1 譲渡許可申立×借地人の増加|基本
2 借地の一部譲渡×地主の不利益
3 分割譲渡×地主の不利益|基本
4 分割譲渡×地主の不利益|例外|事案
5 分割譲渡×地主の不利益|例外|裁判所の判断
1 譲渡許可申立×借地人の増加|基本
借地権譲渡によって『借地人が増加する』というケースもあります。
このような事情は譲渡許可を否定する方向に働きます。
まずは基本的事項を整理します。
<譲渡許可申立×借地人の増加|基本>
あ 前提事情
借地の一部譲渡・分割譲渡
い 一般的影響
借地人の数が増える
→従来より地主の事務量が増える
=わずらわしくなる
→一般的に地主に不利である
う 個別的影響
残存部分の価値が下がる場合
例;接道あり・接道なしの2つに分かれる
→明らかに地主に不利と言える
※澤野順彦『実務解説借地借家法』青林書院p251
2 借地の一部譲渡×地主の不利益
借地の一部譲渡の許可は通常否定されます。
裁判例を2つ紹介します。
<借地の一部譲渡×地主の不利益>
あ 共通・前提事情
譲渡許可の申立の対象が『借地の一部』であった
い 申立→却下
→地主への不利益が大きい
→不適法とした
※東京地裁昭和46年7月15日
う 棄却
申立は適法である
貸地の残存部分の利用価値が著しく減少する
→棄却した
※東京地裁昭和45年9月11日
3 分割譲渡×地主の不利益|基本
借地の『分割』譲渡も借地人が増えるパターンです。
通常許可されません。
<分割譲渡×地主の不利益|基本>
あ 前提事情
借地を分割する
それぞれを別の者に譲渡する
い 地主の不利益
地主が負担する不利益が大きい
→原則的に許可されない
う 例外|特殊事情
特殊事情により許可されたケースもある(下記※1)
4 分割譲渡×地主の不利益|例外|事案
分割譲渡について裁判所が許可したケースがあります。
特殊事情の影響と言えます。
まずは事案を紹介します。
<分割譲渡×地主の不利益|例外|事案(※1)>
あ 土地の位置関係
地主A
借地人Bの借地b
借地人Cの借地c
土地bとcが隣接していた
い 譲渡許可申立
Bが裁判所に譲渡許可の申立をした
借地を2分割するものであった
う 譲渡|内容
借地bの一部b1の借地権をBがCに譲渡する
借地bの一部b2の借地権をBがDに譲渡する
b1とcは隣接している
物理的に一体となる形状である
※東京地裁昭和46年6月16日
5 分割譲渡×地主の不利益|例外|裁判所の判断
上記事案について,裁判所の判断結果をまとめます。
<分割譲渡×地主の不利益|例外|裁判所の判断(※1)>
あ 裁判所の判断|許可
全体として不整形とならない
→地主に不利益ではない
→許可した
い 裁判所の判断|承諾料
承諾料=借地権価格の12%
※東京地裁昭和46年6月16日
特殊事情が大きく影響した結果です。
『分割譲渡』として一般化できるものではありません。