1 婿養子が離婚をしたら離縁も認められるが例外もある
2 協議離縁が成立しない場合の家庭裁判所の手続
3 婚姻関係の破綻により離縁を認めた判例
4 婚姻関係の破綻があっても離縁を認めない事情
5 婚姻関係の破綻があっても離縁を認めなかった裁判例

1 婿養子が離婚をしたら離縁も認められるが例外もある

いわゆる婿養子というのは,夫婦・親子を含めて,家族になるという趣旨のものです。
詳しくはこちら|養子縁組の基本(形式的要件・効果・典型的活用例)
そこで,夫婦間の関係が破綻した場合には,離婚が認められるとともに,養親子関係の解消(離縁)も認められるという発想があります。
実際にはこのように判断される傾向がありますが,そうでない場合もあります。本記事では,このことを説明します。

2 協議離縁が成立しない場合の家庭裁判所の手続

もちろん,当事者(養子と養親)で納得して離縁を行えば問題はありません。協議離縁と言います。
しかし,一方が拒否した場合には協議離縁は成立しません。この場合,家庭裁判所に離縁を認めてもらうことになります。具体的には家事調停や訴訟です。
最終的に裁判所は縁組を継続し難い重大な事由などに該当する事情があれば離縁を認めることになります。一般的な離縁事由については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|裁判による離縁が認められる事情(縁組を継続し難い重大な事由)

3 婚姻関係の破綻により離縁を認めた判例

裁判所が離縁を判断する場合でも,養親Aの娘Bと夫Cの離婚があった場合は,ほとんどのケースでAとCの離縁も認めています。いわば,夫婦関係は解消したが,養親子関係が残っているというねじれ状態の解消です。

<婚姻関係の破綻により離縁を認めた判例>

あ 事案

養親が,将来自分の後継者にするつもりでCを娘Bの婿養子にした
Cが些細なことでBに暴言を吐いたり暴行を加えたりした
→BC夫婦が不仲になった
→離婚訴訟が提起された
→AとCの対立も深まった

い 裁判所の判断

縁組を継続し難い重大な事由ありと認めた
※最高裁昭和36年4月7日
※横浜地判昭和40年4月16日(同趣旨)

4 婚姻関係の破綻があっても離縁を認めない事情

特殊な事情があれば,離婚した後でも離縁は認めないという判断もあり得ます。
ねじれ状態を維持する,ということになります。

<婚姻関係の破綻があっても離縁を認めない事情>

・離婚の原因が,主に養親の子(娘)にある
・離婚後に,一定期間,養親・養子の関係が良好だった時期がある
・養親・養子の関係悪化の原因(有責性)が,主に養親にある

5 婚姻関係の破綻があっても離縁を認めなかった裁判例

実際に,婚姻関係は破綻していても養親子関係を維持した,つまり離縁を認めなかった裁判例を紹介します。

<婚姻関係の破綻があっても離縁を認めなかった裁判例>

あ 事案

Aの娘Bと男性Cが結婚した。
AとCが養子縁組をした。
Cが兵役で出征した。
出征中にBが不貞行為を行った。
Cが帰還した。
Bは不貞相手と逃走(駆け落ち)した。
BCは離婚した。
CはAとの離縁を希望した。
AはCを説得し,養子関係の維持+同居,を要請した。
CはAの説得を受け入れ,離縁しないこととなった。
Cは別の女性と結婚し,子供をもうけた。
Cの妻子は,Aと同居し,関係は良好であった。
その後,AとCの関係が悪化した。
ただし,Aの方に主な原因があった。
(Aの『理不尽な悪感情』が原因であった)

い 裁判所の判断

縁組を継続し難い重大な事由,ありとは認めなかった
※神戸地裁昭和25年11月6日

本記事では,いわゆる婿養子のケースで婚姻関係の破綻(離婚)があった場合に離縁が認められるかどうかということを説明しました。
実際には,個別的な事情によって,法的判断や最適な対応方法は違ってきます。
実際に婿養子における夫婦や養親子間が対立するといった問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。