1 当事者が合意すれば協議離縁が成立する
2 婿養子の場合,夫婦と養親子関係はセットと考えられる
3 特殊な事情がある場合だけ,離婚しても離縁が認められない

1 当事者が合意すれば協議離縁が成立する

いわゆる『婿養子』というのは,夫婦・親子を含めて,『家族になる』という趣旨のものです。
詳しくはこちら|養子縁組の基本(形式的要件・効果・典型的活用例)
逆に言えば,この家族の解消,というのは夫婦・親子両方の解消,ということを意味するのが常識的です。
もちろん,当事者で納得して離縁を行えば問題はありません。
協議離縁と言います。
しかし,感情の対立などの原因で離縁に応じないということも生じます。
この場合,家庭裁判所の調停や訴訟で離縁を請求するという手続が用意されています。
家裁の手続としては『訴訟対象事件−一般調停対象事件』として分類されています。
詳しくはこちら|家事事件|手続|種類・基本|別表第1/2事件・一般/特殊調停対象事件

2 婿養子の場合,夫婦と養親子関係はセットと考えられる

裁判所が離縁を判断する場合でも,『養親Aの娘Bと夫Cの離婚』があった場合は,ほとんどのケースで『AとCの離縁』も認めています。
条文上は,『縁組を継続し難い重大な事由』がある,という判断です。
※民法814条1項3号
いわば,『夫婦関係は解消したが,養親子関係が残っている』というねじれ状態の解消です。
そこで,通常,離婚した場合は,これとセットで離縁も認められます。

<離婚後の離縁を認めた裁判例;ノーマルタイプ>

あ 事案

養親が,将来自分の後継者にするつもりでCを娘Bの婿養子にした
Cが些細なことでBに暴言を吐いたり暴行を加えたりした
→BC夫婦が不仲になった
→離婚訴訟が提起された
→AとCの対立も深まった
↓離縁請求調停,審判

い 裁判所の判断

『縁組を継続し難い重大な事由』ありと認めた
※最高裁昭和36年4月7日

3 特殊な事情がある場合だけ,離婚しても離縁が認められない

特殊な事情があれば,離婚した後でも離縁は認めないという判断もあり得ます。
ねじれ状態を維持する,ということになります。

<離婚した後の離縁が認められない例外的事情の例>

・離婚の原因が,主に養親の子(娘)にある
・離婚後に,一定期間,養親・養子の関係が良好だった時期がある
・養親・養子の関係悪化の原因(有責性)が,主に養親にある

<離婚後の離縁を認めなかった裁判例;アブノーマルタイプ>

あ 事案

Aの娘Bと男性Cが結婚した。
AとCが養子縁組をした。
Cが兵役で出征した。
出征中にBが不貞行為を行った。
Cが帰還した。
Bは不貞相手と逃走(駆け落ち)した。
BCは離婚した。
CはAとの離縁を希望した。
AはCを説得し,養子関係の維持+同居,を要請した。
CはAの説得を受け入れ,離縁しないこととなった。
Cは別の女性と結婚し,子供をもうけた。
Cの妻子は,Aと同居し,関係は良好であった。
その後,AとCの関係が悪化した。
ただし,Aの方に主な原因があった。
(Aの『理不尽な悪感情』が原因であった)

い 裁判所の判断

縁組を継続し難い重大な事由,ありとは認めなかった
※神戸地裁昭和25年11月6日