ 差し迫った事情が存する
現時点で借地非訟の申立を認容しなければならない
※東京高裁平成元年11月10日
※東京高裁平成5年5月14日

え 立証責任|反対説

立証責任には反対説もある
※澤野順彦『実務解説借地借家法』青林書院p217

3 借地非訟×残存期間|旧借地権

借地には新法/旧法の2つのどちらかが適用されます。
旧借地法が適法されるケースでの『残存期間』の影響を整理します。

<借地非訟×残存期間|旧借地権(※1)>

あ 前提事情

旧借地権が適用される
期間の合意なし=法定期間が適用される

い 朽廃×終了

期間内の建物の朽廃により借地が終了する
※借地法2条1項但書,5条1項後段,借地借家法附則5条
→地主がこの借地終了を期待することは正当である

う 借地非訟×地主への影響

借地非訟による裁判所の許可があった場合
→地主の正当な期待を奪うことになる
→地主に不利である

え 反対説

建物再築以外の借地非訟手続について
→影響はそれほど大きくないとも考えられる
※澤野順彦『実務解説借地借家法』青林書院p216

4 借地非訟×借地に関する従前の経過|例

借地非訟では『従前の経緯』が判断事項とされています。
この内容をまとめます。

<借地非訟×借地に関する従前の経過|例>

あ 借地権設定の経緯
い 経過した契約期間
う 更新料授受の有無
え 地代など授受の状況

不払いの有無など

お 目的土地の利用状況・その推移

※澤野順彦『実務解説借地借家法』青林書院p217

5 譲渡許可申立×残存期間

以上の説明は『借地非訟』に共通するものでした。
以下『借地権譲渡許可』に関する説明に移ります。
譲渡許可の手続での『残存期間』の扱いをまとめます。

<譲渡許可申立×残存期間>

あ 前提事情

残存期間が短い

い 影響の程度|比較

譲渡許可申立の場合
→条件変更・増改築許可よりも重視する方向性がある
※市川太志『借地非訟事件の処理について』判タ967号p59

う 基準|年数

不許可となる目安
=残存期間が2年程度
※星野英一『借地・借家法/法律学全集』有斐閣p307

え 基準|正当事由

従来の借地権者・譲受人の両方について
更新拒絶の正当事由が認められる可能性を考慮する
正当事由の具備が予測されない場合のみ許可される
※鈴木禄弥ほか『新版注釈民法(15)』有斐閣p540

6 譲渡許可申立×借地に関する従前の経緯

譲渡許可の手続での『従前の経緯』の扱いをまとめます。

<譲渡許可申立×借地に関する従前の経緯>

あ 肯定方向|具体例

多額の権利金が支払われている
区分所有建物を建てるために借地権の設定がなされた

い 否定方向|具体例

当事者間の特別な関係のために特別に借地権の設定がなされた
例;雇用関係・親族関係
※稻本洋之助ほか『コンメンタール借地借家法 第3版』日本評論社p142